第1回日経フォーラム「世界経営者会議」対話・講演・討論の全文

テーマ: 「競争力を高める企業戦略」

スピーカー(文中敬称略):樋口廣太郎氏 アサヒビール名誉会長/経済戦略会議議長

日時:1999年10月8日(金)9:00〜9:40

場所:東京・帝国ホテル 本館2階「孔雀東の間」

【樋口】経済戦略会議はこれまで14回の会合を重ね、現在は各省庁間でフォローアップを行っている。今日はその最終答申「日本経済再生への戦略」に沿って話を進めていきたい。

 そもそも戦略会議の火つけ役は堺屋太一氏だと思うが、大臣(経企庁長官)になられたために私にその役が回ってきた。答申は英文でも発表しており、多数の方に読んでいただきシラク仏大統領からも「大変よかった」とほめていただいた。

 答申はまず「日本経済の現状認識」として「先般の大型経済対策の効果が徐々に顕在化し、景気の急激な悪化に歯止めがかかる兆しも一部にみられ始めた」と指摘している。確かに1−3月も4−6月もGDP(国内総生産)はプラスに転じている。「しかしながら、民間需要は全体として停滞基調を脱するに至っておらず、経済対策効果が一巡した後の景気の自律回復への展望は依然として不透明である」としている。

 橋本内閣は「6つの改革」の中で、行政改革と財政改革に取り組んだが、結論として言うとスピードと間が悪かったのだと思う。全委員からスピードが速すぎた、急ぎすぎた、出すタイミングが悪かったという意見が出された。その結果、最後は消費税問題で行き詰まり、せっかく補正予算を組みながら、それも使わずに辞めざるを得なかったのは残念だった。そして小渕総理の下で引き続き議論を重ねてきたわけだ。

 景気の自律回復への展望が不透明な背景としては、「戦後の日本経済の飛躍的な経済成長の原動力となってきた日本的システムのいたるところにほころびが生じ、これが日本経済の成長の足かせ要因として作用し続けている」という事情があり、その原因としてまず「雇用・年金の先行きに対する不安」があり「日本型の雇用・賃金システムや手厚い社会保障システムが制度としてのサスティナビリティ(持続可能性)を失いつつあることに起因して」おり、新しいセーフティネットが要る。

 また第二に「規制・保護や横並び体質、護送船団方式に象徴される過度に平等、公平を重んじる日本型社会システムが公的部門の肥大化、非効率化や資源配分の歪みをもたらしている。このため、公的部門を抜本的に改革するとともに、市場原理を最大限働かせることを通じて、民間の資本・労働・土地等あらゆる生産要素の有効利用と最適配分を実現させる新しいシステムを構築することが必要である」とし、第三に「含み益や含み資産を中心とする日本的含み経営がグローバルスタンダードからみて非効率化し、リスクへの挑戦を困難にしている。土地担保融資をベースとする日本型間接金融システムも機能低下に見舞われている。わが国の有する豊富な貯蓄が、21世紀の日本経済の発展に資する形で有効かつ効率的に活用されるためには、日本的経営システムを一段と効率的なものに改める必要がある」としている。さらに、いまの「閉塞感の根底には、家計や(特に)企業が将来の持続的成長に対して自信を喪失していることがある」とはっきりうたっている。

 次に「経済再生に向けた基本戦略」としては、各経済主体が将来への自信を喪失しているわけだから「将来への自信を取り戻せるような新しい日本型システムを構築する必要があると考え」、そのためには「あらゆる既存システムの大幅な見直しが不可欠」と指摘している。

 そして「貸し渋りや信用収縮が指摘される中で、少なくともマクロ的には日本経済は1,200兆円もの個人金融資産や100兆円を大幅に上回る対外純資産等を有しており、金融面では依然として強固な基盤を有している」「また、半導体や液晶、精密機械などの製造業分野においては、中小企業も含めて世界有数の技術力を持つ企業が少なくない。諸外国と比べて高い教育水準に裏付けられた優秀かつ勤勉な労働力の存在等、わが国経済を支えてきた発展の基礎はいささかも崩れていない。要は、日本的システムのよい部分は残しつつも、機能低下に見舞われている旧来型システムについては、日本経済が本来持っている基盤と潜在能力を前向きの形で生かせるような新しい仕組みをつくろう」と言っている。

