「アジアの未来」
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25日の概要
討論
▼インド:躍進する新興経済


「共同体で経済発展」

榊原英資氏
 榊原英資氏 インド経済の現状はどうか。

 イーシャー・アルワリア氏 インドでは1950―80年の実質経済成長率が年3.5%増、人口は年2%増だった。80年から2005年までの25年間は成長率が5.6%に加速する一方、人口の増加率は1.7%に下がった。所得は年4%増え、全人口に対し貧困層が占める比率は50%前後から26%に低下した。

 インドは世界で最も成長率が高い国の一つだ。経済成長は少しずつ政策を市場志向に変え、世界経済と統合することで実現できた。規制を緩和し、民間部門の生産性上昇を可能にした。経済が開放され、外国の直接投資が活発になった。政権がかわっても改革路線は踏襲された。

アジーム・プレムジ氏
 アジーム・プレムジ氏 アジアは包括的な発展で生活まで激変し、IT(情報技術)やインターネットの普及によって消費の姿も変わった。商品、サービスが多国間で入り乱れ、世界はまるでモザイク模様だ。このモザイク世界でアジア、そしてインドは大きな役割を果たせると思う。

 我が国は25歳未満の人口が50%以上の非常に若い国。若者の能力開発や教育にも力を入れてきた。この世代は消費を重視し、米国のベビーブーマー世代のようにインド経済を今後何10年も支えられる。技術者の人的資源は厚く、毎年40万人が仕事を求めている。労働力が将来減少する見通しの米国や日本をインドは助けることができるだろう。

 ある調査では10年までにインドの小売業の市場規模は4000億ドルに伸びるという。膨大な人口に基本的な衛生福祉を整備し農村部にいかに広げるかなどの問題はあるが、世界は最も有望な貿易・投資の対象国だと認識し始めた。4000万世帯の中間所得層がある巨大市場なのだ。

 インドはソフトウエア分野でグローバル分業の開拓者といえる。バイオ、医薬、臨床研究でも世界分業に対応できる。

 榊原氏 インドへの投資機会が広がっている。

アルワリア氏
 アルワリア氏 1番大きな投資機会は、インフラの開発にある。官民の連携をインフラ開発の手段とし、民間の資本を積極的に取り入れている。空港開発では民間の参入をすでに認めている。最近ではデリーとムンバイの空港が近代化されたが、民間が管理し、政府は26%を出資した。港湾は外国の直接投資を100%認めている。

 鉄道では今年、コンテナ輸送が民間に開放された。貨物専用の鉄道輸送網も企業が利用できる。道路では、前政権が高速道路開発に着手し、外国からの直接投資を認めた。移動通信にも民間部門が参加できるようになった。03年の法改正で、電力部門も民間に開放、競争原理を導入して改革を加速している。

 プレムジ氏 インフラ整備について、電気通信分野は進展が早く料金も安くなり、道路整備にも同じ効果が出ている。だが、電力や水資源の分野ではまだ効果が少ない。

 榊原氏 インフラ整備は州政府の責任ということだが、州と中央政府の政策を調整する必要がある。

 アルワリア氏 首相がインフラ整備に関して政府計画委員会を設置した。各省のトップらがメンバーとなって毎月一回、会合を開き、競争入札や事業の進ちょく状況を監視している。州の事業について、州政府と中央省庁の連絡調整が行われるよう保証している。

 榊原氏 日本とインドの経済関係の見通しは。

 アルワリア氏 日本とインドが経済関係を一段と強化すると期待している。インドでは「スズキ」のような日本企業の名前は象徴的な意味を持っている。特にインドの製造部門への投資を増やすべきだろう。

 プレムジ氏 日本の産業界のリーダーには、実際にインドに来ることを勧めたい。韓国企業に出遅れることなく日本企業も積極的に投資してほしい。

[5月26日/日本経済新聞]

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