「アジアの未来」
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▼B:エネルギーと環境−持続的成長の条件


 脇祐三・日本経済新聞社論説副委員長(モデレーター) エネルギー安全保障と地球温暖化への政策対応が重要性を増している。

周大地氏
 周大地氏 中国はここ数年の平均の国内総生産(GDP)伸び率が10%以上で、昨年のエネルギー消費の伸び率も9%を超えた。中国は需要の90%を自国資源でまかなっているが、消費が伸びている。

 ラデン・スヒヤル氏 インドネシアには多くの鉱物資源があるが、石油への依存率がエネルギー全体の54%と高すぎる。天然ガスやその他の代替エネルギーを使い、石油の比率を2025年までに半減させなければならない。

 十市勉氏 日本エネルギー経済研究所の30年までの見通しでは、アジアのエネルギー需要は現在、石油換算で約31億トン。30年に62億トンに倍増する。増加の半分は中国で、インドも2割を占める。中東依存が大きい石油の供給が止まった場合に備えて、石油備蓄で二国間や多国間の国際協力を進めることも必要だ。

 化石エネルギーの大量使用は、環境問題で深刻な問題を引き起こす。アジアでは二酸化炭素(CO2)換算で温暖化ガスを年間約90億トン排出しているが、30年には180億トンに倍増する。

 脇氏 資源産出国では資源ナショナリズムが高まり、消費国はきわめて積極的な資源確保に動いている。

 周氏 中国は国際的なエネルギー安保体制の改善に参加する。まず多額の投資で石油、天然ガスの国内生産量を拡大する。バイオエタノールなど代替エネルギーも開発。世界各地の石油、天然ガス生産への投資も増やす。「資源外交」との声もあるが、平和外交で国際的な緊張緩和につなげる。日中間には東シナ海ガス田開発の問題も起きているが、協力して解決したい。

ラデン・スヒヤル氏
 スヒヤル氏 インドネシアの石油生産は日量100万バレルまで減った。ただ未開発の資源鉱区が50―60カ所あり、地下深くに大量の石炭の埋蔵がある。こうした資源が開発されれば他の国にも配分できる。発電にもっと石炭を利用し、国内の家庭向けガス供給を増やす。バイオエネルギーのエネルギー消費全体に占める割合も5%にしたい。

 十市氏 中国は国家と企業が一体となって資源確保に動いているが、少しやり過ぎた面もある。平和や人権、民主主義といった価値を尊重して資源開発を進めないと国際的な理解は得られない。東シナ海ガス田開発の問題では、経済的な合理性を重視して共同開発すべきだ。

 脇氏 中国は現行5カ年計画で単位あたりGDPに対するエネルギー消費量の20%削減を目指している。

 周氏 昨年は目標を達成できなかった。エネルギー消費の多い産業で手法を変えられなかったのが理由だ。効果はじわじわと出てくる。

 脇氏 「世界全体の排出量を2050年までに半減」という安倍晋三首相が掲げた提案への評価は。

 周氏 京都議定書の削減目標も、日本にとって達成は難しい。経済成長と温暖化ガス排出削減を同時に目指すこと自体に矛盾がある。日本がもし安倍首相の発言通り半減するならば、中国もこのレベルを超えないように努力したい。

十市勉氏
 十市氏 アジアで相当のことをやらないと難しい。

 脇氏 12年に期限が切れる「京都議定書」後の対応は。

 周氏 先進国と途上国の1人あたりの排出量は大きく違い、同じスタートラインに立っているとはいえない。中国を含む途上国全体で努力していきたい。大国として責任ある態度で臨む。

 スヒヤル氏 インドネシアは地熱発電の能力が世界で1番大きい。できるだけ地熱発電の発電量を増やしていきたい。CO2を削減できる技術が日本にあるならば一緒にぜひ使っていきたい。

[5月26日/日本経済新聞]

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