「アジアの未来」
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8日の概要

辜 濂 松(ジェフリー・クー)氏
台湾工商協進会理事長(台湾)
 相互依存が深まる・域内協力、中国の関与カギ

 東アジアは、豊かな未来と危険な未来とが同居している。アジア経済危機後に、経済がマイナス成長に落ち込んだインドネシア、タイ、マレーシア、韓国は、1999年には成長率の上方修正を繰り返した。各国の輸出額は危機以前のレベルを上回るほどだ。東アジアの経済発展の奇跡は終わっていない。

 一方、東アジアの軍拡競争は続き、朝鮮半島、台湾海峡、南シナ海は武力紛争の潜在的な発火点になっている。東アジア地域の武器輸入は世界の3分の1を占めるといわれる。第二次世界大戦に起因する敵意と対立を克服できていない。

 それでも、域内貿易や域内投資は高まり、政治対立を緩和する経済の相互依存関係が深まっている。域内協力関係を築くうえで、中国の関与が注目される。

 中国は沿海部と内陸部の格差拡大、国有企業閉鎖に伴う失業の増大、政府の財政赤字、汚職・腐敗のまん延などを抱え、指導者は挑戦を受けている。問題の解決には民間部門の育成が必要であり、急速なシステムの変更も迫られている。

 中国は岐路に立つ。体制改革を先延ばしにし、経済の低迷を招くのか。東アジアへの地域協力よりも、軍事力の強化で大国化を目指すのか。中国の指導者が正しい選択をするように望みたい。

 21世紀には、欧州連邦と米州自由貿易圏ができるだろう。そして第三の柱として東アジアの地域協力圏が浮上するが、その運命は中国の将来と深く結び付いている。


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