賃貸向け住宅、市場拡大にらむ
― 新法施行で貸主需要重視 ―
〔日経産業新聞 2000年4月5日〕
賃貸住宅のあり方を大きく変える可能性がある定期借家権法が3月1日に施行された。借地借家法では住宅の貸主は賃貸借契約の期間が終了しても契約更新を拒むことが難しいが、新法では契約期間通りに退去を求めることができる。これを契機に遊休地での賃貸アパート運営に乗り出す地主が増えると見られる。新規需要を見込んで大手住宅メーカーが投入した賃貸向け住宅の新商品が出そろった。ただ、住まいのニーズの多様化を反映した各社とも独自の製品戦略が目を引く。
「仮住まいと位置付けられている賃貸住宅を分譲マンション並みの品質まで高めていく」。賃貸アパートでは高い市場シェアを持つ積水ハウスはこのコンセプトのもと、昨年10月に集合住宅商品の新シリーズ「グランバリエ」を発売した。
収納容量も豊富
重視したのは、家族でも住めるような広さ。同社の従来の賃貸アパートの一戸当たりの面積は40-50平方メートルが中心だったが、グランバリエは80平方メートルが中心。商品の種類によっては住戸専用の庭を設けられるなど居住空間にゆとりを持たせた。収納容量の多いウオークインクローゼットも採用、収納スペースも充実させた。
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| 積水ハウスの「グランバリエ GTテラス・スタイル(コート・プラン)」 |
集合住宅型の「レジデンス・スタイル」と住戸内部の階段で1、2階を専有できるメゾネット型の「テラス・スタイル」の2種類を用意。このほど3階建ての高級賃貸アパート「グランバリエG3」を追加した。価格は3.3平方メートルあたり42万円から。
定期借家権制度の導入で賃貸アパート市場は大きく変わるといわれている。既存の賃貸借の契約形態では、地主は賃貸住宅をいったん賃貸してしまうと、将来居室を自己使用しようとして借り主に立ち退いてもらおうとすると多額の立ち退き料を要求されるケースもある。法律で借り主の権利が保護されているためだ。
このため、地主が賃貸住宅を建築する場合でも、短期で入れ替わる単身者向けが大半で、長期間住むことが多い家族向けなどは避けていた。定期借家契約なら、貸主にはこうした不安を持たなくて済む。住宅メーカーは新規需要を狙い、家族向けや高級タイプなど工夫を凝らした賃貸住宅商品を相次いで投入している。
組み合わせ自由に
住宅に賃貸住戸を併設する提案型住宅システムを手掛けてきた大和ハウス工業は昨年12月に家族向けの広さの賃貸住戸を併設する「LRタイプ」を投入した。
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| 大和ハウス工業の「新・都市型賃貸併用住宅・LRタイプ」 |
例えば、土地の半分に地主自身が使う住居を造り、残りのスペースに別個の玄関を設けた賃貸住戸を併設する。家族向け、単身向けの賃貸住戸などを組み合わせることで、貸主は家族構成の変化にあわせて住戸を柔軟に利用できる仕組みだ。当初は賃貸住戸をすべて賃貸し、子供が生まれて子供部屋が必要になれば単身用の住戸を使用、子供夫婦と同居するときは家族用の賃貸住戸を使用すればいい。本体価格は3.3平方メートルあたり51万円台。
ミサワホームは、賃貸住宅に抵抗感が少ない団塊ジュニア世代を主な借り主に想定、多様化している借り主ニーズにこたえられるよう、地主が住戸内のデザインを選べる集合住宅「アパートメントSI」を今月発売した。躯体(くたい)部分と内装を分離設計するSI(スケルトン・インフィル)工法を採用。間仕切り壁のない広々とした空間にしたり、部屋数を多くしたりすることが可能だ。3.3平方メートルあたり29万3000円からと低価格に設定。資金負担を軽減し、賃貸アパートを運営しようとしている潜在的オーナーの取り込みを狙う。
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| ミサワホームが今月発売した「アパートメントSI」 |
積水化学工業も建て替えニーズを狙い、賃貸住宅併用、店舗併用、賃貸専用の3つのタイプを設定した複合型3階建て住宅商品「デシオCX」を昨秋発売。家族向けアパート商品を販売しているナショナル住宅産業は「定期借家制度をにらんだ商品開発を進めている」と対応を急いでいる。
啓蒙セミナーも活発
商品投入にあわせて、各社はアパート部門を増員したり、定期借家制度に関するセミナーを開催するなど地主に対する啓蒙(けいもう)活動にも力を入れている。定期借家契約を結んだ実例は少ないとみられるが、これまで数回、セミナーを開いたミサワホームは「回を重ねるごとに参加者が増え、地主の関心も高まっている」と期待を寄せる。
定期借家制度では、貸主が契約上借り主と同じ立場に立てるようになり、そのメリットは大きい。だが、価値観の多様化で持ち家にこだわらない賃貸住宅派が増加傾向にあることもあり、貸す側もこうしたニーズにこたえていく必要がある。両者のニーズをいかにとらえていくか、住宅メーカーの商品開発競争は今後さらに活発化しそうだ。(遠藤淳)
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