「アジアの未来」
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25日の概要
ユスフ・アンワル氏
インドネシア 財務相
講演するインドネシアのユスフ・アンワル財務相=25日午前、都内のホテル

 主権尊重の新モデルを

 経済統合はアジアの未来にとって極めて重要だ。アジアは人、モノ、投資が循環する共同体に向かって、また競争力の高い生産拠点に向かって前進している。近い将来、国境がなく継ぎ目のない移動が可能になるだろう。ASEANプラス日中韓は、経済統合に向けた地域的な枠組みとして成り立つと考えている。

 中国が東アジアのすべての国にとって主要な貿易相手国となるのに伴い、今後ますます域内貿易における割合が高まり、各国間の相互依存が強まるだろう。部品などを中心とした垂直の産業連関に代わって、水平の投資・貿易のネットワークが構築されつつあり、ここでも中国が中心的な役割を果たしている。

 順調に見える地域協力の進展に関し、自己満足に陥ってはならない。アジアの経済統合は既存のモデルを踏襲するとは限らないからだ。アジアではより実践的で、各国の主権を尊重した統合となるだろう。

 緊密な経済統合にはいくつかのステップが必要となる。通貨の安定性を保つためには、域内における多国間の資金供給取り決めなどが有益だ。これにより金融危機などの際に集団で通貨政策を発動できるようになり、米ドルに対する域内での為替変動を抑えることが可能になる。

 人によっては共通の通貨バスケットを提唱したり、単一通貨創設が最終目標と考えたりする。単一市場は単一通貨を必要とするという意見もあるが、単一通貨の創設はまだ先の話だ。まずは柔軟性の高い、実践的な調整機能の構築が必要であり、銀行など金融機関の監督強化も重要だ。

 経済統合のペースや順序は決まっていない。しかし現在の産業の動きに後れを取ってはならない。いくつかのシナリオが考えられるが、2国間・多国間のFTAを域内で張り巡らすことにより、アジアはサービスや人的資源の移動を含めた1つの大きな貿易圏となることができる。ASEANプラス日中韓とインドの関係がより緊密になることで、世界人口の約半分をカバーできる。

 アジアの経済統合は進行中であり、そのプロセスは構成国の利益となる「単一生産地域、単一市場」の育成につながる。新しい経済共同体への取り組みは、アジアを経済的にバランスのとれた地域へと導くだろう。

[5月26日/日本経済新聞]

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