「アジアの未来」
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25日の概要
討論
▼安保や資源 枠組み模索


◆北朝鮮問題◆

 田中均氏(モデレーター) まず北朝鮮問題について考えたい。

ジョセフ・ナイ氏
 ジョセフ・ナイ氏 長期的戦略が必要だ。国連制裁の脅威をちらつかせるのも重要だが、周辺国で北朝鮮の崩壊と混乱を望んでいる国はない。長期戦略では“アメとムチ”が必要になる。(金正日総書記の)体制の承認や経済的な見返りを与えることにより、核放棄の約束を取り付けることは可能だろう。

 だが恐らく10年以内に北朝鮮の政権はなくなる。孤立させず国際社会に取り込む戦略をとればなお早いかもしれない。日本が北朝鮮に拉致問題の責任を問う気持ちは分かるが、北朝鮮の核がもたらす問題の大きさに目を配らなければならない。

王毅氏
 王毅氏 朝鮮半島に核があってはならないが、平和的解決には時間が必要だ。

 北朝鮮の核問題を巡る6カ国協議は「(破綻した)1994年の米朝枠組み合意の二の舞いになるのではないか」との指摘もあるが、そうではない。94年当時の目的は「核凍結」だったが、今回は「非核化実現」だ。94年は米朝の二国間だったが、今回は6カ国の共同責任だ。

 マカオの銀行で凍結された北朝鮮資金の扱いは技術的な問題で、近く(凍結解除に向けた)第一段階に入れると思う。だが最終解決には米朝関係の正常化と拉致問題の決着、不幸な(日朝間の)歴史問題を清算することが必要だ。

韓昇洙氏
 韓昇洙氏 どの国も北朝鮮の体制崩壊を望んでいない。いかに早く国際社会に取り込むかだが、対外開放が現体制の不安定化につながるのが北朝鮮のジレンマだ。

 米国の態度は変遷を繰り返した。私が駐米大使だった94年にいったん核問題解決の糸口が見え、クリントン大統領の訪朝も浮上した。だが2001年に発足したブッシュ政権は前政権の政策を引き継がなかった。その後、ライス国務長官のもとで政策は柔軟になり(北朝鮮の核施設停止などを盛り込んだ)今年2月の6カ国協議合意を形成するに至った。

 ブッシュ政権の任期は残り1年半ほどと短い。北朝鮮は米国の弱みを利用して有利な条件を引き出す交渉術を駆使するだろう。北朝鮮から2月合意以上のものを得るのは難しい。

 田中氏 米国の北朝鮮政策の変化は失敗すれば大きな反動が来る。今回の6カ国協議の合意が最後の試みだという気持ちで取り組むべきだ。米国も韓国も北朝鮮政策に一貫性がなかった。問題解決へのキーワードは2つ。「連携」と「包括的な取り組み」だ。

◆地域安全保障への取り組み◆

田中均氏
 田中氏 これからの時代に必要なのは安全保障の(条約や同盟に基づかない)ソフトな体制だ。テロ対策や大量破壊兵器の拡散防止などに行動を取れる枠組みが必要だ。一例が6カ国協議で、極めて重要な信頼醸成の枠組みになる。東アジアの協力の枠組みづくりには米国の協力が必要で、東アジア首脳会議(16カ国)に米国を加えた形が考えられる。

 韓氏 北東アジア地域の多国間安全保障の枠組みを考える時期にきている。6カ国協議がその母体になるだろうと思う。欧州安保協力機構(OSCE)がよい手本になるだろう。

 北東アジアが直面する様々な問題に対処するため地域内協力は不可避だ。6カ国協議は北東アジアの最も重要な問題を扱い、経験と情報がある。6カ国協議が北朝鮮問題の平和的解決に成功したなら、この枠組みを安保に発展させられる。

 王氏 6カ国協議は朝鮮半島の平和体制を構築し、北東アジアの地域安全保障体制を探るうえで大きな役割を果たしている。アジアの特徴は多様性だ。お互いの違いを認めつつ経済の相互依存を深め、政治的な信頼関係を構築する必要がある。二国間関係と多国間の枠組みが並存していくことになるだろう。

 ナイ氏 2020年の東アジアの安定は日本と中国、米国の間に良好な三角形を築けるどうかにかかっている。(安保枠組みをつくるうえでの)基盤は日米中のトライアングルだ。

◆日中関係◆

 王氏 日中両国首脳の相互訪問には2つの意味がある。悪循環から好循環への日中関係の切り替え、戦略的互恵関係に基づく両国関係の新たな位置づけだ。

 ただし、安定軌道に乗せるためには(1)平和発展の道の堅持(2)お互いを脅威と見なさず体制の違いを超えてパートナーとなること(3)全方位交流の推進(4)共通利益の拡大(5)歴史問題や台湾問題への善処――の5点が必要だ。努力すれば、両国関係を国際社会が希望するような軌道に乗せていけるだろう。

[5月26日/日本経済新聞]

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