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マハティール・ビン・モハマド氏
マレーシア首相
 新宮沢構想に謝意

 この2年間、アジアの多くの人々が苦しみと試練の時を生きたことを忘れることはできない。我々に哀れみを示し痛みを分かち合った人々がいたことと、我々を嘲笑(ちょうしょう)した人々がいたことも忘れられない。アジアは近年の過ちを忘れないことが重要だ。「不合理な繁栄」の犠牲になる過ちを、2度と犯してはならない。

 危機を振り返る時、必要な時に味方になってくれた友人を忘れてはならない。私はマレーシア国民の日本に対する感謝を表したい。新宮沢プランを打ち出した日本はつらい時の貴重な友人だった。我々は生きている限り忘れないだろう。

 今、明らかに最悪期は終わった。回復への道を我々はたどっている。同時に、長い道のりが待っているのも確かだ。経済と社会の必要な改革と立て直しを続けなくてはならない。

 政府は市場が反乱を起こすのを放置してはならない。市場の「見えざる手」は、優れた統治の「助けの手」を与えられた時に、最もうまく機能することが多い。それは、中央銀行、監督当局、選ばれた政府、あるいはこうした機関すべてによるものだったりする。

 アジアに住む我々は、国際通貨システムの抜本的改革に努めなくてはならない。我々には多くの弱点がある。縁故主義(クローニズム)を打破し、腐敗を根絶し、透明性を高めなくてはならない。

 97年7月2日からの経済危機に際し、マレーシアはあらゆることをやった。我々のうちの何人かが国際通貨基金(IMF)方式に強く影響を受けていた時は、患者に出血させるという伝統的な治療法を適用した。企業が死にかけていたのに金利を上げ、投資や消費が底に落ちた時に財政黒字にもかかわらず歳出を20%削減したのだ。

 98年9月1日、我々は合理性と実利主義を取り戻した。通貨にトレーダーの手が届かないようにし、株式投資利益を99年9月前に国外に持ち出すことを非合法化した。我々は経済合理性に反すると非難された。しかし我々の実利主義は劇的な効果を生んだ。再び希望がわいてきた。

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