第1回日経フォーラム「世界経営者会議」対話・講演・討論の全文

テーマ: 「ネットワーク社会の到来はグローバル経営に何をもたらすのか」

スピーカー(文中敬称略):

  ロブ・グレイザー氏 リアルネットワークス会長

  西室泰三氏 東芝社長

  ランダル・C・ホワイティング氏 コマースネット社長

モデレーター:野村裕知 日本経済新聞編集局産業部編集委員

日時:1999年10月7日(木)15:50-18:00

場所:東京・帝国ホテル 本館3階「富士の間」

 

【野村】モデレーターを務めさせていただきます野村と申します。よろしくお願いします。

 パネリストのご紹介を簡単にさせていただきます。舞台に向かって左側から、東芝社長の西室泰三さん、リアルネットワークス会長のロブ・グレイザーさん、そしてコマースネット社長のランダル・ホワイティングさんです。

 きょうは朝から非常に長いスピーチが続いたので、みなさんお疲れだと思います。目が覚めるようなスピーチがこれからありますので、まずロブ・グレイザーさんに15分から20分間よろしくお願いします。

【グレイザー】どうもありがとうございます。きょうの午後、こちらに参りまして、とても光栄に思っております。きょうお話ししたい内容は、インターネットがグローバルコミュニケーションの革命の一部に位置づけられ、その中で2つのことを話していきたいと思います。

 最初に、インターネットがいかに真に新しいマス向けの媒体物なのか。それはラジオ、テレビが過去において革命的であったのと同じです。その後に、幾つかインターネットの成功から得られる教訓を振り返ってみたいと思います。例えばアマゾン・ドット・コムだろうとヤフーだろうと、こういった成功例を学ぶと同時に、それをインターネットベースの企業のみならず、インターネットを活用したい企業が競争的な有利な立場に立つために、どういうふうに活用でき得るかというご紹介をしていきたいと思います。それは日本であろうと外国であろうと同じです。

 冒頭申しましたように、インターネットはラジオが20年代において革命的であったと同様に、また40年代においてテレビが革命的であったのと同じです。90年代におけるインターネットを通じて、コミュニケーションのやり方がラジオ、テレビ同様、大幅に変わってきたのであります。商業ベースでの成長時期を見てみますと、これらの3つの媒体物はほぼ一夜にして大幅に変遷し、そしてコミュニケーションの手段を変えていったのであります。それでは、なぜインターネットはユニークなんでしょうか。どうしてそんなに特別なんでしょうか。1つ目に、それはグローバルな媒体物であるということです。初めての視聴覚的な媒体物として、人々がどこにいても世界中のどこのプログラムでも聞いたり見たりすることができるわけです。2つ目としては、だれであってもプログラムを構築することができます。テレビ、ラジオの場合、チャンネル数も限られていますし、帯域も政府によって規制されています。またケーブルとか衛星といってもやはりチャンネルの数が限られています。しかしインターネットになるとチャンネルの数は全く限定されないで放送し得るのです。ネットを介しての放送は、いわば世界中をかけめぐるのみならず、組織内においても別の部署に対してコミュニケーションを図りたい際には活用でき得るのです。3つ目として、インターネットのプログラムというのはカスタム化することができるということです。ネットワークが賢く、またPCを使う人もあわせて賢いからであります。インターネットを介してプログラム化をすることによって、ユーザーが望むものを見たり聞いたりする。同時に本人の望む次第の順序で見たり聞いたりでき得るのであります。さらにプログラムは、生で放送のように伝達でもいいし、要求ベースでも構いません。一方向でもいいし、双方向のプログラムでも構いません。あわせてテキスト、グラフィックス、Webページといったその他もろもろを組み合わせることによって、新しいプログラムを構築することができます。

 インターネットがひとつの媒体物として大幅に伸びてきたのです。いまや世界中にインターネットのユーザーは1億人を数えます。Eコマースは去年の実績で80億ドルの収入を上げ、広告収入は20億ドルの規模となったのです。これらの数字はどれをとっても大きな数字であり、短期間で伸びたと同時にまだ始まったばかりだということが言えると思います。日本においてもマーケットは大幅に成長しています。日本でのインターネットのユーザーは、今年末までには2,000万人になると予想されています。広告収入は米国と比べてそれほど早く伸びてはおりませんが、健全な形で伸びていると同時に、これからもっともっとそのスピードは加速化されると予想しています。

 インターネットのブロードキャスティングということで、デュアル・オーディオという初めてのバージョンを4年前の95年に始めました。ほんの2年で私どもはそのユーザーの数を1,400万人に増やせてうれしく思っています。しかしさらにペースがアップし、現在登録済みのユーザーとして、7,900万の人たちがリアルプレーヤーのソフトを使っているのであります。これらの人たちは3分の1が少なくともビデオを週1回見ると同時に、4分の3が少なくとも週1回オーディオを聞いているということになります。なぜこの人たちがこれほど見たり聞いたりするようになったのでしょうか。それはひとえにインターネットにチョイスがあるということであります。例えば2,000の生のラジオ、テレビ放送局が1年を通して24時間放送しているのと同じです。これは1週間当たりプログラムとして35万時間がネットを介して提供されるということです。プログラムとして、その他の媒体物よりもはるかにチョイスが与えられるのです。

 それではリアルネットやその他の企業の成功の要素にどんなものがあるのでしょうか。まず取り上げたいことは、やはり一番乗りがいかにメリットがあるかということです。最初に商品、サービス、アイデアをネットを介して導入した人が非常に有利だということ。2つ目は、いわばグローバルなベースにおいて遍在するということであります。ネットにおいてウィルス・マーケティング、バイダル・マーケティングといったコンセプトが生まれています。これはネットを介して短時間でいろいろなものをあたかもウィルスが伝染するように広がることです。ウィルスそのものは悪いのですが、ウィルス・マーケティングはいいことです。と申しますのも、ウィルス・マーケティングを通じて新しい商品、サービスが提供でき得るのであり、それを極めて短時間に世界中に伝えることができ得るからです。ほとんどの成功企業がとったアプローチは、その商品を短時間に普及させ、そして世界中に遍在したその後に収入がついてくるというアプローチであります。3つ目は、インターネットを介してどんな企業であっても消費者との直接的な関係を構築することができます。それは法人客であろうと消費者であろうと、直接的な関係を消費者との間に構築できる。4つ目としては、いわば将来どういった形で技術がうまくいくのかということと、きょう現在どういうふうにテクノロジーを使えるかといったバランスを図らなくてはいけないということ。あまりにも多くの技術面での変化があるがゆえに、とかく全部将来にかけるといったミスを犯す人たちがおります。それは過ちです。やはり、きょう現在の技術でサービスがうまくいくようにしていかなくてはなりません。もちろん将来のことを考えるとしても、やはり現在も大事だということです。

 それでは次に「一番乗り」「世界中に遍在する消費者との直接的な関係」そして「どういうふうにして商品がうまくいくか」という属性に基づいて、3社の事例を見てみたいと思います。

 まず最初にアマゾン・ドット・コムです。主に本の小売店であったにもかかわらず、いまやありとあらゆるものをネットを介して販売しています。一番乗りとして本を販売した、また初めてオンラインでリセールも行ったからです。世界的に遍在しているかというと、まだ日本には進出していないので、これに関してチェックが1つしか書いてありませんが、本からいろいろな商品に広げたということで遍在性を広げると当時に、ヨーロッパにおいても事業展開をしています。また消費者との直接的な関係を1,200万人のお客様と構築しております。サービスだろうと商品だろうと、きょう現在うまくいくようなものを編み出したのです。

 2つ目の例がヤフー。この3つに関して極めてうまくやったということが言えると思います。インターネットのサーチとして一番乗りであったと同時に、日本でもグローバル・ブランドとして構築し、世界中においてもグローバル・ブランドとなったのです。顧客との直接的な強力な関係を構築すると同時に、早いしうまくいくといった極めて現実的な商品をつくり上げたのです。

 次に弊社リアルネットワークスであります。私どもの経験に関してもう少し詳しく説明し、どの程度ほかの会社に応用でき得るかを説明したいと思います。リアル・オーディオを導入したのは、ほんの4年半前の95年4月のことです。これは初めてのインターネットのリアルタイム・ストリーミングシステムです。これが成功したので、次にリアル・オーディオを導入し、その後にリアル・システムG2を導入し、その後にリアル・ジュークボックスを導入したのです。これによってCDだろうと、インターネットからダウンロードしようと、いろいろな音楽を楽しめるようになったのです。

 ウィルス・マーケティングというのは、私どもの要であります。消費者はWebでいろいろな内容(コンテンツ)を見られます。いろいろなホームページを見ると「ここにクリックしろ」ということが指示されており、消費者はダウンロードでき得るのです。リアル・プレーヤーは1日当たり15万回ダウンロードされています。リアル・ジュークボックスを導入した際もウィルス・マーケティングを採用しました。リアル・プレーヤーとその他の音楽のホームページとを一緒に提供し、1日当たりダウンロードの回数は8万件以上でした。5カ月にもかかわらず、1,000万ほどのコピーを提供してきたのです。こういったアプローチを日本、米国においてとってきたのです。

 私どもの本社は米国シアトルですが、日本にも事務所がございます。もう3年ぐらい日本で事業展開していると同時に、国際的な会社として頑張ってきました。日本でも強力なるプレーヤーだと思っております。600万の登録済みのユーザーが日本にいらっしゃいます。しかし日本のスタッフの数はわずか25人です。それはインターネットの力を使うことによって、1週間当たりダウンロードの件数が、日本だけでも14万5,000回であります。あわせてアドバンス・プレーヤーとしてプレーヤー・プラスを販売しております。1週間当たりの販売が、日本において1,100件、またリアル・プレーヤーにおいてはいろいろなプログラムを楽しめます。そして毎週そのチャンネル要請として18万3,000回ほどございます。

 次の点、それはビジネスの構築の重要性、それは言うまでもなく顧客との直接的な関係を構築することであります。すでに申しましたようにリアル・プレーヤーのユーザーは7,500人、90%の人たちが直接Eメールで連絡してもいいということで、Eメールで新しい商品、サービスの紹介をしています。リアル・プレーヤーG2を導入してから後、私どもは直接、プレーヤーを介して連絡でき得るのでます。今や4,500万のユーザーが、ソフトのアップデートを直接自分たちのプレーヤーで得ることができるような態勢が整ったのであります。

 最後に、きょうもうまくやると同時に将来の計画のバランスを図るという点も、言うまでもなく私どもの戦略の一部であります。95年に始めた際に、音声から始めました。ほとんどボイスであります。というのは、音楽ほど質がよくなかったので人の声、その1年後に音楽のオーディオにしました。97年にはかなり小型のビデオですが小規模ビデオを導入し、今年は音楽のデジタル配送をリアル・ジュークボックスを導入したことを紹介したいのです。これはインターネットの環境において、うまくいくものをそれぞれの時期において導入すると同時に、あわせて将来の計画を有していました。いまや広帯域のビデオの準備をしています。ビデオの質がVHSと同じぐらいの高品質になるようにしていきたいと思います。そうすることによって放送すると同時にデジタル配給をしていきたいと思います。

