「アジアの未来」
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グローバルな挑戦で近づくアジア
川口なを 慶應義塾大学
 議論する時は過ぎた、協力して行動に移し始めよう――この会議を通し、幾度となくこのようなメッセージを感じた。グローバル化時代のアジアは、多くの可能性を秘めているのと同時に課題にも直面している。環境問題、サブプライム、原油高騰、北朝鮮問題など多くの複雑且つ重要な課題を数多く抱えるが、度合いはどうであれ、全ての国が同じ方向を向き同じ方向に歩を進めているのではないか。アジアは、確実に歩み寄っているのではないか。これらが、今会議に対する私の率直な感想である。文字を通してではなく、それを真に実感する機会を与えてくれた「アジアの未来」に深く感謝したい。

 7月のG8洞爺湖サミット開催を控え、主要課題の一つである環境に関する議論は非常に興味深かった。京都議定書で定められた1990年比6%削減の達成さえ危ぶまれ、中期目標を設定することにも消極的な日本が、いかにして洞爺湖サミットへ向け指導力を発揮していくような立場を確立するのか。2050年までに地球規模での排出を少なくとも半減させるとし、大きく前進したドイツ・ハイリゲンダムから後退せず、且つ実現可能な環境枠組みを設置することができるのか。そのような期待の中で、インドネシアのウィトゥラル環境相、韓国の李万儀環境相、そして日本の鴨下環境相の討論に耳を傾けた。インドネシア環境相は、途上国でありながら2020年までに17%削減という積極的な目標を掲げ、昨年のCOP13で採択されたバリ・ロードマップに続く貢献の意思を表明した。韓国は、慎重な姿勢を示しつつも、李明博新政権のもと経済と環境の共生を目指すパラダイムシフトを実行中であるとした。そして、日本はセクター別アプローチへの理解を求めつつ、京都議定書の6%目標は必ず達成し、今まで消極的だったその後の中期目標設置に前向きな姿勢を示した。先進国、途上国、そしてその中間に位置する国とそれぞれ異なる立場からの環境問題での取り組みは、間接的に互いを刺激し合い、結果的に環境問題への一歩踏み込んだ取り組みへと押しやっているような印象を受けた。いかに「共通だが差異ある責任」を各国が全うし環境問題へモメンタムを築いていけるのか、日本及びアジア諸国の今後の動向が楽しみである。

 環境問題に加え、ミャンマーのサイクロンや中国四川大地震に見られる災害時の協力への言及も興味深かった。福田首相はこの問題に対しアジアの防災・防疫ネットワーク構想を発表したが、そのように越境的な「挑戦」を「機会」に変え団結する。そこにアジアの強みが生まれ、信頼醸成へとつながっていく。今まで漠然としていたアジア共同体への道しるべが、うっすらと浮かび上がったようにさえ思えた。

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