 参考までに言うと、日本の人口は米国の半分であり、また米国は世界的通貨ドルを発行できる立場にある。いわば造幣局と印刷局の両方を持っているような国との比較で、資源のない日本はその半分をやや上回る経済力を持っている。またアジアの中で、日本はGDPで約60%を占めている。その中で中国は大変多くの人口と資源と広大な土地を持っているが、約13%。香港を含めて15%だ。韓国は急速によくなっているものの、アジア全体に占める比率は7%で、次いでタイは2%だから大変な違いがある。

 日本経済再生に向けた第二の基本戦略は「規制・保護や護送船団から決別し、創造性と活力に溢れた健全な競争社会を構築する」ことだ。競争社会は、創造性と活力に溢れた、かつ「健全な」社会でなければ、これからの日本はだめだ。だから「努力した者が報われる公正な税制改革や創造的な人材を育成する教育改革など、個々人の意欲と創意工夫を十二分に引き出す新しいシステムの構築が不可欠である」。その結果、当然脱落する者が出るが「敗者復活を可能とし、安心を保障する『健全で創造的な競争社会』にふさわしいセーフティネットの構築が極めて重要である。具体的には、個人の転職能力を高め、雇用の安心を確保する労働市場改革や事後チェック社会にふさわしい司法制度の改革、さらには年金・医療・介護等、持続可能で安心できる社会保障システムの構築によって、すべての国民にセーフティネットを提供する必要がある」と考えている。

 基本戦略の第三は「バブル経済の本格清算と21世紀型金融システムの構築」だ。金融は経済の血液とも言われているだけに「金融機関の整理、再編を促すと同時に、不良債権の実質的な処理(担保不動産の流動化)を促進することであり、そのための新しい仕組みや制度、環境整備が急がれる。その成否を握るカギは、優良不動産も含めて不動産の流動化、証券化を促進し、不稼働資産をキャッシュフローを生む稼働資産に変えることにある」として、キャッシュフローを重視することをうたっている。そして「土地本位制から早期に脱却し、日本型の間接金融を補完、代替する新たな金融仲介ルートを構築する」「21世紀を迎えて多様化、高度化する金融サービスに対するニーズに的確に応え『金融サービス産業』の成長を促す」としている。

 基本戦略の第四は後ほど申し上げるとして、第五としては「都市再生、環境、情報インフラ、教育・人材育成、福祉、住宅等を21世紀に不可欠な国家的重要分野と位置づけ、民間の活力を十二分に引き出しつつ、新産業創出と地域の再生に結びつけていくことが求められる」と率直に述べている。

 「健全で創造的な競争社会の構築とセーフティネットの整備」について再度言うと、次のように指摘している。まず「競争社会という言葉は、弱者切り捨てや厳しい生存競争をイメージしがちだが、むしろ結果としては、社会全体をより豊かにする手段と解釈する必要がある。競争を恐れて、互いに切磋琢磨(せっさたくま)することを忘れれば、社会全体が停滞し、弱者救済は不可能になる」と言い切っている。

 「社会全体が豊かさの恩恵に浴するためには、参入機会の平等が確保され、透明かつ適切なルールの下で、個人や企業など民間の経済主体が新しいアイデアや独創的な商品、サービスの開発にしのぎを削る『創造性の競争』を促進する環境をつくり上げることが重要である。これまでの日本社会に見られた『頑張っても頑張らなくても、結果はそれほど変わらない』護送船団的な状態が続くならば、いわゆるモラルハザード(生活保障があるために怠惰になったり、資源を浪費する行動)が社会全体にまん延し、経済活力の停滞が続くことは避けられない」、「日本人が本来持っている活力、意欲と革新能力を最大限に発揮させるため、いまこそ過度な規制・保護をベースとした行きすぎた平等社会に決別し、個々人の自己責任と自助努力をベースとして、民間の自由な発想と活動を喚起することこそが極めて重要である」、「しかし、懸命に努力したけれども、不運にも競争に勝ち残れなかった人や事業に失敗した人には『敗者復活』の道が用意されなければならない。あるいはナショナル・ミニマム(健康にして文化的な生活)をすべての人に保障することは『健全で創造的な競争社会』がうまく機能するための前提条件である。このようなセーフティネットを充実することなくして、競争原理のみを振りかざすことに対しては、決して多くの支持は得られないであろう」と考えている。