 基調講演を終えるにあたって、幾つかのサンプルを見ていただきたいと思います。このビデオの経験がどんなものなのか味わっていただきたいと思います。

【プレゼンテーション】

 私は日本語を話しませんので、日本語のものを紹介したいと思って見ていただきました。

 では要約させていただきたいと思います。インターネットは新たな大衆向けの媒介物であり、テレビ、ラジオが過去において同じであったような大事なメディアです。また国境が関係ないのがインターネットです。インターネットの成功のためには、迅速に、理想的に言えば一番乗りであるということがベストです。そしてインターネットにいま参入しないと、必ずや競争他社は参入するとこいうことを申したいと思います。伝統的な競争他社だけではなく、グローバルなインターネットを考えますと、世界中のどこからも皆様の競争他社が台頭するということになります。ありがとうございました。

【野村】ありがとうございました。次は西室社長にお願いいたします。

【西室】今プレゼンテーションなさったロブ・グレイザーさんとお会いしたのは、実は15分ぐらい前なんですけれども、グレイザーさんに褒められたことと、がっかりされたことの2つあります。褒められたのは、私の名刺にEメールアドレスが書いてある。「日本に来てから全部で15〜6人、CEOという肩書きのついた人と名刺交換をしたけれども、ちゃんとメールアドレスがついているのはおまえが初めてだ」と褒められました。「アメリカはどうなんだい」と聞きましたら、「アメリカにおいても大企業というのはまだまだ始まったところだよ」というお話だったので、わりに安心していいかと思います。がっかりされたのは、「もちろん、うちのシステムの音を聞いたことあるだろうね」というお話で、「残念ながらまだ聞いたことがない」ということで大変がっかりされました。申しわけないと思っております。しかし今、発見しましたのは、隣で今のすばらしいプレゼンテーションをやりましたエンジンが東芝のパソコンである。これはダイナブックです。非常にありがたいと思っております。

 さて私はもう少し原則論に戻って、先ほどサマリーがございましたネットワーク社会、インターネットを利用した社会というものはどんな特徴があるかということ、そしてそれが経営にどんなインパクトを与えるのかという観点でのお話を少ししていきたいと思います。

 今、インターネットを使うという、つまり、インフォメーション・テクノロジーというものが、あらゆる変化の起爆剤になっていると言っていい世の中だと思っております。これこそがスピードを高める原動力になる。つまり第一の特徴は、極めて当然のことですけれども、距離、時間、そういうものを飛び越えた情報の伝達ができるというスピード、これがまず第一の特徴だと思います。もうひとつは、同時化と言っていいと思いますけれども、同時に非常に多くの対象に対してコミュニケーションが伝達できるということ。リアルタイムで画像を楽しむことができる、リアルタイムでメッセージをとることができる、何でもできる、ということの同時化の問題。それからバーチャライゼーション、仮想化と言っていいんでしょうか。物理的な空間を形成している社会というものはすでにエスタブリッシュされているわけですけれども、そういうエスタブリッシュされた社会と違った、時間、空間を超えた新しいコミュニティーと言っていいようなものが形成されつつあるということだと思います。

 こういう特徴を備えたインターネット社会、あるいはネットワーク社会というものは、そこにおいて情報の価値というものが増加しているということを特徴として持っていると思います。これは全部の情報が価値があるかという問題もありますけれども、情報の収集、蓄積、それから分析、あるいは抽出というものが非常に容易で、かつまた迅速にやることができる。そうするとマスから個に対して、あるいは個からマスに対して、アクセスが極めて容易にできるようになります。それから個から個、つまり個の情報をベースにしたワン・オン・ワン、ワン・トゥー・ワンといった対応ができるようになったということであると思います。

 もうひとつは、先ほどグローバル化というご指摘がありましたけれども、まさにボーダーレス化を可能にしている、むしろボーダーレスになってしまうことによって、既存の枠組みを簡単に打ち破ってしまっている部分が出てきているということです。これそのものの発展が、法律にも、税制にも、あるいは文化、慣習、こういうものに非常に大きなインパクトを与える。従来の法律、あるいは税制では全く対処しきれないような状況になっている。同じように、産業の中でも、従来あった業界秩序、あるいは産業界の境界、そういうものが極めて不鮮明になる。不鮮明になると同時に、産業と産業との間の融合が起きるということが起きてきていると思います。例えば、通信と放送というものは昔は全く違ったカテゴリーであったと思います。似たカテゴリーではあってもディスティンクティブな違いがあった。しかるに現在は、通信、放送あるいは新聞、そういうものが全部一体化して、その区別がなかなかつかなくなってくる。別の例で言えば、従来あったパソコンというひとつのカテゴリーが将来にわたって存立するかというと、パソコンをつくっているメーカーがこういうことを言っちゃいけないんですけれども、多分相当に変わってくるだろう。パソコンとテレビは、あるいは一緒になってしまうかもしれない。そうすると新しいカテゴリーが出てくるわけで、産業間あるはい製品間の融合というものが出てくるということだと思います。

 こういう特性を備えたネットワーク社会においては、優劣が極めて明確になってしまう。先ほどもプレゼンテーションの中で、ファースト・ムーバー・アドバンテージという言い方をなさいました。まさにスピードを備えた企業、あるいはスピードを備えた個人が勝っていく時代というものになっていく。そうすると、取り残される人が確実に出てくる社会になるという可能性が非常に強いと思います。一番心配な点は、現在、経済の問題での南北問題というのが起きていますけれども、情報においての南北問題に等しいようなものができつつあるんじゃなかろうかという点が、非常に憂慮されるということがある。そのネット社会あるいはネットワーク社会につながるためには、いろいろな基礎条件が今は必要であります。まずひとつは、その人のいるところに何らかの形のエネルギーのパワーがなきゃいけない。電力が供給されていなきゃいけないか、バッテリーがちゃんとあるか、何かそういうパワーがないといけない。次は、通信ネットワークそのものがそこまでリーチしなきゃいけない。そうすると、ワイヤレスの世界が多分出てくるんでしょうけれども、ワイヤレスでもどこまでも届くわけではないという問題もある。当然のことながら、コンピュータなり何なりのターミナルを持っている、持っていない、この違いだけでも格差が明らかになります。それから、それを使うだけのノウハウがあるかないか。こういうことで、今申し上げたいろいろな基礎条件があるところとないところでは情報の格差が格段に出てくる。そうすると、常に後に取り残されたところは損をし続ける、その格差はさらに広がる、こんなことになるかなという点で心配です。

 きょうは日本でやっている会議です。日本にとって、あるいは英語以外を母国語とする国にとっての問題点は、インターネットを通じて、あるいはWebを通しての情報というのは、現在80%以上が英語であります。将来もこの形になるかどうかということについては2つのセオリーがあって、全世界的にネットワーク社会になれば、英語は必ずしもドミナントなランゲージではあり得ないだろうという考え方と、そうではなくて、常に優劣がついていく社会である以上は英語は常にドミナントなランゲージだろうという2つの考え方がございます。私自身は、英語以外を母国語としているという意味で残念だと申し上げるんですけれども、残念ながら当分の間、英語はインターネット社会におけるドミナントな言葉であるだろうと思っております。この点で英語を母国語としない国民にとっては非常に大きなハンディキャップを負ってしまうということであります。

 こういう全体像を考えたときに、これから先企業としてどのように対応していかなきゃいけないかということについて、もう少しお話をさせていただきたいと思います。やはり企業としての対応で一番大事なのは、アジリティー(俊敏さ)ということだろうと思います。俊敏さを実現するためには、組織を簡素化するとか、あるいは意思決定の機構を簡素化する、結果的に経営のスピードが上がる、こういうことがひとつにはある。次にいわゆる自分のところで何でもやるという自前主義から脱却する必要があるんじゃないか。今、ネットを通じてアベイラブルなあらゆる情報以外のファシリティーは、非常に大きなものがあります。これを全部自分でできると思ったら間違いであります。ですから外部から調達する。技術も、人材も、ノウハウも、そういうものを外部から調達するという仕組みと、その仕組みをつくることによっていわば時間を買うわけですからスピードが上がる。こういうことをやらなきゃいけいない。

 そうすると企業そのものが変わっていく可能性がある。自前でやれるということじゃなくて、マージャーだとか、アクイジッションだとか、アライアンスだとか、あるいはインベストメント、そういうことを真剣に実施していかないといけない世界なんです。それと同時に、外部からのスペシャリストというものを呼んでくる力を、ネットを通じて使うということも必要だと思います。今の自前主義からの脱却という観点は、考え方を変えれば、やはりこのネットを通じての価値連鎖(バリューチェーン)というものができてくるという考え方です。バリューチェーンの中でひとつの企業が自分でバリューチェーンを完結させるというのはほとんど不可能に近いということを理解すれば、先ほど申し上げたような外部からの調達ということが当然起こるわけです。そうするとこれによって形成される世界というのは極めて参入が楽になり、また退出するのも楽になる世界だろうと思います。そうであるとすると、結局ネットワークの時代には何が起こるかと言えば、新しいビジネスのスタイル、新しいビジネスそのものが、事業分野にかかわらず起きてくるということであり、今まで箱をつくっていたメーカーというのは、箱をつくるだけではなくて、さらにそれに加えてサービスへの展開ということを真剣に考えなきゃいけないでしょうし、さらに新しいビジネスへの展開というものを必要としているということです。

 このネット社会において、先ほど3つの会社の例を引かれました。その中のアマゾン・ドット・コムに関して、私自身は相当に違った目で見させていただいております。明らかにネットワーク社会における成功例のひとつでありますし、現在ドミナントなポジションを一番最初に築き上げたことも事実であります。ところが残念ながら、今まで1カ月だけだったでしょうか、全く利益を出したことがなく、相変わらず赤字事業をずっと続けている。そういう事業がどうして継続できるかというと、アメリカの株式市場における資金の調達が極めて容易だということによってできているわけです。これは将来の価値のエクスペクテーションを買っているんだということになりますけれども、果たしてそういうことが継続するという世界がほんとうにいいのかどうか。今、ネットワーク社会になったからといって、先に出たところがそれだけの理由で資金調達をして、損益と関係ない異常なエクスパンションができる世界というものができたということ、これが現実にあるというのはまさに今の世の中です。逆に言うとアマゾンさんだけを責めているわけではなくて、例えばデルコンピュータさんのビジネスモデルというのは、同じネットワーク活用の企業の中で先ほどグレイザーさんがお話しになられたほとんどの要件を備えている企業ですけれども、ここは明らかにデー・トゥー・デーのビジネスで利益を出している。しかも資金繰りは極めて良好です。そういう企業構築ができるにもかかわらず、一方で違った企業のつくり方をしているということについて、非常な問題があるなという気がしております。

 これから先、好むと好まざるとにかかわらずグローバルな展開が起きるわけでありますけれども、私自身の心配のひとつは、今申し上げたような市場独占というものが起こってきている現実に対してそのままでいいのだろうかという全体に対する問題。もうひとつは、すべての情報が流通し始めることによって特に英語以外を母国語にしている社会、文化というものが根底から壊れてしまいはしないかという危惧であります。これは我々日本だけを言っているわけではなく、世界のあらゆる国でもっているそれぞれの文化を大切にしていくということも同時に必要なのではないか。これはネットワークの社会がワン・トゥー・ワンを可能にする、そして個からマスへの発信を可能にするという意味では、使い方によっては文化の確保はできると思います。しかしそれについての意識をしっかり持っていないと、気がついてみたら文化というものは全部の国で破壊されたということになりはしないかとその辺が私の心配であります。どうもありがとうございました。

