Asia 99

アジア危機への民間企業の取り組み探る
「危機を乗り切る経営戦略」について討論するパネリスト

 第5回国際交流会議「アジアの未来」(日本経済新聞社主催)は4日午前、都内のホテルで2日目の日程に入り「危機を乗り切る経営戦略」をテーマに、アジアの有力企業経営者らが講演とパネル討論を通じて、アジア危機に対する民間企業の取り組みやアジア経済の将来像を探った。

 講演ではタイ最大の製造業、サイアム・セメントのチュンポン・ナラムリアン社長がアジア危機の経験から学んだ企業の危機管理のあり方として(1)危機の現実を早く認識する(2)最悪の事態を想定する(3)素早く行動する(4)危機が終息したら、新たな環境に対応するためのリストラに踏み切る――の4点を指摘した。

 リストラでサイアム・セメントが40以上あった事業のうち中核事業を3つに絞ったことも紹介した。

 続いて台湾の奇美実業を世界最大のABS樹脂メーカーに育て上げた許文竜・董事長が「今回の事態は危機ではなく重要な転機だった」との認識を示した。

 同氏は「アジア危機で韓国やタイのABS樹脂企業の輸出が伸び、企業の競争力は著しく強まった」と言明。この結果、同社の市場シェアが低下、新規事業の液晶部門に大規模な投資をするきっかけになったと述べた。

 京セラの稲盛和夫名誉会長は情報産業の拡大にもかかわらず「アジアの企業はモノ作りに特化すべきだ」と語り、そのために労働生産性の向上を含めた競争力強化の重要性を強調した。

 パネル討論ではアジアの企業の借り入れ依存体質が危機を招いた一因との見方で各氏が一致。チュンポン氏は危機を契機に企業経営が同族的なものからプロフェッショナルによる経営に移行する流れが加速したと語った。

 21世紀のアジア企業のあり方について、チュンポン氏、稲盛氏は情報通信技術を活用しながらも引き続き製造業中心となるとの見通しを示した。許氏は環境に配慮した企業経営が重要になると述べた。

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