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ジョセフ・エストラダ氏
フィリピン大統領
 地域協力、成長促す

 1年前の就任時、アジアの経済危機は最も深刻だった。最初の国政演説で率直に懸念を表明した。今、自信を持って言える。まだ森を抜けていないが、確かに回復軌道に乗ったと。希望が戻り始めた。今年も困難な年かもしれないが、98年より良いのは確かだ。

 北東アジアは経済改革の約束の実行が重要で、中でも小渕首相が取り組む金融システムなどの「静かな改革」の成否がカギになろう。韓国の構造改革も重要だ。中国も地域の成長と安定のため何らかの措置を検討するのが望ましい。

 国際的には、国際通貨基金(IMF)が求める健全で透明な財政運営の原則などをもとに(経済運営の)「国際規範」を作り、政策形成の公開性と透明性を高めるべきだ。

 地域協力は成長と開発を維持する重要な手段となる。フィリピンは東南アジア諸国連合(ASEAN)の(市場統合を目指す)「2020年ビジョン」を支持する。

 欧州は欧州経済通貨同盟(EMU)を築き、単一通貨ユーロを発足させた。アジアでも「東アジア共通通貨」の有効性を真剣に検討すべき時だと強く感じる。米ドルなど主要通貨への依存度を下げ、東南アジア諸国の金融、財政の協調を促すことになるからだ。

 金融危機から我々が学んだことは、急激な成長が国の発展にとって唯一の要因でもなければ、決定的な要因でもないことだ。国際機関が、経済合理性と政治的な現実との均衡を図ることを望みたい。経済的に必要なことは、時として政治的には破壊的だ。

 アジアでは朝鮮半島、中国・台湾関係、南シナ海の領土紛争、インド・パキスタン紛争の4つの問題が安全保障上の大きな懸案だ。冷戦後はテロや麻薬、環境問題など非軍事的な脅威が浮上している。

 こうした状況に対応するため、ASEAN地域フォーラム(ARF)の権限強化や活性化、あるいは新たな安保メカニズムの構築を考えるべきだ。ARFは予防外交や紛争の防止、解決のための行動ができるようにすべきだ。

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