 |
|
|
 |
「世界情報通信サミット(GIS)」は例年、本会議直前・直後の約1カ月間、電子メールと電子掲示板を使ってネット会議を開催します。これは、本会議に向けて、IT(情報技術)の世界で何が問題になっているか、その解決にはどうすべきかを議論しようというもので、2004年は、1月29日にスタートし、本会議後の3月4日まで、205本の投稿がありました。
ネット会議の参加者はIT分野の有識者、専門家と「デジタルコアGISフォーラム」会員企業の代表者、そして政策担当者など、日本語会議に約220人が参加して行われました。
今回のネット会議では、「IT全般」というタイトルの会議室Aと、本会議のテーマに沿った「デジタルID革命」を議論する会議室Bの2つの会議室で、議論を行いました。会議室Aでは「発明の対価」「デジタル家電」などの議論が盛り上がりました。「デジタルID革命」では、セキュリティーやプライバシー侵害が話題になりました。司会は坪田知己日経デジタルコア事務局代表幹事が務めました。
期間中、投稿は数日後に日経のホームページに掲載しました。日経産業新聞第5面に2月19、20日に要約を掲載し、さらに3月30日の日本経済新聞別刷り特集にも2ぺ一ジにわたり紹介しました。
シンポジウムの詳しい内容は「世界情報通信サミット」のホームページhttp://www.nikkei.co.jp/summit/をご覧ください。また、年間を通した議論については「日経デジタルコア」のホームページhttp://www.nikkei.co.jp/digitalcore/をご覧ください。
このホームページでは、投稿をテーマ別に整理し、テーマごとに要約を掲載しました。要約に記載された発言者名をクリックすると、リンクされた該当の発言が表示される仕組みになっています。
要約などには、発言者の肩書きを入れていません。発言者のプロフィールは、以下の「ネット会議参加者リスト」でご確認ください。


|

| |
ネット会議開始後まもなくの1月30日に、東京地裁が青色発光ダイオード(LED)の開発者である中村修二・米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授に対し、元の勤務先の日亜化学工業に発明の対価の一部として200億円の支払いを命じた判決を下した。
これに唐澤豊氏(017)は、「まだ売り上げが達成されていない」「企業の業績は一人では上げられない」として、「支払額は約50億円が妥当」との意見を表明した。これについて、発明の対価、会社と個人の契約、技術者の地位などについて幅広い意見交換があった。
決定方式について新保豊氏(018)は、「(特許係争では、司法についても)企業の実務家をメンバーに加えた審議会などの方式を通じ、妥当な経済効果を算定できるようなシステムをつくる」という提案した。
村田初穂氏(020)は、「これまでの会社での処遇も、極めて悪いように見える。日本での発明に対する報酬の裁判の多くが、実際には、金額以外の待遇や名誉、地位といった面で、正当に報われていないという実感から起こっていることも知っていてほしい」とした。
夏井高人氏(025)は、「知的労働に従事する従業員は、労働者よりも顧問(コンサルタントを内容とする独立事業者)としての法的地位を有していると考える」という設例を提示し、「大きな利益を生む発明等をした時点で、その従業員は、労働者としての地位を継続するか、事業者として独立するかの選択権があり、後者を選択した場合には、その時点で、開発経費清算契約と利益分配契約を締結しなければならない、といった法的スキームを構築するのが合理的ではないか」との意見を述べた。
さらに夏井氏は、「発明に伴う利益分配をめぐる争いを目にするにつけ、こうした権利・義務関係を明確化しない限り、日本国政府が知的財産大綱をいかに高く掲げてみたところで、良い結果は何も得られないだろう」とした。
新保豊氏(026)は、「法的な仕組みと企業側での仕組みが今回の訴訟判決を契機に整備されれば、研究者としては優れているが企業や日本国に対して大きな恨みを持っている人材が、米国などに流出することも防げるのかも知れません」とした。
