「アジアの未来」
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学生リポート
「アジアの幸福」の実現に向けて
田中舞 国際基督教大学
 サブプライムローン問題や、それに派生する石油、食料価格の高騰、さらにはミャンマーにおけるサイクロンや、中国における震災など、アジアにとって克服すべきさまざまな問題に直面する中で、第14回国際交流会議「アジアの未来」は開催された。タイのスウィット・クンキッティ副首相による、「アジアの幸福」を実現するために、多様な国々の集まるこのアジアがどのように協力していくのか、という講演を皮切りに、現在のアジアを取り巻く諸問題について議論が交わされたこの会議は、アジアの一員としての日本で、大学生として国際関係学を学んできた私にとって、自分という一個人とアジアとの関係性、そしてこれからのアジアの可能性について改めて考え直す貴重な機会であった。

 サブプライムローン問題や、石油高騰、環境問題など、2日間の日程を通してさまざまな問題について議論されたが、その中で印象に残っているのは、アジアの多様性についてである。文化や習慣はもちろんのこと、経済、社会の発展や、政治も異なる国々が集まるアジアという地域が、今後どのようにして結束し、協力し合っていくのかということは、多くの問題の根底にある問いなのではないかと感じた。例えば、サブプライムローン問題については、それに派生する石油、食料価格の高騰、そして各国でのインフレーションなどが課題として挙げられていたが、それぞれの問題の直接的な原因がサブプライムローン問題だとしても、その根本的な原因は、各国の異なる事情によって様々であることがわかった。また、環境問題については、「途上国」インドネシアによる積極的な取り組みが紹介された一方で、同様に環境問題と経済成長の両立に取り組む韓国が、ポスト京都では「先進国」として見なされるのでは?という問いに対して、日本が進めるセクター別アプローチは、韓国にとっては今の段階では難しい、と答えるなど、一様に「途上国」あるいは「先進国」という枠で考えられるほどアジアは単純ではないのだ、ということを痛感した。

 このような多様性を抱えるアジアだが、経済的な連携のみならず、災害などほかの問題に対しても、地域全体の協力体制の構築が不可欠である、という議論が頻繁に交わされたことは、今のアジア、そして世界の状況を考えると当然のことであろう。しかし、そのような議論の中でも、特に印象に残ったのは、田中均氏の、「今や、アジアの協力体制については、話し合いを行うだけでなく具体的なオペレーションを進める時期に来ている。既存の組織でもいいから、具体的な行動に出るべきだ」という言葉である。多様性を抱える、けれども「アジア」というひとつの地域が、さまざまな共通の問題に直面する今、その多様性を乗り越えて、具体的に協力のアクションを起こすべき時期が来ていることを明確に示す言葉だと感じた。

 以上のように、今後世界の中心的な存在になっていくだろうアジアが、現在抱えている諸問題やこれから進めていくべき協力体制について、様々な意見が交わされる場にいられたことは、これからのアジア、その中の日本の立場、アジアと世界との関わり、そして、自分という一個人とアジアのこれからについて考え直す上で、とても貴重な経験であった。この経験を生かし、これからのアジア全体の動向について、見守るだけでなく積極的に関わっていけるようになろうと思う。

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