Asia 99

首相、アジア再生へ包括支援策・今夏に経済調査団
夕食会であいさつする小渕首相

 小渕恵三首相は3日夜、同日開幕したアジアの将来を討議する国際交流会議「アジアの未来」(日本経済新聞社主催)の夕食会であいさつし、アジア経済を再生させるため、従来の金融支援に加えて失業対策や貧困対策、環境保護策などを幅広く盛り込む包括支援策を年内に策定する方針を表明した。同時に、奥田碩日経連会長(トヨタ自動車社長)を団長とする「アジア経済再生ミッション」を8月末から9月にかけて韓国、ベトナム、インドネシア、マレーシア、タイ、フィリピンの6カ国に派遣し、包括支援策に反映させる考えも明らかにした。

 首相はアジア経済の現状について(1)金融市場は落ち着きを取り戻しつつあり、実体経済は回復の兆しを見せている(2)各国は忍耐強く改革努力を続けなければならず、経済・通貨危機の教訓を学びとって未来へつなげていく努力を怠ってはならない――と指摘。そのうえで「経済界や学会などの指導的立場にある方々にアジア6カ国を巡っていただき、その成果を基に具体的な提言を取りまとめてもらう」と表明した。

 これは経済界トップと学者で構成する総合的な経済調査団の派遣によってアジア経済の現状と課題を詳細に調べ、その結果をもとに包括的な経済再生支援策を策定、アジア各国の経済回復と改革努力を後押しする方針を鮮明にしたものだ。

 調査団は奥田氏のほか、行天豊雄国際通貨研究所理事長、高垣佑東京三菱銀行会長、福井俊彦富士通総研理事長ら7人で構成。提言には300億ドルの金融支援を柱とする「新宮沢構想」などこれまでの日本の支援策の検証に加え、失業・貧困対策や環境保護、犯罪防止策など今後、取り組むべき新たな貢献策が盛り込まれる見通しで、首相は包括支援策の土台とする考えだ。

 首相はあいさつの中で日本の経済回復に関して「産業競争力の強化に向けた具体策を11日に取りまとめる。いずれにせよ問題があれば克服することにより、不退転の決意で日本経済の再生を確実に果たしていきたい」と強調した。

 安全保障問題を巡っては、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)政策に関して「米国、韓国とともに抑止と対話のバランスを取るという基本方針の下、北朝鮮側が対話の扉を開くよう粘り強く働き掛けていく」と説明した。

Copyright 1999 Nihon Keizai Shimbun, Inc., all rights reserved.