「アジアの未来」
HOME

フロントページ
21日の概要
22日の概要
会議日程
講師略歴
アジアの未来
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
日経アジア賞
English
22日の概要
パネル討論
▼「米オバマ政権と東アジア外交・安保の新局面」

 谷内正太郎氏 今後のオバマ政権の対アジア政策はどう変わるか。

ペリー氏

 ウィリアム・ペリー氏 北朝鮮はミサイル発射やプルトニウム処理を続けるだろう。1年間で1発の核爆弾ができるくらいの核物質を処理すると思うが、大原子炉を運転する技術力はないはずだ。オバマ米政権は核問題を巡る6カ国協議が失敗だとみるだろう。米戦略は「核のない世界」を提唱したオバマ大統領のプラハでの演説で分かる通り大きく変わった。

 米国は北朝鮮が6カ国協議復帰を望んでも、これまでの交渉の仕方は適切でないと考える。新戦略を練るうえで韓国や日本と密接に協議するだろう。1999年に日米韓が共通で戦略を策定した「TCOG(日米韓3カ国政策調整会合)」が再現されるとみる。

金 錫友氏

 金錫友氏 北朝鮮で金正日総書記の健康問題や跡継ぎ問題が浮上している。総書記は父と共同統治で基盤を築いたが、体制維持が最大の課題だ。

 4月に北朝鮮が「人工衛星」を搭載していると主張して長距離弾道ミサイル「テポドン2号」を発射する前、長男の金正男(キム・ジョンナム)氏が北京空港で「日本のミサイル迎撃は当然だ」と語った。長男だけでも第三国で生き残ってほしいという総書記の意向(で自由な発言を許している)と分析した。

 朱建栄氏 オバマ政権のブレーンの1人が米国と中国の2大国を表す「G2」の表現を使ったが、G2ではアジアの問題を解決できない。日韓と一緒に解決することが必要だ。6カ国協議は曲折はあったが、問題を1つずつ解消する枠組みとしては現時点で唯一。重要なのは(北朝鮮を除く)5カ国が常に協調し、北朝鮮に振り回されて一喜一憂せず、同じ道を進むことだ。

 ペリー氏 なぜ6カ国協議が失敗したか。北朝鮮は6発の核兵器を作り、核実験までした。協議を始めたころは、核兵器の製造阻止が狙いだった。

 今後は核を持った北朝鮮にそれを放棄させる試みであり、もっと高い山を登らなくてはならない。核兵器を放棄する動機を与え、プレッシャーをかけなければいけない。経済・金融で圧力をかけるには、中国の協力も不可欠だ。

谷内 正太郎氏

 谷内氏 安全保障全般を話し合う場に6カ国協議を格上げするのは反対だ。北朝鮮からすれば米国も核を放棄しろという論理になる。時期尚早だ。アジア太平洋経済協力会議(APEC)や東南アジア諸国連合(ASEAN)など対話の枠組みが多く存在する。日米中、日米韓などの場で協議できる。

 ブッシュ前米政権にはアジア政策が不在で、日本との意思疎通も十分ではなかった。北朝鮮のテロ支援国家指定を解除した経緯も、説得力ある説明を聞いていない。

 金氏 日米関係は無視できないが米中関係の存在感は増している。同盟国のように完全に意見を一致させることはないが、互いが何を考えているか知るのは重要だ。中国は北朝鮮が崩壊し、米軍の影響力が中国国境に及ぶことを懸念し、北朝鮮を支持していた。今も数十万人の脱北者を送り返しているが、国連安全保障理事会の常任理事国としてありえない。

朱 建榮氏

 朱氏 中国のスタンスは他国と同じだ。米朝間の緊張があれば中国自身の経済問題にも影響する。

 今の時代(イデオロギーで色分けする)価値観外交は時代遅れではないか。中国国民の豊かさや人権を求める方向性は他国と変わらない。

 日本は米国から民主主義を持ち込まれ、自前の民主主義を発展させた。韓国は経済発展と民主主義を並行発展させた。共産主義は失敗し、中国はその道をとらないと決めた。経済発展で基礎をつくり、社会主義を発展させる途上段階にある。

[5月23日/日本経済新聞]

一覧へ戻る >>

(C)2009 Nikkei Inc./Nikkei Digital Media, Inc. All rights reserved.