「アジアの未来」
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フォーカスセッション
「BRICs時代のアジア新産業ダイナミズム」


サティヤム・コンピュータ・サービス会長のラジュ氏
 司会 BRICsの現状と可能性は。

 ラジュ氏 インドは人的資源を活用してサービスを提供し、外貨を稼いでいる。そして先進国から自動車や携帯電話など多くの財・サービスを購入する。インドの人口約11億人のうち、3億人は教育があり海外の事情も知っている中流階級で、消費など経済の原動力となっている。今後は残りの8億人をどのようにして取り込むかが課題になるだろう。

 坂根氏 BRICsは日本が戦後たどった道をものすごく速いスピードで追いかけていると感じる。コマツは(自動車産業などと異なり)資本自由化のおかげで競争にさらされ早く強くなれたと思っている。

 今のBRICsを見ると世界で通用するブランド数が非常に少ない。企業の合併・買収(M&A)を通じて強いブランドを獲得するなどして解消されるだろう。

 司会 BRICsはどう変わっていくか。

 李氏 各国は互いを潜在的なパートナーとみており、我々もこの考えを共有する。世界経済の構造を変えるような影響力を持つようになるだろう。中国は国際的な競争力を持つ世界クラスの事業グループを育成し、独自のブランドを創造しなければならない。中国は世界経済の発展に貢献する大国として確実に立ち上がるだろう。

TSMC会長のチャン氏
 チャン氏 半導体産業ではBRICsにチャンスが出てくると思う。50年前に米国が生み出した半導体技術では、日本は25年で完全に追い付いた。韓国や台湾は12―15年で足並みをそろえた。中国やインドは近い将来、はるかに短い時間で追い付くだろう。

 集積回路を設計するが製造施設を持たないファブレス企業は世界中に1000あるが、このうち400が中国に存在する。中国の400社の昨年の総売上高はせいぜい5億ドル。今後5年以内に一部が大きく育ち、総売上高は50億ドルに成長するだろう。TSMCの世界市場が拡大するということだ。中国に数年遅れてインドも巨大市場になるだろう。

 司会 持続的成長は可能か。

 李氏 中国が発展を維持するには3つの条件がある。1つは経済改革。2つ目は知的財産の保護に向けた国際的に通用する法整備。3つ目は自然環境の保護だ。エネルギーの枯渇問題もある。

 司会 日本の役割は。

コマツ社長の坂根正弘氏
 坂根氏 今や日本はアジア抜きで経済規模を維持・発展させることはできない。そのためにはお互いが勝者になるウィン―ウィンの関係が必要だ。日本は省エネや環境といった技術分野で世界をリードしており、特に中国に対して貢献していく必要がある。

 ラジュ氏 日本は経済大国であり世界のリーダーだ。発展途上国に対して指導力や創造性を一層発揮してほしい。今後は言語(教育)を含めた投資も重要になろう。各国で日本語を話す人が増えるような投資を考えてはどうか。日本人も他国の言語を積極的に勉強してスキルを身に付けていく必要がある。これを活用し、国際会議などの場を通じて交流を促進すべきだ。

 司会 BRICs市場における各企業の取り組みはどうか。

TCL集団董事長の李東生氏
 李氏 TCLのグローバル化戦略は中国市場での主導的地位を国際市場でも維持することだ。昨年まで14の新興市場での販売規模はカラーテレビ500万台にのぼる。インドやロシアでのビジネスも成功裏に拡大し、まもなくブラジルにも参入する。インドは製造業などの産業基盤では中国に劣るが、ソフトの分野では迅速さを発揮できる。ロシアは資源が豊富で人材の質も高く、重工業、軍事関連産業でも優位にある。

 坂根氏 コマツは米国で1970年ごろ販売を開始し85年に現地生産を始めたが、企業法務などの部門を持っておらず、米国に進出した企業として必要な条件がそろっていなかった。これをM&Aで解決した。10年くらい前に、小型のブルドーザーをブラジルから全世界に輸出することを決意した。「ここだけでつくろう」と決め、全世界を相手にしたことが、ブラジルで力がついた要因だ。

 民間企業にとっては良い人材をどうやって集め、育成して、魅力ある会社にするかが重要だ。そのためには生産や販売だけでなくR&D(研究・開発)や企業法務を備えたフルファンクションが必要だ。コマツは中国に2つの工場を持つが、販売と生産だけでは良い人材が集まらないので、R&Dも早く持っていくべきだと考えている。

 司会 人材をどう調達するのか。

 ラジュ氏 異文化との仕事には試練もあるが、国ごとに異なるスキルを持った人材がいる。顧客との接点には顧客の文化やニーズをくみ取れる人を配置すべきだ。

 チャン氏 ハイテク産業が必要とする基礎のうえに革新性や指導性を持つ人材が必要であり、世界に通用する優れた教育機関は必須だ。この面で若者がどれだけ仕事や留学で米国に行き、どれだけの人材が帰ってくるかが重要な尺度になる。台湾では70年代に送った多くの留学生らが帰ってこなかった。しかし台湾の経済発展と共に90年代には大部分が台湾に戻ってくるようになった。逆に米国に行きたい若者が少なくなり将来の人材不足に懸念が出てきた。

 成長が著しい中国でも留学生が相次ぎ米国などから帰国している。インドは米国で勉強する若者がなかなか帰ってこないと言うが、これも数年の時差で続いているのだろう。一つの経済発展の状況といえる。

[5月27日/日本経済新聞]

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