「アジアの未来」
HOME

フロントページ
速報
24日の概要
25日の概要
会議日程
講師略歴
アジアの未来
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
日経アジア賞
English
24日の概要
アブドラ・バダウィ
マレーシア 首相

 ASEANの経験生かせ

 昨年の「アジアの未来」で、東アジア共同体構想が直面する困難の一つに挙げた日中・日韓関係がこの1年でかなり改善したのはうれしいことだ。経済についても明るい展望が描ける。米経済の不透明感にもかかわらずアジア景気は良好で、投資活動も活発だ。

 今回、3つの質問を事前にいただいたのでそれに答えていきたい。最初は「アジア共同体を構成する理想の枠組みは何か」だ。東南アジア諸国連合(ASEAN)プラス日中韓か。ニュージーランド、豪州、インドを加えた16カ国の東アジア首脳会議なのか。21カ国・地域が参加するアジア太平洋経済協力会議(APEC)か――。

 このうち、東アジア共同体を構築しようとしているのはASEANプラス日中韓だけだ。ほかの二つは地域的な広がりはあるが議題の範囲が狭い。共同体とは経済連携にとどまらず、社会や政治を含む人間活動すべてを含むものだ。真に機能する共同体には共通のアイデンティティー、戦略、価値観が必要だ。共同体は何十年もかけてれんがを積み上げる建築物のようなもの。結果よりもつくる過程が重要だ。

 その意味で、ASEANの経験は模倣に値する。40年近い協力を重ね、ASEANは経済面、安全保障面、社会面での融合共同体になろうとしている。その精神は今年末発表のASEAN憲章でも登場するだろう。

 真の共同体をつくるうえで参加国にとって重要な7つの要件を強調したい。(1)共通の属性(2)多様性の容認(3)平等・尊敬・合意(4)相互信頼の醸成(5)欲求の共有(6)形式よりも機能重視(7)共同体の外の国との協力――だ。

 共同体構築のうえで重要なのはASEANプラス日中韓だが、だからといって東アジア首脳会議やAPECの価値が下がるわけではない。目的が違うだけなのだ。

 2つ目の質問はグローバル化する世界とマレーシアの位置づけだ。マレーシアは多様な文化・民族を抱えるイスラム国家だ。イスラム国家の良き手本となることを望む。イスラムの原則である平和、中庸、法の支配、弱者救済などは国際社会の考え方と調和する。

 3つ目がマレーシアと日本の関係だ。過去50年間の二国関係は極めて良好だった。我が国の「ルックイースト」政策もあって1980年代から90年代初頭まで日本はマレーシアへの最大の投資国だった。両国の経済連携協定(EPA)締結は新たな一里塚になろう。

 07年は様々な節目の年になる。マレーシアの独立50年であり、日本との国交樹立から50年。さらに東アジア協力10周年でもある。1997年にアジアが金融危機に陥った際、日本が助けてくれたことを我々は忘れない。

[5月25日/日本経済新聞]

一覧へ戻る >>

Copyright 2007 Nihon Keizai Shimbun, Inc., all rights reserved.