これに夏井高人氏(027)は、「私見としては、現金で一時金の報奨金を給付するだけではなく、一定数の株式を当該発明者に与えて株主となってもらった上で(ストックオプションの一種と考えても良い)、当該発明によって得た利益を株主全部に公平に配当していくという仕組みを構築したほうが、誰にでも納得できるしwin
winの良い関係ができるのではないかと思います」と答えた。
田中辰雄氏(030)は、夏井案(025)について、「事前には誰が成功するかはわからない。そのリスクを背負って資金提供したことへの相当巨額の対価がなければ誰も資金提供はしません。成功確率が5%なら、発明成功時には少なくとも提供資金の20倍を上回る収益がなければ、誰も資金を出しません」と述べ、「資金あるいは機材などの提供者にも発明に対し一定の権利が認められるべき」と、「利益配分契約は事前に決めるべき」という意見表明を行った。
これに夏井高人氏(031)は「事前方式では、研究者は、低く値踏みされてしまう。発明が成功して利益を出しているから強い発言権をもち得る」と、事後的な解決方式が妥当と再反論した。
そして解決策として
- 法定の基準(割合または算定方式)を定めておき、それに適合した利益分配契約だけを合法的なものとして認めるように制度設計する。
- 争いが発生した場合または契約が存在しない場合には、事後的に、裁判所その他の第三者機関の裁定に従うように制度設計する。
の2つを提示した。
田中辰雄氏(034)は、夏井高人氏(031)の発言に、「発明に成功した後では発明者の立場は強くなりすぎる」「発明が成功してしまった後では、出資者側の『失敗した発明に多数出資してきて、ようやくこの成功にこぎつけた』というリスク負担が考慮されません」と反論した。
また、「事前契約は使用者側が圧倒的に有利」という夏井氏の説に、「重要な特許に挑戦できるだけの優秀な人は、これからの社会では会社を移動できるのではありませんか。会社側は彼らをひきとめるために、配分を労働者側に有利にせざるをない。そういう競争がすでに働いていないでしょうか?」と述べた。
この論争は、夏井氏の反論(035)、田中氏の反論(043)という形で続いた。
また校條諭氏(136)は、「技術者に対する報酬として、大企業内でのファントム・ストックを発行して報酬の擬似『貨幣』としたり、その企業のストックオプションを特許の対価として付与すれば、成功のリターンに対する公平感が出ると思います」と述べた。
夏井高人氏(140)が「いろいろなタイプの選択肢を予め用意しておき、その中から自分の判断で最も合理的と思われるものを自己責任に基づいて選択できるようにしておくのが合理的」と述べて終結した。
この論争と並行して、日本の技術者の地位の低さも話題になった。
藤原洋氏(110)は、「技術者にとっての最大のインセンティブは、『法外な報酬』よりも、企業活動を通じて『活躍の場が与えられること』と『その結果得られる達成感』であると思います」と述べた。
中野潔氏(112)は、「技術者に、平均として、もう少し報われている感があれば、トップ技術者層の『反旗』がここまで広がらなかったのではないか…。明確な根拠がないのですが、そんな感じがしています」と述べた。
本荘修二氏(113)は、「日本は技術立国とも言われるのに、賃金水準や出世をみれば技術者が割を食っていた。一部の技術者が搾取されていたとか被害者的な意識を持っていることは容易に想像されます」「理屈はどうでもいいから、技術者を志す若者にやる気モリモリ出させるような環境をつくらないとまずいですよ」などと述べた。
山田肇氏(117) は、「このような判決が続く日本はリスクが高いので、研究開発機能は外国に出したいという意見が企業から出ています。どうぞ、そのような企業には出て行ってもらいましょう。均一で、温和で、従順な日本人研究者さえ管理できない企業が、個性的で、権利意識の強い外国人研究者をうまく管理できるのか、その腕が見ものです」と述べた。
藤原洋氏(119) は、「問題は、経営側の姿勢だと思います。経営側に、科学者・技術者のこのようなモチベーションを大切にする視点があり、組織的な仕組みを備えているかどうかだと思います」「発明・発見を産みだす組織作り、社会作りは、研究開発型企業の経営者や知的社会を作ろうとする人々に与えられた最重要課題だと思います」と述べた。