 そのための重要な課題として「個人のエンプロイアビリティ(転職適応能力)を高め、有能な人材が21世紀の日本をリードする新しい産業にスムーズに移動できるような雇用流動化に向けた環境整備が不可欠である。そのために緊急に必要なのは、転職する人が新しい技能を修得しやすくするための『能力開発バウチャー』の導入である」と指摘している。具体的には、10年以上一つの企業に勤務した人が学校に入ったり職業訓練を受けたりする場合は、その費用の半分を100万円を限度に負担する。

 「努力した人が報われる公正な税制改革」では第一に「税のインセンティブシステムとしての有効性を高めるため、よりフラットな直接税の体系を目指すこととする。抜本的な所得税減税を行うとともに法人税、相続税などの直接税の減税を引き続き行う」、第二に「その際、節税目的の『法人成り』をなくすため、所得税の最高税率が法人税の実効税率を上回らないようにする」と、無理に法人にすることをなくすため、大きな歯止めをかけている。第三に「また、税の体系を中立化・簡素化し、課税ベースを拡大する。所得税の課税最低限の引き下げや赤字法人課税に取り組むとともに、租税特別措置や軽減税率を見直す」、第四は、消費税に「インボイス方式の導入、簡易課税の廃止などにより、消費税体系の簡素化と捕捉率の向上を図る」、第五は、株式非上場企業、特に中小企業の事業継承に伴う株式譲渡に対する相続税が大変な金額に達している。よく国は「農業は大事、中小企業は大事」とスローガンを掲げているが、実際には中小企業の相続税に対する優遇は何もない。かたや農業の場合は、大型農地の相続に対して、我々の調査では、所得税を払っているケースはないといってもいい。これでは言っていることとやっていることと違う。特に中小企業の経営者が頑張って会社を盛り上げた結果、相続をする段になって、株の評価が高くなり、税をたくさん取られるということでは意欲を失う。

 そのようなことを繰り返してはだめだ。そこで「企業規模を勘案しつつ、早急にかつ相当程度軽減する。現在の税制では、好業績の企業ほど株式評価が高く、継承時の納税額が高くなるが、未上場株の場合、株式の一部を売却することによって納税することができないため、事業継承が困難になることが多い」と指摘している。今回初めてEメールを採用したところ、こうした訴えが非常に多かったことから答申にも取り上げ、早急に税の軽減措置を講ずることを求めている。

 「安心を保障するセーフティネットの構築」に関しては「個人の転職能力を高め、雇用の安心を確保する政策」として「産業構造が変化する中で、人材を必要以上に特定の企業、産業に固定することは、人的資源の有効活用を妨げ、経済活力を低下させることになる。日本経済の構造変化に対応する形で、雇用がより生産性の高い産業、企業に容易に移動することができれば、生産性が上昇するだけでなく、経済が活性化する」とし、そのためには「個人がみずからのエンプロイアビリティを高められるよう、政府が積極的にこれをサポートする仕組みを構築することが必要である」と指摘して、具体的には、転職に伴う「能力開発バウチャー」の導入を提案している。

 また「労働者派遣及び職業紹介の対象職業を早期に原則自由化」する。日本では職業紹介は公的なものがわりあい中心になっているが、職業紹介所がかなり恣意的にやれるものに限定して紹介しているのが実状だった。我々はかなり変わったと思っていたが、調査の結果、実際にはほとんど変わりなかった。そこで、答申には明記していないが、売春と麻薬つまり反社会的、非道徳的なもの以外は全部職業紹介するよう提言し、労働大臣も原則的に承認をしたものと思っている。さらに「年金のポータブル化を推進し、労働移動に対する制度的中立性を確保する」としている。当たりまえのことだが、行われていなかったのだ。

 いま一つは「当面2年間の時限的措置として、失業に対する不安心理を除去する」ために「非自発的失業者の新規事業開業等に対する助成措置を大幅に拡充」する。「失業保険給付については、短期間に就職した人に対するボーナス給付や職業訓練期間中の給付期間延長等、就職へのインセンティブを高める」ことが必要だ。また従来、フリーターも家族を抱えている失業者も同じく約半年間で給付が切られていたが、世帯主であるかどうか、仕事を探しているかどうも大事な要件なので「世帯主の非自発的失業に対しては、扶養家族の数に応じて失業給付を拡充する」よう提案している。独身者と家族が5人もいる人と同じではおかしいというわけだ。

