「アジアの未来」
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9日の概要

マハティール・ビン・モハマド氏
首相(マレーシア)
 創意工夫の才期待・新世紀の世界繁栄握る

 マレーシアは通貨リンギの米ドルへの固定相場制を導入し、金融を理解していないと批判された。だが、懸念されたような事態は起きず、うまく機能している。なぜわが国が一般に正しいと考えられている制度ではなく固定相場制の導入に踏み切ったのだろうか。

 第2次世界大戦後、ブレトン・ウッズ体制が構築され、世界経済は固定相場制のもとで持続的な高成長を達成した。日本も変動制では経済の回復はできなかったであろう。アジアも日本の安価で高品質の商品を享受し、豊かになることはなかった。

 一方、変動相場制は固定相場とは違って真剣な研究や議論を経て生まれた制度ではない。マーケットは完全ではないし、需要と供給は人為的に操作できる。損失を抑えるコストがかかり経済活動は高くつく。

 グローバル化は偉大な思想であり、巨大な企業や銀行は進出先の国々で効率を高めるだろう。しかし巨大企業が国家経済を独占する結果になりはしないだろうか。

 グローバル化や巨大企業の進出はアジアの将来にもかかわる大きな問題だ。労働力が流動化し、経済的搾取が起きて移民とその国民との関係は微妙になりかねない。アジア諸国の関係に緊張が生まれる可能性もある。

 もし、システムに少しでも欠陥があるなら、それは拒否すべきである。国際金融体制についても、もしアジアの提案や改革が受け入れられないなら、すべてを差し戻すべきである。「東アジア経済会議(EAEC)」を創設し、自ら防衛する必要がある。

 アジアの未来はアジアの人々にかかっている。21世紀をアジアの世紀に、ひいては世界繁栄の世紀にすることができる。アジアには創意工夫の才や独自の経営技術があり、世界のモデルになりうる。そしてアジアは欧州連合(EU)や北米自由貿易協定(NAFTA)などと対等なパートナーになれるであろう。


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