全従業員に「e思考」を徹底
ハインリッヒ・フォン・ピーラー シーメンス 社長 兼 CEO
情報技術(IT)を中核とした新しい市場「ニューエコノミー」に乗り遅れないことが欧州企業にとって大きな課題となっている。欧州はかつてマイクロエレクトロニクス分野で世界に後れをとった。同じ失敗を繰り返してはならない。
ニューエコノミーは6つの側面から定義できる。まず競争力を左右するのはハードウエアでなく人材を含めたソフトウエアであること。次いでメーカーがバーチャル(仮想)な世界で消費者と直結できること。さらに古い労働観から解放された個人起業家の台頭、高い成長性、顧客満足の重要性、そして時価総額経営だ。
ニューエコノミーへ突入した時計の針が戻ることはない。この世界で成功するのに必要なのは流行に左右されない確固とした「強み」を持つこと。強いブランド、全世界に広がる人的ネットワーク、研究開発力、そして膨大な顧客基盤だ。
ただ、研究開発のサイクルはますます短くなり、内容は複雑化してコストは膨らむ一方。半面、価格は急速に低下を続けており、ニューエコノミーの競争条件は厳しくなるばかりだ。
シーメンスは解決方法を大きく3段階に分け、競争に臨んだ。
第一は世界市場で1位か2位を確保することを目的にポートフォリオを見直した。第二に資産管理、品質管理などの面で明確な目標を設定した。さらに会計基準を米国型に切り替えて、世界の株主やアナリストなどへの経営の透明性を高めた。その上でわれわれは競争を勝ち抜くために五つの具体的な方策を実施した。
まずグローバルな情報データベース「シェアネット」の構築。全社員の知識を集約・共有化することで価値創造を進める。さらにネットを利用した部品・資材の調達比率を現在の10%から2,3年後には50%まで高め、10億ユーロの経費を削減する。さらに社内業務の電子化、電子商取引の拡大、モバイルビジネスの強化などだ。
IT関連の「eビジネス」の柱の一つはモバイルだ。第三世代の移動通信では欧州企業が優位に立っており、シーメンスはこの分野で幅広い技術を持っている。一連の取り組みを通じて当社の従業員に「e思考」を身につけてもらう。
単にインターネットを利用するという技術面だけでなく、ビジネス観を変えなければならないことを意味する。自社データネットワークなどに初期投資として10億ユーロも投じるのは従業員全員が「eビジネス」の世界に入ってもらうためだ。
これから新しく立ち上がるビジネスは恐らくだれも経験したことがないほど革新的、生産的で、競争は激しいだろう。最終的な勝者がだれかは分からないが、勝者となるために必要なのはニューエコノミーのもたらす可能性と企業の持つ強みを組み合わせ、迅速に実行することだろう。
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