 ところで、経営の観点からやるべきことは「再開発事業促進のための法制度の整備等」として「市街地再開発事業の制度強化」を図り、参画する企業には大幅な優遇措置を講ずる。また「競売手続きの円滑化・迅速化」のためのポイントは「短期賃貸借制度の見直し」「強制管理制度の導入」「最低売却価額制度の廃止」なので、これを廃止することを求める。「優良不動産の流動化・証券化」策として「不動産の本格的証券化スキームの確立」が必要と考え、使いにくくなっている「SPC法(特定目的会社の証券発行による特定資産の流動化に関する法律)の改善」を求めている。

 一方で、投資をしてくれなければ何もできないので、投資家へのインセンティブの付与として「土地の有効利用を推進するためには、土地を有効利用しようとする者への移転を容易にすることが不可欠である」ということで、まず「流通税の撤廃と保有税の見直し」「事業用資産の買い替え特例の課税繰り延べ割合の引き上げ」を求めている。

 前後するが、基本戦略の四つ目として、第4章では「活力と国際競争力のある産業の再生」について書かれている。先般来、通産省と経団連がまとめた「産業再生法案」が前国会の最終日に通った。一つは「産業再生に向けたフレームワーク」を作ろうということで、その一番のポイントは「過剰設備の処理の支援」で、いつまでも過剰設備が残っていては、足かせになって動きが取れないので「設備廃棄に伴う欠損金の繰り越し期間を、現在の5年から10年以上に延長する」ことであり、また「設備廃棄を伴うM&Aに対して登録免許税、譲渡益課税の減免等の促進税制を導入する」ことだ。3回目までは設備廃棄の議論ばかりになったために、世論・マスコミ等から「重厚長大産業を意識しているのではないか。もっと中小企業その他の事業を頭に入れるべきだ」という強い要請があった。しかし、その後、そうした主張の方や中小企業関係の委員も加えて、いま検討しているところだ。

 2つ目は「起業支援と戦略的技術開発」で、起業支援についてはまず、税制面の支援をする。新しく事業を起こそうとする企業は当然、物的担保がない。従来の不動産を担保にする融資体系では資金調達が困難だ。そこで「創業コスト軽減のための登録免許税の減免制度を創設する」よう提案している。また、中小・ベンチャー企業はリスクが高いため、エンジェルがお金を出しやすくするために「公開3年前から保有していた株式の譲渡益を圧縮する『創業者利得の特例』の拡充」を行う一方、準備金制度についても、中小・ベンチャー企業に対して優遇するよう求めている。

 さらに「21世紀を先導する産業の創出」として「21世紀に向かって日本経済をリードするような新たな産業を国家的なプロジェクトとして育成していかなくてはならない。特に情報通信、環境、医療・福祉、バイオテクノロジー、流通・物流及び金融は、21世紀において高い成長が期待されるとともに、今後、人材の流動化が進んでいく中で、質の高い雇用機会の創出が期待される重要な戦略的分野である」と言い切っている。

 その中ですでに実行に移っているのはバイオテクノロジーの分野で、5省庁がやっている。しかし、提出された予算を見ると、かなりダブりもあるので、5省庁の大臣にそれぞれ検討していただき、予算の一本化を決定した。これからの産業というと、各省庁から同じような要求が出されるが、それによるむだは排除していかなければいけない。

 先導する産業の創出のために、まず「国家戦略」を策定する。例えば、NTTは研究所を横須賀市中心に移した。その結果、おもな研究所の8割、特に部品関係が横須賀周辺に集まり出した。また私どもが提案した結果、早稲田大学が埼玉県本庄市に未使用のまま二十数年間保有している28万坪の土地を、衛星通信関係の先端基地にすることを郵政省の目玉の戦略として決定した。水産研究所が18も必要なのか、各府県がばらばらにやっているバイオを集中させようと検討を求めている。さらに「資源の集中的投入」や「人材の育成と移動の円滑化」も提言している。

 第5章の「21世紀に向けた戦略的インフラ投資と地域の再生」では「産学連携による地域再生と21世紀の人材育成」を掲げ、「国公立大学を民間に開放し、大学構内に産学連携の核となるセンターを設置する。センター設置はPFI方式により行う」として、民間資金を活用して行うことを提案している。

