Asia 99

アジア危機時の財政引き締め要請、是か非か
「アジア通貨・金融安定への道筋」について討論するパネリスト

 「国際通貨基金(IMF)がアジア諸国に危機当初、財政引き締めを求めたのは間違いだった」「いや、当時としてはそうするしかなかったのだ」――。都内で昨日開幕した日本経済新聞社主催の国際交流会議「アジアの未来」は4日午後、「アジア通貨・金融安定への道筋」とのテーマで討論会を開いた。その席で大蔵省の黒田東彦国際局長と堀口雄助国際通貨基金アジア太平洋局準局長の意見が対立する一幕があった。

 IMFは危機に見舞われたアジア諸国向けの当初プログラムで財政引き締めを要請した。ところが引き締め政策はうまく機能せず、プログラムは後に見直しを余儀なくされた。対GDP比4、5%の財政赤字を容認することになったのだ。

 「確かにロシアやブラジルのように財政が赤字だったならば引き締めも当然だが、当時のアジア諸国は財政黒字だった」と指摘したのは黒田局長。こうした背景もあり、当初プログラムは強烈なデフレ効果を招きながらも、資本流出にうまく歯止めをかけることはできなかった。黒田局長はIMFの当時の引き締め政策は「明らかに間違いだった」と断言、ただ「後でプログラムを改革して、効力を発揮した」との評価を示した。

 一方、それに対し堀口準局長は「そうはいうものの危機当時,IMFが初めから財政赤字を認めていたら市場の投資家のコンフィデンス(信認)を回復できたかどうか疑問だ」と反論、当時としては財政引き締め以外の手はとりようがなかったと強調。

 これに対し黒田局長、「その意見は以前、別のIMF幹部が話していたのとまったく同じ」とまたまた応酬。「でも、危機に見舞われている当時国が言うことなどだれも信じてくれない。だからIMFには『財政は拡張しないとだめ』と正しいことを言って欲しかった。IMFが言わないでだれが声を上げて言ってくれるのか」としたところで、論争は一応、お開きとなった。

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