「アジアの未来」
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フォーカスセッション
「安全保障セッション:東アジア情勢を読む」


米前国務副長官のアーミテージ氏
 大国、互いに受け入れを

 アジアの長期的な平和は経済的成功と民主化によってもたらされた。現在は目の前に不協和音も出現している。北東アジアではナショナリズムが強まっている。こうした動きは夏ごろまで続くだろう。台湾海峡と朝鮮半島の緊張、領土を巡る対立もある。

 米国とすれば、こうした問題に対して十分に目を向けてこなかったという思いがある。ただ、米国は世界にコミットしている。それゆえに東南アジアにも影響力を持つ。

 21世紀は中国の台頭が進んだ。19世紀のドイツ、20世紀の米国の台頭と同様に重要だ。中国の積極的な外交は世界に政治的、経済的な地殻変動をもたらす。

 日本の表舞台への復帰も進んだ。目的意識を持って国際社会で新しい役割を担おうとするものだ。米国は日本の国連安全保障理事会常任理事国入りを支持する。

 インドのアジア化も進んだ。インドは人口からみても経済の規模から考えても、アジアの重要なプレーヤーとなった。

 台頭する大国が既存の国際体制の中で受け入れられる過程では、政治的な緊張の高まりも予想される。軍事的な衝突が発生する可能性もある。

 アジアで2つの大国が同時に出現したことは過去に例がない。現在は(日中両国が)お互いを受け入れなければならない状況となっている。歴史から学び、それぞれの適切な位置を学んでほしい。

 中国の台頭は米国と同盟国の利益にとってプラスかマイナスか、まだわからない。米国とはどういった関係になるのか。答えは見つからないが、戦略的対応が必要なるだろう。パートナーシップを結ぶ関係か、それとも競合的な関係か。もちろん前者を希望している。

 米国は北朝鮮が6カ国協議に復帰すれば話し合いに応じる。ただ、国際社会が受け身の姿勢であるというわけではない。麻薬や偽札の問題も残されている。北朝鮮が交渉のテーブルに戻らなければ、状況は悪化する。拉致についても、きちんとした説明がなければ国際社会は納得しない。

駐日中国大使の王毅氏
 開かれた地域協力に

 新世紀に入り、東アジアで新たな変化が生まれている。1つは地域協力の進展で、東南アジア諸国連合(ASEAN)プラス3(日中韓)の枠組みが進んだ。2つ目は地域経済が成長し相互依存関係が広がっている。対話を通じた紛争解決手法も強化された。

 中国が外交で最も重視するのは協力だ。東アジア共同体構想はASEANの主導的地位を尊重する。東アジアの地域協力は開放的でなければならず、域外国は排除しない。米国はアジアに対し伝統的、現実的利益が存在し、域内諸国も尊重している。米国も域内国の利益を尊重してほしい。

 中日両国はともに重要な隣国。中国政府の対日政策は何も変わっていない。中国と日本との間には高度の相互依存関係が存在する。中日関係の前途はひとつだけ。平和共存だ。

 中日関係は2000年にわたる。中国でも日本でもこれほど長い(他国との)交流はないだろう。中日関係を語るには歴史を無視できない。

 中国脅威論があるが互いに脅威とみるのではなく、パートナーとみるべきだ。北朝鮮が6カ国協議に戻るかは彼ら自身が決める。6カ国協議には「強い生命力」がある。将来の発展が期待できる。北朝鮮制裁論はあるが、問題解決には対話しかない。昨年6月以降、協議は途絶えているが、最近米朝とも積極的にメッセージを発しており歓迎すべき動きだ。

 朝鮮半島の非核化を実現すれば、次に半島の永久平和システムを構築する。南北の停戦協定を平和条約に変える。その過程で米朝や日朝の国交正常化といった戦後処理を解決することになる。次の段階で協議を土台に北東アジア地域の安全のシステムを作る。

 台湾問題は中国の内政問題。日米とも現在の立場を堅持してほしい。台湾が独立すると、大陸の利益を損なうだけでなく、地域の安全を脅かす。

前駐米大使の柳井俊二氏
 「共同体」へ将来像必要

 東アジアの安全保障環境は欧州とは全く異なる。北東アジアでは、朝鮮半島の分断、中台の緊張も続いている。テロなど非国家主体からの脅威、核兵器の拡散にも直面している。米国のプレゼンスがこれからも重要だ。

 アジアは東アジア、インドも含めて非常に発展している。東アジアの域内貿易依存度は2003年時点で53.3%と、欧州連合(EU)の60.3%に迫っている。

 通貨危機やインド洋大津波などがあり、地域の連帯感も強まった。

 東アジア共同体をつくるための条件は、日中、日韓の和解、歴史的遺産の清算で、独仏の和解プロセスが参考になる。共同体づくりは将来に向けてのビジョンも必要で、経済分野から始めるのがいいと思う。

インドネシア戦略国際問
題研究所共同設立者の
ワナンディ氏
 中台問題、地域に影響

 東アジア共同体の構築は地域経済の統合など経済を軸に議論が進んでいる。だが重症急性呼吸器症候群(SARS=サーズ)や鳥インフルエンザ対策、人と人との知的交流でも団結を強めた。

 東アジアとアジア太平洋地域では米国の存在が重要だ。今まで60年間、米国がこの地域での平和、安定、発展の調停者となり、中国も含め、地域各国はおおむね受け入れてきた。東アジア共同体作りで米国などを排除する気はない。

 東アジア首脳会議(サミット)にオーストラリアやニュージーランドなどを含めようとしている動きは反米の会議でないことの証しでもある。

 北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議は重要だ。東南アジアも二国間やASEAN地域フォーラム(ARF)を通じて6カ国協議の努力を支持してきた。ASEANはミャンマー問題を解決しないと国際社会からの信頼性を得られない。

 「一つの中国」原則は我々も順守している。中台問題は中国の国内問題ではあるが、地域に影響を与え、将来の不安定のタネになりかねない。

[5月27日/日本経済新聞]

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