【野村】ありがとうございました。ではホワイティングさんにプレゼンテーションをお願いします。

【ホワイティング】皆様こんにちは。本日参加できて、大変名誉でうれしく思います。インターネットについての私の考え、そして現状についてお話し申し上げたいと思います。これまでお二方の大変すばらしいプレゼンテーションを拝見し、インターネットの展望についての大変興味深いコメントを伺った後、お話し申し上げるのは大変難しいんですけれども、両者のプレゼンテーションをたたき台にしながらお話し申し上げたいと思います。西室さんから、インターネットが経済に対してどういうオポチュニティーを与えるかということをお話しくださいました。ビジネスをこの分野で新たな方法で行うことを可能にすると。それからグレイザーさんは、実際にご自分の会社がどういうサービスを提供しているかということをおっしゃいました。インターネットを利用して富を創出する、そして新たな市場、新たなオポチュニティーを我々全員に提供してくれる企業となっております。私はインターネットの技術あるいは企業を連結するネットワークの技術的側面についてお話しするのではなく、今ビジネスモデルで生じている基本的な変化について、また全世界の企業組織の組織そのものが変わり、新たな仮想企業を設立するという動きについて申し上げたいと思います。20分の時間の中でつの基本的なことをお話ししたいと思っています。

 第一に、電子商取引がもたらす新たな変化について私が何を考えているか、インターネットを使うやり方、我々がビジネスを構築するやり方についてどういう根本的な変化をもたらすかということについてお話しし、第二にこの新たなインターネット企業がどういう形で組織化を図り始めているかということについて申し上げたいと思います。インターネットをどういうふうに利用してビジネスをやるか、我々がこれまでビジネスを見てきたやり方とは全く違ったやり方をすることになると思います。最後に幾つか、こういった世界中の組織が新たなサプライWebを供給するにあたってどういうふうに協力を始めているか、バリューチェーンとしてサプライWebやいろいろな組織の構成のやり方などについて申し上げたいと思います。

 まず第1点については、私がなぜここにいるかの説明です。すなわちコマースネットです。ここにおられる方々、全世界の事務所で仕事をしておられる方にとって非常に重要な点は、本日私がここに参加する機会を得、特権を得たのは、コマースネットというのは進みつつあるインターネットビジネスをいわばひとつの象徴として示すものだということです。新たなアイデア、新たなビジネスのコンセプトといったものがインターネットに関連して出てくるに従って、それを象徴化するものです。我々は非営利の、いわゆる財団法人のような形でありまして、新たなビジネスアイデアをインターネットに関して出そうというものであります。ですからかなりの時間を全世界の加盟企業と今後どういったことが可能かといったことについて検討しております。これは大変大きな課題であり、将来を予測しようというのと同じであります。

 主要なやり方は、非常に革新的な企業と一緒に仕事をしておりまして、一緒にいろいろなアイデアを実験するという機会を得ております。最善の予測の方法というのは、それ自体をつくり出すということでありますので、そのためには非常に興味深いアイデアを持っている企業と一緒にやり、さらに協力と協調を組織間において図っていく上で、我々はそれを調整しております。またコマースネットや我々の将来の活動、方向性等といったことについて若干ご説明申し上げますが、一言で言えば、今我々がコマースネットでやっている主要なことというのは、非常に驚くべき変化と革新が将来、メンバー間における協力によってどういう形で実現化していくかということです。

 疑うまでもなく商業のやり方そのものが全世界で変わっております。グローバル・マーケットは非常にアクセスしやすくなっておりますし、ビジネスのペースはこれほど速かったことはありません。また我々が日常対面しなければならない変化のかなりの部分、インターネットがプラス面でもマイナス面でも大きな影響をもたらしていると思います。もちろんこの変化というのは我々が未経験、未曾有のことであります。これほど大規模でこれほどの変化が生じたことは歴史上ありません。しかもこれほど急速に変化が生じているという事態もありませんでした。こういった変遷がどういう方向に行くかということを考えてみますと、恐怖を感じるものでさえもあります。明らかに我々は未知の世界に入ろうとしております。両名のスピーカーの方々がおっしゃったこと、そして本日ほかのスピーカーの方々がおっしゃったことも、全く未知の未来を話しているということがおわかりになると思います。そしてインターネットのペースとともに、この未知の速度というのも非常に高まってきております。生まれたばかりの企業、数年前非常に小さかった企業、あるいは全く存在していなかったような企業が、急速に非常に革新的なベースのビジネスをやって非常に有利な立場に立つようになりました。グレイザーさんが全くその典型的な例であります。

 今ここでどんな新しいアイデア、新しい事業が将来出てくるかということも想像はつかないでありましょう。また今後、新たなビジネスに関して新たなアイデアが出てくるでありましょう。皆様もこれから出されてくると思います。こういったインターネットにおける変化を有利にお使いになることを期待しております。いずれ明らかになると思いますけれども、この急速な変化の中で、どんどん出てくるさまざまな要請や機会を十分に活用し得る企業が成功できると言わなければなりません。

 こういった新たなインターネット企業の性質について申し上げたいと思います。基本的な変化がそのために生じています。すなわち電子商取引であります。ここで出てきますのはインターオペラビリティーというコンセプトであります。この電子商取引の分野において言いたいことは、今出ております多くのビジネスモデルは、今後とも続くでありましょう。西室さんはアマゾン・ドット・コムについてお話しになりました。基本的には既存のビジネスモデルが修正され、改善され、そして、インターネットを使うことによってさらに変化していくでありましょう。しかし基本的な概念はリテール(小売)でありましょう。今日のアイデアというのは、多くの企業がインターネットを既存のプロセス、そして既存のビジネスモデルに準拠してやっております。多くの企業はコンテンツとアクセスは世界あらゆるところに提供することによって、電子商取引の解決(ソリューション)が出てくるだろうと考えております。しかし私はそうではないと思います。

 今日いろいろな株式市場を見ましても、一部の企業がこういったことをやることによって株価が上がっているのを目の当たりにしております。しかし長期的には新たな形でビジネスを組織化していかなければならなくなるでありましょう。市場を構築するに当たっても、繁栄と富をもたらすにしても、これは単に株式市場に投資をするだけではできないでありましょう。また株式市場そのものの新たなモデルというものを考えていかなければなりません。今はまだまだ投機的な行動が多く、新たな価値、新たな富といったものが実際に出てきている状況ではありません。グレイザーさんの企業、あるいはインターネットの他の企業のようなところで真の革新が行われて、真の新しいサービスや製品が出てきますと、ほんとうの意味での富が構築されるようになるでありましょう。今日出ておりますのは、新たな段階が電子商取引の分野で出てきているということであります。これはビジネスのインターオペラビリティーというところであります。

 このアイデアというのは、単に私のWebサイト、あなたのWebサイトをリンクして、そこに新たに出てくる人々に関しては、そのコンテンツやパンフレットを見る、あるいはソフトウエアのための注文を出すとか、あるいはハードウエアの注文を出せるようになるということではないんです。今、ここで実際に生じているのはビジネスを全く新しい形で非常にダイナミックに結合させるということです。これがまさにインターオペラビリティーのコンセプトであります。私どもが非常に強く信じておりますのは、我々の加盟企業においてもそうでありますけれども、こういったコンセプトはまさに我々のビジネスのやり方を変えるということです。この変化はさらに大きく劇的なものになっていくでありましょう。今日の電子商取引よりも非常に大きな変化をもたらすでありましょう。

 大多数のインターネット関連での問題というのは、単一のWebサイトということでありました。技術、Webサイト等といったことをサーバーに入れて、私の企業にみんながアクセスできるようにする、皆様がWebサーバーを持ってほかの人々が皆様のWebサイトに行ってアクセスをするということでありました。しかし今日の考え方というのは、このインターネットを企業間のスペースに適用できるようなモデルを探そうということであります。これはサプライWebだろうと、バリューWebだろうと、こういった革新的な技術をうことによって組織を劇的な形で結合することができないかと考えることです。この考え方は今、世界でだんだん出てきている考え方であります。シリコンバレーを見ても、中国を見ても、オーストラリアでも、日本でも、企業はユニークな新たな方法で取引相手とリンクする方法を見出してきております。大変興味深く非常に劇的な変化です。多くの人たちのビジネスのやり方に、そういった変化が出てきております。

 ひとつ我々が発見したこと、皆様は考えなければならないこと、さらに先ほども議論されていたことは、インターネット企業があり、そしてインターネットを使う企業がある。その両者間には微妙な違いがあることでしょう。私が非常に強く思うのは、皆様は自分の会社についてどうお考えになるかです。例えばグレイザーさんのようなインターネット企業の場合、急速に動き、できるだけ順応できるようにする。一方インターネットを自分の現在のモデルに適用するような方向を選ぶやり方があるでしょう。どっちかをとるべきだと言っているのではありません。ただ提案したい点は、この点を考えなければいけないということです。新たな皆様の競争相手、もし皆様がインターネットを使ってのメーカーであるならば、彼らはインターネット企業でしかも製造をやっている企業かもしれません。彼らと同じような考え方を持たなければ、競争ができないわけであります。

 ここで私のアイデアを皆様に披露したいのは、こういったインターネット企業はどういうようなあり方をするのかについてです。非常にオープンであり、彼らはインターオペラビリティーに大変重点を置き、基本的にビジネスのやり方がこれまでとは全く違ったやり方をする企業です。こういった企業は非常に敏捷であり、順応性があり、協力を調整して、いわゆるひとつの共同社会のようなものをつくります。この敏捷性、インターネット企業の多くは、ほんとうに敏捷性そのものが命なんですけれども、それは単に何かを早くやるというだけではありません。例えば私がカスタマーであり、その商品を使っており、そして顧客に対してどれだけ迅速に達成することができるかということに感銘しているグレイザー氏の会社は、単にグレイザー氏の意思だけでは進むことはできません。すでに多くの企業が迅速に仕事をこなすことができております。すなわちかなりのコストがかかったとしても、CEOが机をこぶしでたたいて「やれ」と言っているから、圧力をかけているからです。しかし新しいインターネット企業においてこの敏捷性の概念というのは、市場の変化を非常に早く予見することができ、容易に方向を転換できるような企業です。どこに市場が動いていくかということを早い段階で見通して、最小限のコストで転換していくことができる。これが新たなインターネット組織のいわば典型的な特徴でしょう。敏捷性というのは、こういった組織の基本的な側面であり、彼らの文化のひとつです。彼らのITシステムによってそれが可能になります。しかも、その企業の政策によって、また、経営者の哲学によってサポートされ、単に経営者が何か早くやれと命令をすることによって動いているわけではありません。

