26日の概要
鄭 東 泳氏
韓国 統一相
講演する韓国の鄭統一相=26日、都内のホテル
「歴史的選択」求められる
北東アジアは平和と危機の岐路に立ち、域内諸国は「歴史的な選択」を求められている。今年は植民地、解放、戦争、そして分断と続いた過去100年の民族史を振り返る年であり、今後100年の発展戦略を構想すべき模索の年。膠着(こうちゃく)したトンネルから抜け出せない北朝鮮の核問題を解決し、朝鮮半島に平和を構築すべき「転換の年」でもある。
近い将来、北東アジアに政治・安全保障分野の地域共同体を形成するのは難しいように思える。しかし経済的な相互依存は急速に強まっている。今こそ東アジア市民の夢に向けた一歩を踏み出すべき時期だ。
北東アジアの未来にとって日本の選択は重要だ。戦後の日本は民主主義、平和憲法、非核三原則を踏まえ経済大国に発展し、北東アジアの安定と経済成長の基盤になった。しかし日本の一部が見せる戦後の平和路線を否定するかのような歴史認識が、未来志向の韓日関係の発展を阻害しているのはとても残念だ。
隣国はA級戦犯を合祀(ごうし)した靖国神社を参拝する日本の指導者を見て、不幸な過去の歴史が繰り返されるのではないかと不安を抱く。小泉純一郎首相が検討を約束した代替追悼施設が実現していないのは残念だ。日本は隣国の信頼を得て共存の意思を見せるべきだ。
盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領は韓日中を共同の繁栄のための宿命的な同伴者と位置付け、協力と統合の秩序作りを訴えた。韓国は北東アジア平和の均衡者(バランサー)と協力の促進者の役割を果たすと宣言した。均衡者とは軍事力による「力の外交」でなく、地域の葛藤の調整や平和促進を追求するものだ。
独自に韓日中3カ国の首脳会談を開催したことはない。韓国は均衡者として日中の間をとりもち会談を仲介できる。
北朝鮮の核問題の平和的解決も地域の重要な課題だ。先週、開城(北朝鮮)で10カ月ぶりに南北対話が再開され、我々は朝鮮半島非核化の原則を守るよう北朝鮮に強く要求した。核問題の平和的解決に向けて、韓国は積極的で主導的な役割を果たす。6カ国協議が再開されれば、我々は核問題を実質的に解決できる重要な提案を出すつもりだ。単に協議のための協議でなく「ギブ・アンド・テーク式の真剣な交渉」を通じて解決への実質的な契機をつくるべきだ。
日本外交の画期的成果として評価される「日朝平壌宣言」が実現しないのは残念だ。日朝正常化は朝鮮半島の平和にも重要な影響を及ぼすだろう。北朝鮮の核問題を平和的に解決し、韓日中が未来志向で価値を共有できれば、北東アジアは平和と繁栄の道に進める。民族主義や覇権争いでなく、相互学習と相互尊重を通じて補完的な協力構造へと発展すべきだ。
[5月27日/日本経済新聞]
一覧へ戻る >>
Copyright 2005 Nihon Keizai Shimbun, Inc., all rights reserved.