内需拡大、改革推進が必要
米国と世界の経済は2008年秋、米議会がリーマン・ショック後に公的資金投入の枠組みを否決した時に大きな転機を迎えた。政府に経済をコントロールする能力がないという「信認の危機」が起きたのだ。
取るべき政策は2つある。まず政府と中央銀行が金融システムを安定させ、信認の危機を止めること。もう1つはマクロ経済の低下に歯止めをかけるため、需要不足を補うことだ。日米欧やアジア諸国では、こうした政策が整ってきた。
アジアの国々は需要創出の政策に重点を置いている。特に中国は昨秋、温家宝首相が国内総生産(GDP)比で約5%の財政出動をすると宣言した。日本に比べ国債の発行残高が少なく2、3年の間、国債増発で財政を支える余力がある。
(新興国経済は主要国経済と連動しないという)デカップリング論は正しくないが、中国は高い成長力を維持している。今年に入り、中国経済は力強く動き始め、アジアの多くの国が良い影響を受け始めている。
戦後最悪のマイナス成長を記録した日本経済はこの2年間、改革の勢いが低下し、極端な外需依存に陥っていた。内需依存への転換が必要だという議論は正しいが、改革を進めなければ内需は落ち込む。
日本政府が取っている雇用調整策は「助けるための政策」であり、雇用の増大や技術習得につながる「解決するための政策」を進めるべきだ。前者に固執した国々では経済がいつまでも回復せず、財政赤字の重みに引きずられてしまう。