 2番目の点は順応性。市場の変化や要求に対して順応性を持つということであります。チャールズ・ダーウィンを思い出してください。科学的に信用のできる理論を自然淘汰の概念のもとに説明をし、進化論として構築いたしました。これはビジネスでも同じです。そこでの要となる考え方、しばしばこれは進化論あるいは適者生存とかそういったことを言っておりますけれども、それがまさにこの分野でも言えるわけであります。我々が生物学、そしてインターネットから学ばなければならないことは、企業のフィットネスというものは必ずしも最も重要なことではないということ。そうではなくどれだけ効果的に変化することができ、順応することができるかということのほうが重要です。自分の競争相手よりも変化を起こす能力があれば、彼らよりも存続する可能性は高くなるでありましょう。世界的に例を見てみますと、非常に強力な安定した組織が、その根本のところでより小さなより弱い会社によって揺り動かされている状況を多々目にしております。こういったことがインターネット企業がこれまでの伝統的な企業と違うところです。非常に敏捷性があり、順応性があるということです。また、伝統的に彼らは協力をする能力があります。これもまた根本的なコンセプトと言わなければなりません。彼らはだれとでも仕事をする意欲があるわけであります。競争相手を最善のカスタマーにもしてしまう。そして、参加をいろいろな活動にしていくというのがインターネット企業です。これもひとつの進化の形態です。生態系において他の種と協力をすることができる能力が高ければ高いほど相乗効果をもたらし、生存能力も高まってくるわけであります。単独で生きる種よりも、その種の生存能力は高くなります。

 最後に企業間の空間の問題であります。これは1つ2つの会社が一緒になるのではなく、ひとつのグループの企業が社会をつくってしまうということです。この社会、コミュニティーというのは、その進化の最終段階です。多くの企業や多くの組織が共通のサービス・インフラストラクチャーをつくって、より大きな機会に順応していく能力を高めていくわけです。この商業のコミュニティーのコンセプト、すなわち企業が必要に応じて一緒にやっていき、サプライWebにプラグインしていくというやり方、これは非常に巨大な強力なコンセプトです。

 先ほど申し上げましたように、中国で生じていることですが、中国の国際投資信託公社は全中国のメーカーと一緒に仕事をしているわけでありますが、インターネットで接続されているわけではなく、インターネットを使って彼らを結合させ、そして製造するに当たってさまざまな側面のビジネスをやるためにWebサイトで一緒に仕事ができるようにするわけであります。オーストラリアでもいろいろな例があります。オーストラリアの企業、ワインメーカーたちが協力をし、フェデラル・エクスプレスと協力体をつくり、このワイン製造業者たちがより効果的により競争力を世界市場で持つことができるように、インターネット上を通じてその能力を身につけるということをやりました。これはまさにひとつのコミュニティーでありまして、こういったものがどんどん出てきております。インターネットをマーケティング、あるいは製品を売るために使うのではなく、新たなビジネスのプロセスをつくって、企業がより効果的、効率的に一緒にやっていくことができるようにするということをやっています。

 この面での要となりますのはデジタル協同組合の構築であります。これは過去にも見られたような組織とそれほど違いはありません。それほど新しいコンセプトでもないでしょう。日本にも農協や農業団体の協同組合があります。いろいろな農業の共同体が一緒になって、いろいろなサービスや事業提供をするため、インフラをつくっているわけでありますが、これはそれぞれの力を利用していくということであります。同じことがインターネットでも生じているわけです。非常に私が確信しておりますのは、近い将来このデジタル協同組合が出てくるであろう、それによって企業がさらに結合し、新たな取引関係が全世界的に生じていくようになるだろうということです。

 ではここでコマースネットについて申し上げましょう。我々の組織でも今申し上げたようなことが生じているからです。コマースネットというのは、協力を調整するということでつくられました。加盟企業がいろいろなリサーチを行い、いわゆるインターネットを今後どういう形で革新していくかということで、1994年に調査をやったわけであります。国際的な企業、大企業も中小企業も参加して、その革新の可能性というものを検討いたしました。そこで、こういった企業がどういうふうに参加をするかということで、大変興味深い面がありました。新たな技術や、新たなビジネスモデルをシェアするだけではなく、いわゆる自発的な関係を全世界でつくり、自分たちのビジネスのプロセスをリンクするということをやり始め、文字どおり新しいビジネスモデルをつくり、新たな企業をつくるというところにまで発展したわけです。多数の既存の組織を、しかも全世界のいろいろなところにあるところを結合していったわけであります。そしてそのアイデアを拡張しています。さらに適応を広げていき、非常に膨大なインパクトを、富の構築やビジネスの新たなやり方に対してもたらしております。ビジネスが単にWebサイトだけではなく共通のビジネスプロセスをとることによって、自分たちのキーパートナーたちとリンクをして拡大していこうとするとどうなるかといいますと、世界市場において非常に強力な力を持つことになります。まさにこれがコマースネットで、今日生じていることです。

 我々は基本的な問題にぶち当たったことも事実であります。これはまさに西室さんがおっしゃった言語の問題に似ております。Webサイトの英語と日本語の問題です。同じような問題がビジネスのプロセスにおいても見られました。なぜなら企業の結合を始めますと、それぞれ違ったビジネスのやり方をしているからです。例えば同じ製品に対して違う製品番号を持っているわけであります。あるいは自分のビジネスプロセスを違う説明の仕方をするでありましょう。顧客も違う名称で呼ぶでありましょう。また顧客ナンバーなども違うでありましょう。こういった根本的な問題があったわけです。そのためにコミュニケーションができないといったことがありました。コマースネットはこの問題に対応すべく、加盟メンバーと一緒に1年半ほど前次の作業を始めました。どうすれば根本的な枠組みをつくることができるか、あるいはアーキテクチャーといった言葉のほうが適切かもしれませんが、この多様な電子商取引の世界がインターオペラビリティーを実現するにはどうすればいいのか。これをEエコノミーと呼んでおります。

 最初のステップは、共通のプラットフォームをつくるということであります。市場にもすでにいろいろなスタンダードがあります。マイクロソフトのビストークから、国連のやっておりますEDラインS、その他、プロトコルなどのEDファクトなどがあります。そのなかで今、初期段階としていろいろなスタンダードをつくり、これに関して初期の検討を行い、何らかのグローバルなネットワークを結合し、インターオペラブルにし、それによってダイナミックな、自発的なビジネスをつくることができるようになると考えております。

 ひとつの例を申し上げます。これは我々が開発したアーキテクチャーです。多くの全世界の加盟企業と協力してやりました。日本からNTTが出ております。アメリカではマイクロソフト、サンマイクロシステム、ヒューレット・パッカード等々といった企業と協力を行いました。われわれは7層からなるモデルをつくりました。それによってさまざまな商取引関係をカバーいたしました。一番下の層、すなわち製品番号をどういうふうに表現するかというところから、ビジネスは何か、どんなサービスなのかということに関しては、何を生産し、何を消費するのかというところまでマーケット・レイヤーがありまして、企業がどういうふうにグループにして、製品やサービスを一緒にやっていくか。一番上はマーケットと市場を分類し、ネットワーク化していくというネットワーク・レイヤーであります。そこで我々がやろうといたしましたのは、インターネットにおいて根本的な能力を構築しようとすることであります。いずれこれが、例えば日本のメーカーが特定の製品のために原材料のサプライヤーを探しているといった場合に、インターネットを手段として使って新たな取引関係をつくり、新たなサプライチェーンをダイナミックにつくっていくことになるわけであります。なぜならそれは既存の関係に固執するのではなく便利だったということで、価格が最善であるとか、あるいは競争観点から一番競争力が強いということで構築した関係ではない状況から、インターネットを使ってこういった最善の能力を一緒に組み合わせていくことができるような世界になります。

 こういった考え方を要約し、2、3、結論的に申し上げたいのは、新たなグローバルEエコノミーというのは、それぞれ個々に何をやっているかということによって成功が図れるのではなく、それぞれのインパクト、協力的な努力、そして相互接続した企業との間でどういうふうにそれが進展していくかということによって決まります。新たな企業が非常にダイナミックな、自発的な形で構築されていく。インターネットは単に企業間だけではなく、企業と企業の間のスペースをも接続し、それによって協力、協調を行っていく。そして敏捷性と順応性があって、それによって企業がどう効果的に競争できるかどうかを決めます。だれが顧客を保有しているかではなく、誰が最もスピードを持っているか、だれが最も変化に対して順応性があるかということにかかわってくるわけであります。これは長期的、安定的な関係ではなく、非常にダイナミックな関係になります。また組織モデル、ビジネス・スタンダード、法的な取り決め、あるいは契約のコミットメント、また我々が今生きているような法的構造そのものが変わるかもしれません。新たな組織に移行していくでありましょう。そして社会的なスペース、参加企業のいわゆるコミュニティーのスペースを変えていくでありましょう。

 振り返ってみますと、ダーウィンは科学者として進化を見てまいりました。彼はインターネットの大変な起業家になれたのではないかと思います。彼はこの経済における基本的な成功のための原理を知っていました。どれぐらい迅速に順応していくことができるか、どういうふうに協力を行うことができるか、どうやってコミュニティーをつくって、それによって自発的に協力し、そしてそのグループとして最善のオポチュニティーをつかむことができるかということがかかわってくるからであります。これは適者生存ではなく、ベスト・コネクティド、いわゆる結合がうまくいっていればいるほど生存の可能性が高まってくるという状況になります。これが私どものWebサイトで、我々の宣伝であります。お話をする機会を与えてくださって、どうもありがとうございました。

【野村】これから私のほうから幾つか質問させていただいて、その後会場の皆さんから質問を募りたいと思います。

 本格的な議論に入る前に、日本とアメリカでは、インターネットの普及度も相当違いますし、Eコマースの発展の度合いというのも相当違うと思う。その前提として通信インフラの差があると思うんですけれども、日本では、通信料金定額性というのはまだほとんど実現していませんし、料金も非常に高い。ホワイティングさんにちょっと伺いたいんですが、アメリカでの一般消費者を対象にしたネットワーク・インフラは、今どのような状況にあるのか、特にブロードバンドについてどういうような拡大期なのか、簡単に説明をいただきたい。

【ホワイティング】もしかしたらグレイザーさんのほうがよりうまくお答えいただけるかもわかりません。アメリカでは、かなり大幅で重要な投資が新しいネットワーキング技術に対して投じられております。大幅に体系幅を拡大し、コストを下げるということで投資が行われております。グレイザーさんに言わしめますと、十分に早く起こっていないと言われるかもわかりませんけれども、新しい広帯域技術が急速に展開しつつあると見ておりますし、拡大が見られてきております。

 しかし我々が好むほどに急速には発展していないと言わなければなりません。世界のほかと同様に、アメリカでは多くのチャンネルがございまして、同じような種類のチャレンジに対抗しようとしております。新しいモデルや新しいアプローチを常に検討して、新しいネットワーク技術であるとかブロードバンドをどのように組み込んだらいいかということを考えているわけですけれども、技術やネットワークはいろいろなものがあります。そして、その進歩は非常に早いものでありまして、我々のビジネスモデルに対する挑戦となり続けております。相対的に低コストで、よいアクセスや接続が提供されていたとしても、アメリカでそれを十分に生かすほどに、あるいは必要な人にすべて帯域を与えるほどに急速に前進していないと言わなければなりません。

