「アジアの未来」
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討論
▼東アジアの経済統合ーその展望と課題


渡辺修氏
 渡辺修氏 東アジアの経済統合は急速に進んできた。共同体の中心的存在である東南アジア諸国連合(ASEAN)の競争力をどう向上させるか、急速に台頭する中国をどう取り込むか、安全保障で重要な役割を担う米国との関係をどうするか――の三つの課題を中心に議論したい。

 趙晋平氏 中国の新しい経済協力戦略は2001年、ASEANに自由貿易協定(FTA)交渉を提案した時から始まった。ASEANとは実質的な成果が出ている。中国が締結済みまたは交渉中のFTAは十件、28カ国に達した。交渉段階、研究段階にあるFTAまですべて実現できれば、対外貿易の50%近く、直接投資の60%を占めることになる。制度的な経済協力の枠組みをつくることは、中国の将来の貿易や投資にとって非常に重要だ。

韓昇洙氏
 韓昇洙氏 東アジアの経済統合がなし遂げられるかについて私はやや悲観的にみている。ASEANが経済統合で本当に中核的な役割を果たせるかどうかを改めて考える時期に来ていると思う。東アジアの経済統合には、現在とは別の枠組みを設けるべきだ。影響力のある韓国、中国、日本がより積極的な役割を果たしたほうがよい。

 リチャード・ボールドウィン氏 東アジアの地域主義は世界的に見てもユニークだが、ひ弱でもある。今緊急に必要なのはビジョンではなく、うまく管理するマネジメントだ。どこかの国がリーダーシップを握るというより、ASEANと日中韓でしっかり管理する必要がある。アジアではASEANを中心にFTA網が築かれているが、この地域の最も大きな貿易の流れをカバーする日中韓のFTAがないのは奇妙だ。

 渡辺氏 ASEANプラス3(日中韓)の枠組みは着実に進んでいるが、日中韓の協力が進まない。04年の日中韓首脳会議で投資ルールの透明化や投資環境の整備、維持、早期の交渉入りを掲げたものの、その後は宙に浮いている。3カ国が協力した場合の効果は計り知れない。

 韓氏 中国と日本が和解しない限り、東アジアには大きなビジョンは描けない。3カ国には政治的葛藤を解決しようとする理想主義的な政治家が必要だ。3カ国が団結して構想を進めるなら目標を容易に達成できる。時間はかかるだろうが、それは待つに値する歴史的な作業だ。

趙晋平氏
 趙氏 東アジアの地域協力を促進するうえで、3カ国の協力が重要だ。いずれも地域の大国で、経済関係も深い。東アジアの協力は「東アジア共同体」であろうとFTAであろうと3カ国の参加がなければ実現不可能だ。中日間のFTAは日中韓の中で考えていきたい。それが二国間関係の改善にも役立つ。中国は3カ国のFTAに一貫して積極的な姿勢だ。

 ボールドウィン氏 この地域は日中韓という経済大国の貿易の流れが大きい。日本など東アジアの企業が米欧市場で競争力を持つには域内貿易が円滑に機能する必要がある。

 渡辺氏 東アジアの発展はダイナミックで、今後の展開を予測するのは難しい。アジア版経済協力開発機構(OECD)のような組織を共同で設立して課題を出し合い、検討結果を各国政府に提言する仕組みをつくってはどうか。共同体構築ではASEANプラス3が中心になるはずだが、運営の方法や、そこに米国が入りたいと言ったときにどうするのかなどを議論する必要もある。

リチャード・ボールドウィン氏
 ボールドウィン氏 アジア版OECDという渡辺氏のアイデアはすばらしい。この地域では理解がまだ不十分。ASEANに照準を合わせた機関をつくるのはいいことだ。ASEANプラス3で、交渉が行き詰まったときや第三国に差別的な自由化が進みそうなときに、解決を図る組織を設けておくのがよい。

 韓氏 渡辺氏のアイデアはいいが、それなら日中韓3カ国に共通な利益を追求する超国家的な研究所を作ってはどうか。韓国は今月末の統一地方選後に米国とのFTA交渉に入る。どれだけ深い交渉になるかわからないが、米国が関心を持っているのはよいことだ。

 趙氏 地域間の協力促進のためには対話の効果的なメカニズムをつくる必要がある。ただ東アジアについていえば、既存の枠組みを効果的に活用することが重要だ。ASEANプラス3も、中日韓3カ国も、すでに政府レベルでの研究・協議を始めている。

[5月27日/日本経済新聞]

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