 これまで述べてきたことを要約する形で、答申では「日本経済はいま『海図なき航海』に旅立とうとしている。しかし、その眼前に広がる光景は決して暗黒の海ではなく、希望と活力に満ちた輝かしい未来である」「第1章から第5章にかけて提言してきた数々(234)の構造改革を断行した暁の日本経済は、従来とは全く異なる新しい姿をみせるだろう」−−いわゆるビッグチェンジをするということだ。「スリムで効率的な政府の下で自由かっ達な競争が展開され、新しいビジネスや新規産業が次々と勃興する」

 「日本も従来の、過度に公平や平等を重視する社会風土を『効率と公正』を機軸とした透明で納得性の高い社会に変革していかなければならない。もちろん、21世紀の日本が目指すべき社会は『弱肉強食』の無秩序かつ破壊的な競争社会であってはならない。それは、個々人の『選択の自由』と『失敗を許容し、再挑戦が可能な風土』に裏打ちされた、真に安心できる社会でなければなるまい」

 そして最後に、全委員の気持ちとして「歴史をひも解けば、日本は過去、幾多の困難に遭遇してきたが、そのたびに困難をバネにして、世界史のうえでもまれにみる輝かしい発展を遂げてきた。それを可能としたのは、環境の激変に的確に対応し、さらなる飛躍の原動力としてきた国民の柔軟性と英知にほかならない。確かに、日本経済は現在、極めて困難な状況にあるが、明治維新、第2次大戦後の苦境と混乱を想起すれば、現在ははるかに恵まれた環境下にある」と言い、情報通信やネットワーク社会に触れて「21世紀に向けて『活力と魅力ある日本の創造』」をしたい、と結んでいる。

 実際に変わってきたと思う。民間が政府に対して、こういう法案を作りなさい、こういう法案はいらない、こういう法案は変えてくださいと提案することは、日本の国が始まって以来のことだ。その結果、政府や各省庁が「実現する方向で検討する」と答えたものは、当初は残念ながら52.9%だった。かなり思い切ったことを書いてあるので、それも致し方なかったかもしれない。しかし、その後のフォローアップで56.5%になり、234項目のうち134項目について検討に入ることになった。

 ただ、内容をよく検討したうえで結論を出すという項目が95から89に減った。それらは全部税に関係するものだ。税に関係するものは政府税調と自民党税調の2つの関門があるので、戦略会議では結論を出せない。さらに、実現のためには乗り越えなければならない問題が多いと考えている項目が25あったが、現在は22項目に減ってきた。

 これら234項目の提言は当初、各省庁の反対が多いために閣議決定にも、閣議了承にもならなかったことから、10%ぐらいできたらいいかなといわれていたが、おかげさまで6割近い項目が実現できそうだし、さらに税調が終われば約90はいけるのではないかと思っている。また、戦略会議は解散する予定でいたが、小渕総理が粘り強く、引き続きいろいろな諮問を出された。

 現在の日本は非常にスピードが速くなっている。例えば一時、ヘッジファンドによる日本の金融機関に対する空売りが大量に出てきたとき、我々はすぐ宮沢蔵相に「これは困る。少なくとも米国と同じような方式にしてもらいたい」と要望した。空売りがあったときに調べる日本の方式では間に合わない。金融機関の株が一日で半額になってしまうということも起こり得るが、それでは困る。その結果、宮沢蔵相と小渕総理とのわずか2時間の話し合いで、一時徹底的に止め、米国が2年半前に実施したと同様に、それをやったと思われる人から報告を求めるやり方に変えた。これも一つの大きな進歩だ。

 また、先般の国会の最終段階で、子会社の株式との交換(を認める)という法案が通るかどうか微妙な状況で、ソニー株の動きが注目された。ソニーが優良子会社の株と自社株を交換するということだったからだが、法案の成立が間に合わない。国会では「夫婦別姓法案」を最後に通す予定だったが、我々の要望を取り上げ、夫婦別姓の法律は次期国会の最初に通すことになった。もし、このとき法案が流れたなら、おそらく日経平均は2,500−3,000円は下がっただろうと推測する人が多い。いずれにしろ、最近は動きが非常に速くなってきている。


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