【グレイザー】それに対しては2つ答えがあると思います。現在、約100万人のユーザーがブロードバンド・アクセスにおいてケーブル・モデムを有しています。その数は1年前と比べますと倍増、来年はまた倍増ということになると思います。来年はDSLが導入されるかもしれない。これはまだせいぜい10万人のユーザーしか使っていないというものが、ドラマチックに伸びるかもしれないということです。2つ目に私どものユーザーの4分の1の人が、直接大学のキャンパス、政府の事務所、会社から接続している人たちです。てこの人たちこそが、広帯域ユーザーの大半であると言えると思います。広帯域のインターネットを例えば事務所で使う、オフィスで使う、そして自宅でやるようなことで使っているということでありますが、それによって消費者として何ができ得るかということをちょっと味わえることができるわけです。それによって需要が増えるということが米国に関して言えると思います。

 アメリカにおいてケーブル・モデムがなぜ50万から今年やっと100万になったのかと申しますと、インストレーションがまだまだ手作業だということであります。それをインストレーションするに当たって、せいぜい1日2、3軒しか回れないからです。だからこそ文字どおりそれは消費者の需要が制約条件になっているのではありません。ほとんどの場合は、物理的なインフレでもありません。結局スタッフが足りないということで、インストレーションをやる人手不足の問題なんです。そのこと自体は東芝さんとかほかのPCが、もっと簡単に直接インターネットに接続しもっと高速になったならば簡単になると思います。そのために技術的な作業が必要であると同時に、ネットのアクセスがそれによってより簡単になるということになると思います。しかし人手不足こそが、結局ネットの成長における一番の制約条件であります。

【野村】先ほどファースト・ムーバー・アドバンテージ、すなわちスピードの経営の話をされました。3年、4年前までさかのぼれば「インターネット電話はクオリティーが低くて使いものにならない」とほとんどの人が言っていました。インターネット上での音楽配信もクオリティーの面で聞くやつはいないじゃないかということを言っていたと思います。リアルネットワークスが、例えば製品を送り出すときの意志決定はどのようにされたんでしょか。そういうクオリティーと、市場の迅速さと、カスタマーの満足度との兼ね合いというのはどのように図られて、一番乗りというのを目指されているんでしょうか。

【グレイザー】いいご質問だと思います。と申しますのも、ベンチャー・キャピタルがたくさん見られる環境で熱意いっぱいの場合ですと、それによってもしかすると商品を導入しようとしてもきちんとできていない前に慌てて出してしまうというものがあるかもしれません。これだけしかできないにもかかわらず、すべてできるということで打ち出してしまうこともあります。

 弊社におけるプロセスは、例えばある商品を設計する際に厳しい商品に関するテストをすると同時に、実社会の環境で可能な限りそれをテストに付するわけです。そうすることによって商品をつくり、それを上梓するということではないんです。いわばユーザーの方たちに、実際にちょっとテスト期間として使っていただくわけです。エンジニアに対しても、そういった実社会のユーザーのことを念頭に入れて設計しろと指示しております。

 今私は日本にいて、昨日は原稿の用意をしていましたが、まだテスト中のうちの商品のひとつを使って、シアトルで放送されているものを取り込んで日本でトライしていたんです。インターネットを使うことによって、これをひとつのテスト手段にしていったわけです。いわば弊社においては、ただ単に設計すればいい、理論的にうまくいけばいいということではなく、実際に使うということを念頭に入れて設計させているのであります。

 新しいリアル・ジュークボックスというものをつくったわけですが、100人、200人の方にテスターになっていただいたのです。上梓する初日には5万人の人たちがその商品をテストし、試していただくわけです。何か新しいことをするたびに、必ず優秀な100人、200人をテスターとして使わせていただいているわけです。人気があると即みんなが欲しいということで、それをするのもなかなか難しいんです。だからこのテストする。試行錯誤でテストするということだけではなく、キャパプランニングを十分にする。つまりユーザーが最初の1週間でどのぐらい出てくるであろうか。初日、最初の月においてどのくらいのユーザーが出てくるだろうかということを想定し、システムとして例えば私どもが想像した5倍、10倍でもうまくいくかという自問自答式でやっていくわけです。必ずしもそんな完璧にできるわけではないんですが、大半の場合ですと結構うまくやれてきたと自負しております。簡単な答えではなくてすいません。エンジニアリングとしてのチャレンジです。

【野村】西室さんにお伺いしたいんですけど、西室さんも「俊敏な経営」という言葉を挙げられています。今の話を聞くと、同じ「俊敏」という言葉でも、家電製品の今までの俊敏さというのも相当違うと思うんですけれども、何かコメントをいただけますか。

【西室】先ほどホワイティングさんのお話の中で、インターネット・カンパニーと、それからインターネットを利用するカンパニーと、その違いがあるよというお話がありました。我々としては俊敏さを確保するためにはやはりインターネット・カンパニーという形まで行かざるを得ないんだろうと思います。ただすぐにできるというわけではないんで、これがどのぐらい早くできるかというのが今、大企業の間の競争になりつつある。午前中プレゼンテーションされたジャック・ウェルチさんのところでも、非常に積極的に社内の構造改革まで含めてインターネット化というものを考えておられます。それはほとんどの企業において重要な問題として認識され、しかもそれをどうやってやるかということ、それも含めてこれから先がそれぞれの企業の知恵とアジリティーをどう発揮するところだと思っています。

【野村】ホワイティングさん先ほどのおしゃったインターネットを使っている会社とインターネット・カンパニーの違いというのは、大きい問題提起だと思う。例えば我々新聞社だったら、新聞を出していてインターネットもやるという形ですね。普通の日本の銀行のほとんどは店舗があって、そっちは大事にして、インターネットもやるというモデルだと思うんですが、デジタル社会によってアナログ時代のプレーヤーと全く違うプレーヤーがそこで入れかわるんでしょうか。それとも新聞社のようにアナログの時代に生きていた会社も何らかの形でデジタルのネット企業に競争を伍していけるのかどうか。そこら辺について持っていらっしゃるイメージを伺いたいんですけれども。

【ホワイティング】とても難しいチャレンジだと思いますし、幾つかの組織がまさしくそれに直面していると思います。明らかに東芝さんもその問題を組織的に全社を挙げて、取り組んできたと思います。

 例えば銀行を例にとって話しましょう。米国にも大手銀行があって、インターネットを使っているところもあります。しかしインターネット企業ではない。というのはインターネット企業的な思考をしないし、新しい商品を立ち上げるのに随分時間をかけている。また組織をバラすという発想はなく、あくまでも既存の組織にインターネットを取り込んでいるのにすぎません。同時に米国の会社の中には、明らかにインターネット企業であって銀行業務をやっている会社もあります。しかし銀行がインターネットを使う場合と、インターネット企業が銀行業務をやっているのとの間には大きな差がございます。その違いは技術ではないと思います。思想というか、哲学というか、文化というか、それが組織において違うのではないかと思います。インターネット企業の場合ですと、組織を再構築したりバラしたりということを恐れないわけです。新たなるオポチュニティーを求めてやっていくわけです。既存の会社でインターネットを使っているところは、インターネットを既存のビジネスプロセスの中で使っていくわけです。銀行業務におけるいい例として英国では例えば八百屋さんも銀行として生まれ変わる。というのはインターネットを使っているから銀行業務をやる。だからそもそも八百屋さん、あるいはグローサリー・ストアなんですけれども、銀行業務をやるインターネット企業になったということです。そういった意味では、ほんとうの意味でのグローサリー・ストア、八百屋さんではないかもしれませんが、それはいわばインターネット企業的に考えるかということをすれば第1歩になるわけです。銀行としてやるのか、あるいはただ単にお客さまのサポート、取引だけをやるのかということであります。英国において、そういったプロセスを経て随分考え直したわけであります。そしてコアの能力が何なのかを洗い出していったわけです。アナログの新聞とデジタル新聞の違いというのは、どちらかというとコアの能力をどういうふうに分析するかということにかかわっているのであります。出版するか、そして情報をどういうふうに合わせ、まとめるかということであります。いわばアナログ式にハードで出版するかということの違いではないでしょうか。

【西室】今のインターネット・カンパニーということでもう少しつけ加えたかったんで、発言させていただいたんですけれども、きょうの午前中お話しされたジャック・ウェルチさんのところで、今年の1月にGEとして、トータルカンパニーのネットワーク化、インフォメーション・テクノロジーの活用についてのロールアウトをするよと決めたときのメッセージは、デストロイヤー・オーガニゼーション、デストロイヤー・ビジネス・プラクティス、これがメッセージであったということであります。これは何かというと、今まで慣習的にというか実際にエスタブリッシュされている組織というもの、それはやはり新しいインターネットの社会、あるいはインフォメーション・テクノロジーの中では全く通用しない部分がある。それをやっぱり壊さないといけないんだ。それから今までやってきた慣習というものもやはり変えなきゃいけないんだ。それを「デストロイしろ」という非常に強いメッセージで出してきたということだと思います。日本の経営者はどちらかというとマイルドな表現が多いので、強い表現のときにはできるだけ英語を使ったほうがいいかなという気がしております。

【野村】先ほど西室さんの指摘があったんですけれども、アマゾン・ドット・コム型の経営モデルをやや批判的におっしゃられた。今アメリカの企業、ネット企業に限らず、売上高に対してマーケットの時価総額6倍、7倍という企業がある。大企業でも珍しくないですね。それに対して東芝とか総合電機メーカーだと大体売り上げと時価総額は1対1ぐらいの関係だと思う。ホワイティングさんでもグレイザーさんでもいいんですが、いわゆる収益も上がっていないのにそういう時価総額をつけるということは、一種の株高の異常な姿と考えらるか、あるいは非常に不健康な経済の繁栄なのか、もし西室さんのコメントに関して何かご意見があったら伺いたいんですけれども。

【グレイザー】これは非常に興味深い点です。異常な株高、バブルというのは日本でよく言われることだと思うんですが、10年前であればアメリカ側の経営者が日本のPERレシオが高過ぎるということで苦情を言ったでしょう。これは不当な競争上の利点であり、アメリカの資本市場に比べて不当だと言ったでしょう。ですから一種の流行と申しましょうか、ウェルチ氏が今朝おっしゃったように「ひとつの波」で、日本ではこういうふうに言われたときがあるが、今度はアメリカでこう言われるようなったという動きであると思います。

 インターネットというのは、基本的な価値の創出の源だと言えると思います。ほかの技術的な変化と違って、インターネットはあるひとつの業界に影響を与えるものだけではないからです。私自身リアルネットワークスを始める前の10年間、マイクロソフトで仕事をしてまいりました。パソコンで、マイクロ・プロセッサーで、あるいはパッケージ・ソフトウエアという形でもって、コンピュータの世界が垂直思考から一変ました。IBMのメーンフレームの時代、あるいは富士通や日立やその他の時代から、水平的な組織の時代に変わったと思います。マイクロ・プロセッサーやOSアプリケーションなどの水平の広がりであります。世界で最大の業界においても抜本的な変貌が見られたわけですけれども、インターネットはそれよりも大きいものです。ひとつの産業界に影響を与えるのみならず、あらゆる分野に影響を与えるわけで、例えば小売の分野も劇的に変えました。またマスコミの分野、メディアの分野も劇的に変えましたし、インターネットによってビジネスとビジネスの商取引も変わりました。また電気通信や通信の分野も劇的に変えさせたわけです。これだけ違った各分野に影響を与えるということは、インターネットの経済性というのは10倍、15倍、20倍の経済効果を持っているわけで、マイクロ・プロセッサーがもたらした変化以上に大きく有力なものです。

