日経フォーラム世界経営者会議
nikkeinet トップページ プログラム 協賛・後援 講師紹介 初日の模様 2日目の模様 ENGLISH
変化を恐れず構造改革
ロバート・E・ルービン シティグループ 取締役 兼 経営執行委員会会長

 過去8年間、米経済は高成長や低いインフレ率、雇用増大などの好条件に恵まれた。90年代半ばまでの大規模な合理化が企業の生産性を向上させ国際競争力を復活させた。同時にIT分野への集中投資が産業構造を大きく転換させ、新産業の誕生やビジネスモデルの変化をもたらしたためだ。これを後押ししたのが技術の発展や財政健全化による低金利経済、開放的な市場、変化を許容する文化、柔軟な労働市場、豊富なリスクマネーの供給だ。

 一方で米国は膨大な経常赤字を記録し、貯蓄は一層低下した。株式の時価総額は現在国内総生産(GDP)の160%に相当し、歴史的にみて高い水準にある。これは米景気の実体の強さとリスクの過小評価、好景気に対する過度の期待が組み合わさった可能性も否定できない。もし過剰反応が起きているならば、いずれ解消されるだろう。米国経済は短期的な動向がどうなろうと長期的にみるとよい状態にある。ただ、米国が公立学校の制度改善に取り組み、都市部や不況の地方の人々を新しい経済の流れに引き込まないと、経済の生産性は落ち込むだろう。

 世界経済の大きな問題の一つは、米国の膨大な貿易赤字によってけん引されているという点だ。もし日本や欧州の内需主導の経済成長がないまま米景気が減速すれば、世界経済は困難に直面するだろう。欧州では経済成長が鈍っている。強いユーロには、通貨そのものに焦点を当てた政策でなく欧州を魅力的な投資先にし資金を流入させることが必要だ。

 日本は低成長の10年から持続的で力強い経済成長に回復できると信じている。ただ、それには不良債権の処理、規制緩和、市場開放が不可欠だ。この過程が社会的な混乱を生む可能性もあるが、変化を拒んではならない。大切なのは短時間のうちに変化に必要な世論と政治的な意思を形成することだ。経済成長こそが日本の公的債務や人口減少による財政悪化に対する回答で、構造改革を経済政策の中心に据えるべきだ。

 アジア金融危機の原因となったのは途上国でのマクロ経済情勢や金融制度、構造問題にも増して過剰な資金の流動性だ。利益増大を狙ってある部分を過剰評価する一方で、リスクを軽視するという人間の本質がもたらしたといえる。動いている資金の量やスピードの増大、デリバティブの発達などで将来の危機はより深刻なものとなろう。

 政策担当者は市場関係者に対し、自制した行動を取るよう促し続けることが大切だ。政府が危機の拡散を防ぐために問題を抱えた借り手を助ける一方で、不良債権は公的資金で処理されるとの印象を貸し手側に与えないよう、どうバランスをとるかといった難しい問題もある。簡単な答えはないが、こうした問題こそが政府や国際通貨基金(IMF)などの国際機関にとって本質的な課題であり続けるだろう。

 グローバル化は、すでに述べた国際的な金融危機など様々な問題を伴う。クリントン大統領は良い経済こそが最良の社会政策だと言ったが、国民の支持なしに変化を伴う経済政策を維持することは不可能だ。

 世界経済は大きな可能性に満ちているが、それ以上に課題も抱えている。世界経済は独立した各国が相互に依存し影響し合う複雑な関係にある。

 日本と米国は世界の2大経済勢力として国際社会を率いて協力を促していく責任をもっている。両国は好調な経済を維持し変化を受け入れると同時に、経済成長だけでは適切に解決できない問題にも取り組む政策が必要だ。

前の画面に戻る

Copyright 2000 Nihon Keizai Shimbun, Inc., all rights reserved.