「アジアの未来」
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25日の概要
討論
▼東アジア情勢を展望する


「摩擦乗り越え連携」

田中均氏
 田中均氏 東アジアは非常に大きな将来展望を持つ。同時に非常に大きな問題も横たわっている。朝鮮半島問題、日中関係、東アジア共同体の3点を議論したい。

トーマス・ハバード氏 この地域は戦後50年間、世界経済で重要な役割を果たしてきた。この間、米国は地域の安定と繁栄に貢献してきたと自負しており、米国の運命は東アジアと一体化した。

 一方、中国の台頭があり、アジア諸国はこれがチャンスなのか脅威なのか議論が尽きない。米国は、中国が国際社会のステークホルダー(利害関係者)として枠組みにとどまる間は台頭はチャンスと考えている。軍事費に関する中国の透明性が増せば、その考えに確信が持てるだろう。

 東アジアの繁栄は日本と中国という2巨人の関係がどうなるかにかかっている。日中の歴史問題や領土問題での仲たがいは、地域に緊張をもたらすと米政府は懸念している。台湾海峡や朝鮮半島では冷戦構造も残っている。アジア太平洋経済協力会議(APEC)や東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム、6カ国協議などを通じて地域統合を促す必要がある。

王毅氏
 王毅氏 東アジア地域は相互に貿易・投資が密に交流し、新しい産業連関が形成されつつある。それを踏まえ、東アジア共同体という目標があり、自由貿易協定(FTA)研究も急ピッチで進み、アジア通貨単位の研究も始まった。ただ懸案事項もあり、例えば朝鮮半島問題など第2次世界大戦の負の遺産が清算されていない。色々なタイプの領土紛争、海洋権益の摩擦も存在する。

 中国の立場は、すべての近隣国と友好協力関係を維持したいということだ。すべての問題、摩擦をあくまでも対話や協議を通じて解決していく。朝鮮半島の核問題については6カ国協議で我々なりの役割を果たしており、海洋の係争もあくまで対話による解決を見いだしたい。互いに協力し、対外的に開放された「新しいアジア主義」を一緒に育てる必要がある。

ドミンゴ・シアゾン氏
 ドミンゴ・シアゾン氏 ASEANなど近隣諸国が特に懸念するのは、日中間で首脳会談が開かれていない点だ。  経済的統合の前進につれ、東アジアの安全保障の公的な枠組みをつくる必要が出てきた。(1)戦略的に資源開発や石油備蓄などを進めるエネルギー共同体(2)ロシアや北朝鮮、台湾も加わり核の不拡散を検証し核燃料を管理する原子力エネルギー機関(3)金融危機などに備え各国の外貨準備をプールする基金――などだ。

 田中氏 王大使は「新しいアジア主義」と言われたが、米国の協力も必要だ。東アジア共同体の実現には「より良きアジアをつくる」という各国の政治的コミットメントがいる。

 例えば日中関係を靖国神社参拝問題だけで論ずるべきではない。今必要なのは将来の日中関係についての大きな合意で、私はそれを「グランドバーゲン」と呼んでいる。歴史の相対化が必要で、歴史の直視が必要なのは中国、韓国も同じだ。

 そして北朝鮮問題。6カ国協議が停滞した責任は北朝鮮にあるが、強制力の行使はコスト高で望ましい選択肢ではない。我々には交渉による包括的な解決が必要だ。残念なことに今の米国は北朝鮮と真剣な交渉をするという雰囲気にない。

トーマス・ハバード氏
 ハバード氏 確かに、米国は北朝鮮問題にもっと真剣に取り組む必要がある。米国がどの程度、2国間協議にコミットできるか。米国には北朝鮮が核兵器を本当に放棄するか懐疑論がある。6カ国協議の成功には全参加国の努力が不可欠だが、並行して米朝協議も進めなければならない。

 王氏 具体的な歴史の検証は、国が違うので必ずしも全部一致しないのも現実だ。ただし、過去を終わらせるには中日間で基本的な認識の一致が必要だ。中日国交正常化の原点に戻り、どうすれば真に日本の国益になるか、どうすれば真に和解ができるかを賢明に判断してほしい。

 朝鮮半島問題で私の目標は2つ。1つは朝鮮半島に核があってはならない。2つ目は朝鮮半島の平和を守る必要がある。そのためには対話を続け、6カ国間の信頼関係、特に米朝間で約束と行動の相互信頼を築くことだ。私は6カ国協議が復活できると思っている。

 シアゾン氏 フィリピンは第2次世界大戦で日本軍とともに多くの命を失ったが、今年外交関係樹立50周年を祝う。フィリピンは後ろよりも前を見ている。日中・日韓関係でもこうした姿勢を取るのは可能だ。この問題が解決されなければ、東アジア共同体につながらない。 

[5月26日/日本経済新聞]

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