 それを申し上げた上で、さらに金融市場の現状の見方が正しいのか異常なのかについては、そこまでは言えないと思います。私の個人的な意見として言う場合に、これは慎重を期さなければなりません。というのは、たまたまリアルネットワークスが上場企業ですので、アメリカに帰ったときにSECから訪問を受けることがあっては困りますので。ただあえて申しますと、ビジネスの分野でリーダー格の企業は、ほんとうに高い価値を生み出して、長期的にはディスカウンティド・キャッシュ・フローの分析で申しますと、従来の伝統的なビジネスで見られるような今日の株価、これを振り返ってみますと、適切な会社に対するかけであったと言えるような価値を生むであろうところが明らかにあります。もしかすれば破綻するところもあるかもわからない。よい投資というのは、少数の相対的にすぐれた商社にも幅広く目を向けることによって、投資としては成功することになると思います。ヤフーやアマゾン・ドット・コムのどれが過大評価なのか、過少評価なのかというような言い方をするよりは、もしかするとあまりに多くの企業が非常に高いバリエーションを与えられているということに問題があるのかもわかりません。おそらく成功をおさめた大きな企業が、ほかの企業を取り込んでいくというプロセスでもって、十分な価値を実現できなかったところを取り込むというプロセスで進んでいくんだと思います。

【ホワイティング】そうですね。確かにかなり投機筋の対象となっている株式もあるということが言えると思います。もうひとつの側面としては、基本的な新しいモデルが株式市場において台頭しようとしているのであります。歴史的には、私どもが使ってきたモデルというのは、将来の収益を予想し、一定時点において割り引いて評価してその会社の価値を見出し、株価なるものが出てきたわけです。

 今のモデルは、例えば1億人、あるいは10億人のユーザーといったものを動員し、そこで緊張関係、ネットの業界で言うスティッキネスなるものを生み出して、自分のホームページ、サイトを訪れてもらえたならば、どんな価値を生み出すだろうかといった見方をするわけです。そして、何回インターネットにおいてヒットするか。例えば10億人のユーザーが使ったということで、10億だろうと、1億のユーザーだろうと、使うということを考えますと、いつか将来において結局かけるのは、それはグレイザーさんが言ったように、一番乗りになったならば自分のホームページに来てもらえる。そしてそれだけの人たちが会社名を知るようになり、また今は無償だけれども、ダウンロードするようになったならばそれに依存してしまうようになるわけであります。

 となると、それが結局、将来において収益になると同時に、売り上げになるわけです。そういった形でモデルというものが構築されているわけであります。何人かのユーザーをまとめて、そのユーザーをひとつのコミュニティーにすることができたならば、それはとてつもない価値があるということで、それが株価で反映されているのであります。

【野村】スティッキネスという言葉をおっしゃられましたけれども、顧客をつなぎとめることに関して、何か工夫とか、特別に知恵を使っているとか、リアルネットワークスとして特別の仕掛けみたいなものはございますか。

【グレイザー】最初に私どもがやったこと、これは95年にさかのぼる話ですが、最初のオーディオ・プレーヤーを出した際に、これは消費者に対して無償で提供した。ただ単に1カ月とか、あるいは例えば彼らが非営利団体といった形だったら無償ということではなく、恒久的に無料だということにしたわけです。契約を交わしたわけではないんですが、私どもの技術を使っている人たちに対して、必ず商品のフリーバージョンがあるということを公表したのです。94年、95年、私が投資家、その他の人たちと話した際に、「わかった。初めはただだでも、後でみんな、いわば商品漬けになったときに有料にするんだろう」と言われたんです。しかし私どもがとったアプローチは異なっているわけです。アドバンスト・リアル・プレーヤーは3年間で200万販売したわけです。これは有償で、我々にとってもうけのあるビジネスです。しかし、あわせて8,000万人の無償のユーザーがその他の商品に関しています。結局ネットワークというのはリレーションシップであるということを理解したわけです。ただ単にクリティカル・パスをつくってモデルを変えればいい、そして今まで無償だったものを有償にすればいいということではないと押さえたんです。

 2つ目は説明の中でも申したように、ユーザーに対して「あなたはだれなのか」を聞いていったわけです。ユーザーさんに対して、連絡してもいいかどうかを聞いていったわけです。嫌だというところをチェックしない限りにおいては、いいと想定したわけです。その結果、85%から90%の人たちがソフトをダウンロードし、連絡しても全く構わないと返事してくれたのです。私どもが連絡するに当たって、ソフトに関係ないことに関してやらない限りオーケーだと言われたわけであります。これがひとつのリレーションシップ、ハードディスクにおいて一定のスペースを設けてくれるのでコンタクトし、新しい商品や関連するような情報を提供していったわけです。

 それによって3つ目のことが出てきたわけです。約1年前のことですが、ビデオ、オーディオを提供でき得るソフトだけではなく、その種のソフトや他のソフトの新しいバージョンを自動的にアップデートができるようなソフトを提供した。さらに環境を一歩進めた。つまりユーザーがだれであるかを知っているのみならず、あわせて直接的なデジタルパイプをお客さまのハードとの間につなげていったわけです。これを申しているのは、この会場の皆様方にぜひ同じ戦略をとってくれと言いたいからではありません。消費者というのは100本のパイプがハードにあっては困ると思います。しかし比喩として、リレーションシップ・アプローチをとるということ、いわば取引ベースの関係ではなくリレーションシップ(関係)ベースのアプローチをとるということこそが、この種のネットワークの違いです。消費者との個人的な関係がある、だれであるのかを知っている、どういうふうにしたら個々に連絡できるかを知っている、これこそが唯一の最も強力な、新たなるビジネスにおけるイネイブラーではないかと思います。

【西室】ホワイティングさんとグレイザーさんが、それぞれインターネット利用の中の非常に違った分野を代表されているような気がします。ホワイティングさんがカバーしている範囲はビジネス・トゥー・ビジネスのワールド。そこでコミュニティーをつくる話が中心になっているお話。グレイザーさんのほうはビジネス・トゥー・コンシューマー、これが基礎になっている。この2つは融合するところもありますけれども、場合によったら分けて考えなきゃいけない部分が結構ある話だという気がします。

 実は手を挙げさせて発言をさせていただいたのは、グレイザーさんのお話を聞いているうちに、非常に好奇心がわいてきたんですけれども、それはインテレクチュアル・プロパティというかコピーライトの問題。先ほどから私が一度も聞いたことがないので、その件について全くグレイザーさんのオペレーションについての知識がないベースで質問を申し上げるんですけれども、今、音楽のソフトウエアのパブリッシャーの間では、このコピーライトの問題は非常に大きな問題になっていて、それでSDMIというイニシアチブがあります。セキュアード・デジタル・ミュージック・イニシアチブという団体なんですけれども、これでレベルを決めてそれぞれのセキュリティーをしっかりする。そういう動きがあるんですけれども、こういうものについてグレイザーさんのお考えはどうなのかというのを質問させていただきたいと思います。

【グレイザー】SDMIのイニシアチブは非常に重要だと考えます。象徴的な意味でも、また実態的にも、また実際的にも重要です。我々もその創設にかかわった1人で、もともとアメリカのRIWA、レコーディング・インダストリーが始めました。その他の団体、RRIJと日本と協力して、その他のレコーディング・レベルも参加して、またテクノロジーのほうでは東芝とかリアルネットワークス、インテルなども参加を呼びかけられました。CDMIが出発する前に動きとしてあったのは自発的な動きで、消費者側がCDをMP3というフォーマットでエンコードするということがありました。これはMPEGのひとつの基準ですが、これを使ってEメールを通じて音楽をダウンロードするということがありました。これは特に1社がマーケティングをしたということではなく、消費者がこれはいいということで飛びつきました。非常にポピュラーになった理由は、それまではできなかったことが可能になったということがひとつです。音楽に対するアクセスをいつでもどこでも持てるようになった。この中で消費者がCDを買うということは合法的ですし、そして自分の好む順番で音楽を聞くことも合法的です。またまだ無名のアーチストの歌を聞きたいと言えば、アーチストのほうがインターネットに音楽を乗せてダウンロードを許すという合法的な側面です。一方で不法な側面もある。これはまさにコピーライトの侵害にかかわるんですが、SDMIの考え方としては法的なところは許容し、消費者は必ず合法的なやり方でやるように奨励する。一方、非合法的なやり方は避けてもらうということで、我々も精神としてはこれをサポートしています。

 ただ率直に申し上げて、MP3形式によって大手のミュージック・カンパニーがインターネットを本腰で考えるようになりました。インターネットは3年先、5年先の話だろうと、これまでは及び腰だったのが、MP3によって、本気でこれを考えるようになった。これこそ本物のリアルネットワークだと。消費者の音楽の聞き方に影響している。だからここで行動を起こそうと思ったのだと思います。

 5年、10年先になって考えると、インターネットのこの影響はVCR(ビデオ)が映画産業に与えた影響と同じにようなものがあったと言えると思うんです。20年前にVCRが初登場したとき、提訴がありました。ユニバーサル・スタジオとソニーのベータマックスに関する訴訟案件で、アメリカの映画会社ユニバーサルなどは、VCRが映画産業をつぶしてしまう、だれも映画館には行かずテレビから録画して映画を見るだけだと危惧しました。アメリカでは最高裁がVCRは合法だとし、結果として17年たった今、映画産業は実は当時の4倍規模に成長しています。映画館での映画、ムービービジネスが大きくなっています。さらに現在、ビデオのレンタル市場もありますし、あるいは購入ビデオもあります。それぞれが映画館での映画マーケットと同じ規模に成長しているんです。ですからこういったディストリビューションというのは、消費者に追加的な手段を提供し、それだけ音楽を自由にエンジョイできるようにしているわけです。現在、まだ商業市場としては出発したばかりです。ですからいろいろ不安があるのは当然かと思いますが。

【野村】ではこの質問を最後に、後は会場の皆さんから質問を募りたいと思うんですが。ホワイティングさんにひとつ質問させてください。先ほどサプライWebという言葉をお使いになられたと思うんですが、我々にちょっと多少なじみのない言葉でもありますし、ネットワーク上でどんどん取引関係が広がっていくということがサプライWebの意味であるとすれば、それは実際に例えば日本企業のように系列を中心に非常に取引関係の濃いところから、決まりきったところで調達している閉じた調達関係を持っている会社とか、そういう業態にどれぐらいインパクトを与えることになると思われるのか、教えていただきたいんですが。

