「アジアの未来」
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グエン・タン・ズン
ベトナム 首相

域内貿易、成長けん引 東南アFTA、効果的に実施

 最近の経済危機で世界の経済システムは欠陥を露呈し、ますます速いスピードで変わる世界の不安定さと予測の難しさを実感させた。グローバル化が進んださなかに経済危機は起きており、持続的発展や健全な管理体制の必要も認識させた。困難の克服には域内各国の一段の連携が必要だ。

 新たな繁栄の段階にたどり着く前に、アジアには多くの課題が待ち受けている。アジア経済は昨年後半から世界的な経済危機の影響が顕著になっている。投資や貿易などが大幅に減り、数千万人が職を失い、暮らしが厳しくなった。アジア通貨危機と比べても今回の金融危機の影響は小さくない。それは多くのアジア諸国の経済が、厳しい景気停滞に直面する米欧諸国に依存するからだ。

 アジアが活発に成長する地域であり続けるために取るべき方法を幾つか提案したい。まず自信を取り戻し、持続的成長の基盤を構築すること。そしてアジア域内の貿易と投資の比重を高めることだ。域外市場からの打撃を受けやすいという脆弱(ぜいじゃく)さを修正する手段となる。東南アジア諸国連合(ASEAN)が多くの国々と締結した自由貿易協定(FTA)を効果的に実施していく必要もある。

 アジア開発銀行(ADB)の役割を強化し、地域で最も重要な金融機関とする必要がある。ADB加盟国がこの方向でイニシアチブをとるよう期待する。域内統合を深めればアジアが一番早く危機を脱却できるだけでなく、世界経済をけん引する地位を堅持する意味でも重要な意味を持つ。

 発展格差の是正に向け、遅れている地域や広域開発を引き続き推進すべきだ。日本などがかかわるメコン川流域開発などは重要な意味を持つ。アジアの経済大国である中国やインド、韓国、オーストラリアや域外国、国際機関もこの地域の開発事業に関心を持ち、事業にもっと参加してくれるように期待したい。経済大国の支援は地域間の経済格差の是正に寄与するだけでなく、地域の貿易成長や投資促進に必要な社会基盤づくりにつながるからだ。

 さらに、アジア域外の大陸との協力を深める必要もある。保護主義や閉鎖主義には対抗しなければならない。世界貿易機関(WTO)やアジア太平洋経済協力会議(APEC)、アジア欧州会議(ASEM)などの枠組みでアジア諸国が連携する必要がある。

 ベトナムは持続可能な経済成長の実現へ市場経済の制度を確立していく。インフラ整備や行政改革などに取り組む。

 新型インフルエンザのような問題への対応強化も必要だ。新型インフルエンザは世界でかなりの速さで広がっている。アジア各国は独自の努力に加え、互いが協力して対応する必要がある。

[5月22日/日本経済新聞]

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