第13回アジアの未来
「アジアの未来」
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学生リポート
「課題先進国」への期待
池田瑞生 法政大学
 このたびの第13回国際交流会議「アジアの未来」では、東アジア域内の特徴である多様性を象徴するように、域内各国が「東アジア共同体の構築」という共通の目標を掲げながら多様な見解を持っていることをじかに感じることができ、大学生としてとても貴重な経験ができた。

 「広がるアジア、強まる連携」のテーマのもと、各界の要人からの東アジア共同体構築に向けた域内の経済統合や安全保障など具体的な議論はどれも興味深かったが、大学で開発経済学を専攻している私は今までにはなかった開発途上国を多く擁する共同体の構築、特に域内経済統合の可能性と日本の役割に関する議論にとても関心を持った。

 竹中氏は「課題先進国」という言葉で、東アジアにおける日本の位置づけが今までのアジアの経済成長の手本としての役割から、今後直面するアジア固有の課題に最初に取り組むパイオニアとしての役割への転換する可能性を説いた。これまで東アジアの地域統合では日本は域内への技術移転や人材育成、投資等、共同体のサポーターとしての役割を求められてきただけに、日本が主体性を持って取り組める「課題先進国」の役割は共同体構築にとても重要であるし、これまで独自の手段で課題を解決してきた日本の得意分野が生きる共同体は大きな発展の可能性を秘めるだろうと感じた。また課題先進国としての役割を果たせるかどうかはこれからの日本を背負う若者にかかっているという私たちへの期待の言葉にとても感銘を受けた。

 発展途上国を含む共同体の可能性だが、二階俊博自由民主党国会対策委員長によると東アジアの域内貿易は56パーセントとNAFTA(北米自由貿易協定)をしのぎ、欧州連合(EU)に匹敵する経済統合が進んでいるという。しかし経済格差の問題は無視できない。アロヨ・フィリピン大統領は、域内の成長と所得の格差にはアジア内での緊密な協力が必要であり、グローバルな問題にはグローバルな連携で解決する必要性を説いていた。またアロヨ氏は域内のグローバルな貿易と投資の促進の重要性も強調していた。

 WTO(世界貿易機関)のドーハ・ラウンドは貧困を削減するグローバルな貿易システムの構築を目指しており、フィリピンでも輸出や直接投資、株式市場の活発さが景気後退知らずの雇用促進を実現しているが、一方で先進国に有利な貿易システムへの言及もあった。世界的な貿易の枠組みを変えることは難しくても、まず東アジア共同体の中から域内の互恵原則の下ウィン・ウィン体制を築けるような貿易制度を確立することは可能かもしれない。アロヨ氏が主張する域内でのグローバルな貿易と投資を拡大させていくためには、域内での貿易、投資等のルール作りが重要であると思った。

 王毅駐日中国大使の外交姿勢には昨年と同様、非常に感銘を受けた。東アジアの安全保障について北朝鮮に核を放棄させるという議論の中であった、「『可能性』を『現実』にすることが外交官の仕事である」という言葉は、昨年の「価値観が異なる相手との共通点を大きくしていくことが外交官である」という言葉と同様、外交を私の身近なものとして考えるきっかけとなり、外交の本質を物語る現役外交官の言葉として私の心に深く刻みつけた。

 最後に、東アジア共同体の構築に向けての議論をアジアの要人から直接うかがえる貴重な機会を提供してくださった日本経済新聞社に心から感謝の意を表したい。

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