【ホワイティング】基本的にサプライWebが何を意味するのかをまず説明させてください。その後に系列絡みの質問に答えたいと思います。

 サプライWebの基本的な考え方は何かと言いますと、例えばコストを下げて会社に対して供給する際の参入の障壁を減らし、複数のベンダーの中から選べるということになりますと、そこでの様相というのは、どちらかというとネットワークが接続しているようなモデルになるわけです。いわば直線型のモデルではなくなるということであります。そうした場合、それが必ずしも会社にとっての最も経済的なモデルじゃない、また商品の供給、調達、ロジスティクス面においてベストじゃないということは言えます。しかし状況によって、例えばマルチのソーシングをしたいということで、原材料であれ何であれ複数の会社から調達したい場合は、既存の関係だけでがんじがらめにならないということになります。そうなりますと、皆さんが調達会社についてより多くの自由を享受し、サプライチェーンをいわばもっと俊敏でダイナミックなものに組み立てていくことができます。

 例として大手の米国の航空宇宙産業の会社を挙げましょう。系列と結構似たモデルかもしれません。その会社がかなり突っ込んだサプライチェーンの分析をした後に言ったことです。数社との間に長期にわたっての関係があるり、これらのベンダーに対する依存度があまりにも高いがゆえに、新しいベンダーに変えるというコストがあまりにも高く、新しいベンダーから調達することができない。そして10年にわたって分析した結果、実際の供給のコストや購入している商品コストは、もしそうでなく独立した形で調達するのと比べると1割、2割、3割高だということがわかったわけです。部分的には、組織の体制ゆえにかなり複雑なるベンダーとの関係があったということに起因しております。振り返ってみると、そこまで必要だったかどうかわからないけれども、時とともにそういうふうになってしまった。平たく言いますと、結局一定のベンダーがあって、直線的なベンダーとの関係があったということになりますと、そういったベンダーじゃないところとの取引を開始するのがなかなか難しくなってしまったわけです。しかし参入の障壁を引き下げることができたならばチョイスも増えるし、調達コストも安くなるし、事務的な手続きも楽になる。また同時に、おそらくよりよい品質の物を納入してもらえるんじゃないかと考えたわけです。最終的な分析において、ビジネスのやり方がそれによって最終的に変わるわけではないが、しかしオプションとチャンスが増える。そこでの大事なポイントというのは、その会社がフレキシビリティーを加味したモデル、つまり強制的にこれしかできないということではなく、幾つか選択でき得るようなサプライチェーンを望むということを言ってきたわけであります。

 

質疑応答

【質問】スガタと申します。私はバイラス・マーケティングを駆使したビジネスモデルを構築しようとしている会社の代表なんですけれども、西室さんにひとつご質問がありまして、あとグレイザーさん、ホワイティングさんにひとつ質問があります。

 西室さんに対する質問です。仕事を進めていく上で先ほど「情報のネット上での南北格差」という言葉をでおっしゃったことが、ほんとうにあまりにも日本の場合は諸外国と比べて大き過ぎる。極論を言うと、あるホームページを見てある人は救われたが、そのホームページを見なかったがために救われない人間もいる。そういったことも具体例として起こっているというのを私もちょっと認識しています。コンピュータ業界として、それを是正するために、やっぱりメーカー主導として何かをしていかなければいけないと思っています。その点に関してどういうふうにお考えになっていますでしょうか。

【西室】コンピュータ業界として、いわゆる情報の南北格差的なものを解消するためにやるべき努力というのは、やはりいかに使いやすい端末をつくるのかということ、そしてそのまた端末そのものがいかにローパワーで、ローコストでアベイラブルになるか、これに対する努力以外にないだろうと思っております。この努力は常にコンピュータメーカーとしてやらなきゃいけないことであります。それ以外の部分、つまり、通信料の問題、あるいはコンテンツの問題というのは、また別のエフォートだと思っております。

【質問】どうもありがとうございます。グレイザーさんとホワイティングさんに対する質問です。先ほどネットワークビジネスにおいて、サクセスエレメントとして4つ、5つ、いろいろサジェスチョンいただいて、大変勉強になったんですけれども、我々どもも一応見解を持っております。プライオリティー順に言いますと、まずアトラクティブ・アンド・コンプリヘンシブ・コンテンツ、2つ目にカスタマー・サティスファクション、3番目にホリスティック・バイラス・マーケティング、この3つのキーエレメントがこれからのネットワークビジネスの成功の要因じゃないかということで分析して、それに基づいてビジネスモデルを構築しています。それに対してご意見というのは何かありますでしょうか。

【グレイザー】ニュービジネスということで、ご成功をお祈り申し上げます。私が申し上げた4点の前提として考えていたのは、ビジネスとしてまずプロダクトがある。消費者が望む商品があって、おっしゃるとおりまだ商品がないならばほかはもう何をやったって無関係だということだと思います。それからカスタマー・サポートというのも非常に大切です。フィロソフィー、当社の理念としてもまさにそうです。

 この2つが非常に重要なのですが、しかしこれはどのビジネスでもそうです。インターネット以前もそうでした。またどこでもそうだと思うんですが、先ほどコメントしたのは、インターネットに特徴的であって、ほかには存在しないという要素です。例えばファースト・ムーバー・アドバンテージのお話をいたしました。これはインターネットの世界では非常に重要なんです。消費者がこれを使うという決定判断が非常に早い。伝統的な製造業の世界では複数の企業があります。松下がすぐれた例ですが、常にファースト(初めて)ではないんですが、製造に非常にたけている、また継続的に改善を続けることによって後で参入しても成功できるということなんです。それもインターネットの世界でも可能なのかもしれませんが、少なくともこれまで観察したところではやはりファースト・ムーバーのメリットが非常に大である。だからその1商品でいいとカスタマーは決定する。そこから品を変えると、非常にコストが高くなってしまう。インターネットにおいても継続的な改善ももちろん重要です。これまでのところでは、例えばヤフーのほかにもサーチエンジンがいろいろあります。ライコース、グー、サップ、いろいろあります。そういった企業はいずれも何千万ドルと投資をしてサービスのマーケティングを図っていますが、しかしなかなかヤフーとの差を埋めることはできない。ヤフーの2位以下との差はどんどん広がっているぐらいです。そういったことを考えると、少なくとも当面、やはりこのファースト・ムーバーのアドバンテージというのはインターネットではほかと比べると圧倒的なものがある。

【質問】ジャン-ピエール・レーマン、フランスから参りました。西室さんのお話がありましたので、私からも、英語についてコメントをさせていただきます。皆さんには意外な発言かもしれませんが、私の確信しているのは英語はグローバルな言語として今後も続くという状況は変わらない。これは受け入れざるを得ない現実である。グローバルな世界で英語を話してコンピュータを使えるということは必須条件である。62歳以下で英語もしゃべれない、コンピュータもできないというのであれば、ちょっと厳しいと思うんです。西室さんは英語も非常にお得意でいらっしゃるとわかっていますので、こう申し上げても失礼ではないと思います。私はフランス人でありますが、グローバルな言語、当然英語がその候補になりますが、が非常に有利だと思うんです。グローバル言語があったからといって、ほかの言語を弱めるわけではないんです。フランス人はインターネットに随分時間がかかりました。それはやはりこの言語の問題、言語の闘いがあったからです。言語の点で拒否感があったのです。しかしそれも大きく変わっており、今ブックマークの70%は英語で、残りがほかの言語です。非常にクリエイティブにいろいろなものが開発されて、Webサイトを見ても地元の言語での開発も進んでいます。だからインターネットにおいて、結局言語は活性化すると思います。英語をグローバル言語としてとらえて、しかしそれに付随して各国の言語も開発されると思うんです。

 もうひとつ興味深く思うのは、52歳以上の人間であれば知っている今は緑の党の党首で68年5月のパリの運動のリーダー、ダニエル・コーンベンディさんの最近のWebサイトを見てみました。ドイツ系のフランスの政治家のこのWebサイト、非常にクリエイティブで、フランス、ヨーロッパ色が強いもので感心しました。別に彼の宣伝をする必要もない、金をもらっているわけではないんですが、フランス語で「政治に対する欲求」を意味するhttp://enviedepolitique.org./というアドレスです。フランス語がわからなくても一見の価値があります。ごらんになってください。クリエイティビティーで、これがフランス語でも可能なんだ、英語をグローバル言語としながら、しかしフランス語でもこれが可能なのだという、質問ではないんですが、発言です。

【ホワイティング】野村さんのコメントにコメントします。ひとつ根本的にインターネットについて間違っていることがあります。みんなインターネットはグローバルと言いますけれども、実は違います。インターネットさえあれば国際的な市場に到達することができると考える企業、人々、そしてほかの人と同じ考え方ができると思うのは間違いです。多くの米国企業で、一夜にしてWebサイトをつくればグローバル化できると考えてた企業があります。ひとつのWebサイトがあってみんながアクセスすることができる。「私と同じようなビジネスをやっている人は、私のWebサイトにいらっしゃい」それでうまくいくというのは間違っています。

 インターネットを使うということは、もっと効果的に皆さんのカスタマーがだれなのかということを考えなければいけない義務が出てくる。1対1で顧客と対応しなければいけない、彼らの異なる言語、異なる文化、そして現地化された製品と対応していかなければならないということを意味しています。ですから例えば南アの人と取引をしているというのであるならば、南ア人であるということはどういうことなのか。それに合ったWebサイトをつくり、それに合ったサービスを提供するということが必要です。南アの人が受け入れるWebサイトをつくらなければなりません。グレイザーさんが日本の市場に売り込むということをおっしゃいました。ここにロケーションがあり、オペレーションがあり、人もいるということでした。Webサイトを持つというだけでは、すべては変わるわけではありません。共通言語はあります。しかしその上に対応している顧客の人たちはどういう人なのかということを理解しなければなりません。

 それからインターネットというのは、文化をいかなる意味でも阻害するものではありません。特定のグループの人々のユニークな側面を何ら侵害するものではありません。今そこにお座りの方が、インターネットが現地の文化を強化、拡大し、非常にグローバルな認識をそれぞれの国々の、あるいはそれぞれの人々の文化に対して貢献できるとおっしゃいました。基本的には合意します。インターネットというのはひとつの異なる文化が尊重される世界をつくる可能性があるでありましょう。それぞれの国々のそもそもの文化を維持することも可能でしょう。しかし一方においては、非常に大きな危険性として言えるのは、文化の違いを認識しない人、わからない人がいる場合、そしてもしそういった勢力が支配的になれば、これはまさに個々の文化の消滅を意味します。今ここで私が指摘したい点は、我々が常に念頭に置かなければいけない危険です。それぞれの国々の固有の文化が尊重され、維持されねばならないということを申し上げたいと思います。

【質問】光通信キャピタルのイトウと申します。私ども、この夏に立ち上げたばかりのインターネット、IT専門のベンチャー・キャピタルなんですが、これから日本でもリアルネットワークスのロブ・グレイザー氏のような成功を夢見て、数多くの若いベンチャー起業家が出てくると思います。私どもはそういう若いベンチャー起業家に投資、支援をしていこうと思っているんですが、私どものようなインベスター・サイドに対して期待したいこと、どのようなことを期待したいかということと、あるいは私どものようなこういうビジネスに対して、何かご助言、アドバイスをいただければと思います。ロブ・グレイザー氏にお願いしたいと思います。

【グレイザー】確かに新たなインターネット事業が米国で享受していた利点、日本だけではなく他の世界市場に対して有利であったのは、ベンチャー・キャピタルがあったということです。これは1960年代に始まったビジネスです。大多数がカリフォルニアで、だんだんコンピュータからバイオテクノロジー、コンピュータ産業という形で育っていったわけですが、非常に強力なインターネットにとっての成長の力でした。現在の環境では、企業を構築するということに焦点が当たり過ぎて、いわばひとつのゴールドラッシュ精神のようなものが出ています。とにかくやろうと。

 ベンチャー・キャピタルに対する投資の最善の環境というのは、もしかしたらシリコンバレーではないかもしれません。シリコンバレーでは、みんなビジネスを始めようと、会社をつくろうとしているわけです。しかしみんな最初からベンチャー・キャピタル・ファンドをもらえるわけではありません。日本のような環境下において、非常に深い才能のべースがあり、大変創造的な技術創出の力がある国においては、かなりの革新がここで生じていると言えると思います。イノベーションが起きていると思います。ただ、ちょっと難しい状況を来しているのは、ここにはそういった伝統があまりない。ネットワーク・デバイスもいわゆる伝統としてはなかった。あるいは孫さんのようなネットワークについての投資をやる人々、あるいはインプレスの塚本さんのような方々があまりいらっしゃらなかったということがあるかもしれません。しかし今、こういったグループがだんだんできつつあるわけです。ですから日本の優秀な能力を活用して、すでにこうした投資をやったことのある経験のある人たちを組み合わせることができると思います。

 私どもの取締役会に、15年ぐらい友人であったK4の創始者がいます。彼に取締役会に入ってほしいと思いました。というのは彼はロータス・デベロプメントという会社をつくったからです。ロータスというのはPCソフトウエア会社で最も重要な会社ですけれども、彼は企業が経過しなければならない、急速な成長を遂げているときに通らなければならない道をすべて知っていました。ですから私は、何か問題があればいろいろな段階について、いろいろなチャレンジについて彼に相談することができ、大変有利でした。

 唯一言えることは、日本にある成功した起業家精神を活用していき、新しい起業家たちがかつての開拓者的な成功者とコネクションができるようにすることを担保することだと思います。そうすることによって次世代の起業家をつくり出すよい環境ができると思います。

【質問】北星学園大学という大学のイチモトという者なんですけれども、今年の6月と7月に、東芝さんと1人の消費者との間のやりとりについて世論にすごく影響を与えたという事件がありました。そういう事件はこれからグローバル化が進むにつれてどんどんもっと大きく、しかも数も増えていくと思います。西室さんに今回の事件から得られる教訓というのを教えていただきたい。

【西室】非常にしんどい質問を……。

 ご指摘のとおり、この事件の発生以来の経過を考えてみると、私どもの会社として反省するところが非常に大きい。私どもは同様のことが発生しないようにやるべきことというのは、まず基本的にはお客さま対応についてのトレーニング、あるいは社内のエシックスについてしっかりとした見直しと、それから実施、学習をやり直すということです。

 あの事件の中で一番私どもとして反省するのは、いわゆる暴言と言われるその部分、それが一番反省の対象です。やはり基本的な社外の方に対するコミュニケーションの姿勢として、私どもの企業が足りないところが明らかにあった。これだけは認めざるを得ないし、これは世間に対して謝らざるを得ないという判断をしたわけであります。

 まとまりがちょっとないんですけれども、我々として多くの反省事項があったということ、それからこれから先も多分いろいろな形で起きてくることだろうと思います。そのたびに「インターネット東芝事件」という名前で言われるのは極めて今後もしんどい話でありますけれども、新しい先例を決して私どもの意思ではなくつくってしまったということでありますから、同じようなことは、私ども起こさないつもりでありますけれども、今度似たようなことが起こるとすれば、もっと上手なハンドリングができるだろうと思っております。

【質問】タツミと申します。リクルートという会社で、組織と人事のコンサルタントをやっております。ちょっとしんどい質問の後に、また西室社長にお答えいただきたいと思っています。先ほど、新しい社会に今後変わっていったときに、一度今の組織を壊さないと対応できないというお話がありました。これから新しい社会に対応していく組織について、ちょっとお話をお伺いしたいと思います。抽象的な質問で申しわけないと思うんですが、可能な範囲でお答えいただけますでしょうか。

【西室】抽象的なご質問に抽象的に答えるというのは、まことに申しわけないんですけれども、あまり詳しくどういう組織をつくりますというお話をすると、私どものアドバンテージが多分なくなってしまうという気がいたします。基本はなるべくデシジョン・メーキングのスピードが早くなるということと、それからレポーティング、あるいは情報のレイヤーがなるべく少なくなるような組織というもの、これがやはり理想だろうと思います。

 それで、これをどうやって構築するかというのは、それぞれの会社が必死になってこれから考えていかなきゃいけないという事項だと思います。先ほど例を引いたGEさんにしろ、私どもにしろ、いろいろな情報交換はもちろんやっていますけれども、まだ決定的にこういう組織でなきゃいけないというものというのは、どこにもエスタブリッシュされていない。そういう新しい組織形態、あるいは企業の経営論というもの、そういうものをこれからつくり直していかなきゃいけないという時代に今、入っているということだと思います。

【ホワイティング】私からも一言申し上げます。コマースネットが世界で毎年展開しているのは、多数の企業トップと話をして、どういうチャレンジがあるか、あるいはEコマースの導入にどういう障壁があるかというのがある。今年アメリカで、初めて組織あるいは企業内の企業文化の壁といった話が出てきました。企業内の文化が邪魔になって、Eコマースの導入が進まないという話です。そういった企業トップと細かく話をしてわかったのは、直面している問題は結局、既存の組織構造がインターネットとうまく合致しない、雇用もしがたいし研修もしがたい、テクノロジーとビジネスモデルの両方を理解している人間が少ないということでした。

 したがってこの新しいインターネットという空間、新しい環境に進んでいくためには、企業組織、人事政策、企業環境が一番の課題である。つまり企業のトップがそういったものについてビジョンを持っていないと、CEOがほんとうに立ち上がって「これこそが将来の方向だ」としっかりしたビジョンを語れるでしょうか。GEとか東芝は違うかもしれませんが、全く新しい組織モデルでやっていくんだということをなかなか言えない。多くのCEOはそれぞれの部門担当がやればいいんだというふうに他人任せにしてしまう。しかも社内でのいろいろな抗争があって、だれがインターネットを担当するかといったいがみ合いに終わってしまうことが多いと思うんです。

【質問】ワイズ・コーポレーションのフクザワと言います。いつもリアル・オーディオ・プレーヤーを無償で使わせていただきまして、ロブ・グレイザーさんに大変感謝しております。95年からこのリアル・オーディオ・プレーヤーを無償配布されているというお話を伺ったんですけれども、たくさんの会社がいろいろなシステムを無償配布されてはいるんですけれども、なかなかビジネス的に成功し、発展されているというものがあまりないと思う。どうしてリアルネットワークスさんがこんなに大発展されて、うまくいっているのかというのがひとつと、今後どのように展開されていくのかという点をぜひ教えていただきたいと思います。

【グレイザー】ご利用いただきありがとうございます。4年間無料でお使いいただいたので、そろそろプレーヤー・プラスをご購入いただければと存じます。

 それはともかく、実はそれが答えにもなっているんですが、製品づくりです。よりコンシューマーに使いやすい商品をつくっていきたい。収益の手段として考えているのは、いろいろフィーチャーを追加する、あるいはプロダクトを追加することによって、そこから利益をと考えています。200万人あるいは200万人プラス1人に商品を売っているわけです。

 それからもうひとつ。オーディエンスが十分に広がると、それだけ宣伝とかスポンサーも探しやすくなります。最近リアル・ジュークボックスは1,000万、子機を売ったと発表しました。アメリカではインターネットの家電販売会社とパートナーを組んでいますし、あるいはミュージック・カンパニー、エイトハンドレッド・ドット・コム、もうひとつチェックアウト・ドット・コムとも提携しています。そういったところから広告費をいただいています。それは我々が到達するオーディエンスが広く、しかもしっかりターゲティングしたオーディエンスなので、それだけ広告費をかけても売りやすいということなんです。

 もうひとつの収益としては、ソフトウエアの放送(ブロードキャスティング)です。無料と同時に、そのアドバンス・バージョンで有料のところもありますので、このように収入源を多角化して広げることによって、今では3種ぐらい当社にとって確たる収益手段があります。

 普遍性ということも大切です。これによってリレーションシップ、顧客との関係を構築することでどんどん収益は確保されるということで、これまでの経済的成功の秘訣はそこにあると思います。今は上場企業ですので、将来の成長の方向についてはっきりしたことは申し上げられませんが、前年同期で一番最近では85%成長しています。この2、3年、毎年80%から100%成長を続けています。将来的にもその成長期待は大だと思います。ただ実現不可能な公約をする企業にはなりたくないと思っています。それは商品においても、また財務においても。ですから将来の成長目標については、それを実現した段階で発表するということでお許しください。

【質問】フェデラル・エクスプレスの者です。ホワイティングさんに対するご質問です。日本の市場で、サプライチェーン・マネジメントをソリューションとして展開してきまして、複数の企業を対象に売ってきてわかったのは、専有的なソフトウエアが日本の企業ですでに使われているということです。ECOOとイニシアチブということについて先ほどお話がございましたが、今申し上げた問題についてはどういう対応をなさっていますか。

【ホワイティング】いいご質問ありがとうございます。フェデックスはプロジェクトの参加企業のひとつです。お礼を申し上げます。

 興味深いチャレンジがあると思います。あまり標準化をすると、一方では専有のプロプライター・ソリューションをもってそれぞれやり方が違う。それぞれイノベーションがあって、アイデアもコントロールも違う。その一方で、全員が同じことをやる。それは結局、共通項が最低のところに落ちてしまって、結局何もうまくいかないということになりますので、このエコ・モデルで指向しているのはその中間点があろうという考え方です。つまり十分にイノベーションが確保され、各人が専有のプロプライターなビジネス・プロセスを使うことができ、ユニークにビジネスをすることができる。しかし共通項も探す。複数のベンダーで各パートナー間で交渉によってそこら辺をインテグレーションする。しかしすべて同じソフトウエアに統一して、同じベンダーから買うということではないんです。1社が1社のベンダーからしか使えないということではない。これまではそういうことがありました。独占的に1社のソフトウエアしか使えないということもありました。今はありませんが、アメリカの北西部でそういう状況があったんです。ですから全く同じということではないんですが、インターオペレーションが可能な環境をつくる。それぞれがソフトウエアを持ちながら、そのインプリメーテーション、アプリケーションの設計上、他のアプリケーションとの互換性がきくようなモデルをということなんです。

 ソフトウエア会社の多くがそういったモデルを出そうとしていますし、大手のソフト会社、テクノロジー会社、サプライチェーン・マネジメントの会社なども、そういった方向を志向していると思います。フェデックスもそういう考え方をサポートしてくれていると思います。サイトに入りやすい互換性、インターオペラビリティーを可能にするような、それが将来のモデルです。そうしない企業は、結局市場から脱落すると思います。歴史を振り返っても、あまり長く専有技術にしがみついていますと市場全体にとってマイナスで、そしてみずからも消滅の道を…、ということで、必ずだれかが出てきて防御できない、落ち込むほかないということになってしまうと思うんです。

【野村】パネリストのみなさま、ありがとうございました。


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