|
|
|
| |
2003年から米国で音楽配信ビジネスが始まり、日本でも流行するとの観測があることから、この問題について議論を行った。
中野潔氏(003)は、「オンライン音楽配信の中心ユーザーは、気に入ればかなりの金額が投入できて、かつ、大体定番の音楽を聞く40歳代以上になる」とし、「若い人たちは、これとは、違うパターンで行動するのでは−−という気がする」とした。
力武健次氏(007)は、「日本ではCDレンタルという、欧米にはない業態が確立しているので、これと競合する」として音楽有料配信の普及は無理と見た。そしてCDなどにプロテクトをかける傾向に反発した。
校條諭氏(009)は、「新曲適応派か過去志向保守派か」「CDショップ適応派か不慣れ派か」という対比を示し、「新曲適応&ショップ不適応」が音楽配信への親和度が高いとした。そして、「新曲がどんどん配信されて、リーズナブル料金で、支払いも簡単となれば配信利用に流れる」と見た。
前川徹氏(010)は、「1曲が100円以下になるという条件付」で音楽配信が普及するとした。そして「絶版になっているようなレコードもオンラインでダウンロードできるようになるといい」と希望した。
粉川一郎氏(011)は、iPodの存在が大きく、「聴きそうにない音楽を持ち歩ける」ことが見よくと述べた。そして「そのうち聴きたくなるかもしれない、あるいは聴いてみたいと思っているコンテンツを、とりあえず買っておこう、というふうに意識が変わってしまう」とした。
中野幸紀氏(013)は、「インターネット上での音楽配信サービスは、ごく少数のパーセンテージの需要に対して、どんなマイナーな需要でも全世界で集めればそれなりの数になるということから、グローバリゼーションのメリットを最大限に活かした商売になるのでは」と述べた。
校條浩氏(014)も、「音楽配信は新しい音楽流通の端緒であって、まったく新しい音楽消費市場が誕生・拡大する前触れと見た方がいい」と述べた。
またラジオ付き携帯の話題で、新保豊氏(019)は、校條浩氏(016)の質問に「土台(媒体)が変われば上部構造(コンテンツ)も変わる」として、「今までにないラジオ放送番組が登場するであろうと、『auのラジオ付携帯』の動きを楽観視している」と述べた。
|
|
|
| |
校條諭氏(032)は、「携帯で川柳」という例を示して、「携帯の普及は、実は新しい文化を生み出していると言っていいのでしょうか? 他の実例はありませんか?」と問うた。
これに尾花紀子氏(033)は、ギャル文字や自治体が「不審者や小さな事件の情報」を携帯で情報収集し、携帯に配布している例などをあげ、「新しい文化の兆しがあるということだけは、確実に言えそうです」と述べた。
さらに尾花紀子氏(062)は、「文明や産業革命の動向と同様、文化とは、作り手により作られるものではなく、使い手により作られていくものですよね。使い手の、なかなか表出しないナレッジをいかに汲み上げて技術や製品に生かすことができるか。ここが肝だと思います」と述べた。
校條諭氏(063)は、木村誠氏(037)の「携帯での小説連載を見ると、作者はやはり器を意識しているようですね」という発言に対し、「レコードからCDに移行しつつある頃、曲の作り方が変わった。ランダムに曲をかけたり、途中で別の曲に飛ばしたりということが簡単になったことで、曲自体に変化が生じてきて、それまでに比べて、『さび』を曲の頭の方に置くようになった(私が主宰したセミナーでの高城剛さんの発言)」と述べた。
このように、新しい機器の特性に応じてコンテンツが変わっていくことについて議論が交わされた。
|
|
|
| |
村上裕康氏(039)は、「ITを利活用するための基盤整備に焦点をあてていく必要がある」として、医療などを例示して「(1)情報の体系化(標準化) (2)Webシステムへの実装 (3)社会制度の整備」を挙げた。これをきっかけに「情報の体系化」の議論が盛り上がった。
村上裕康氏(046)さらに、「我が国は、世界最高水準のインフラ構築(ハードウェア)を構築しつつありますが、『社会システムの体系化および情報化』こそ残された課題です。社会システムの編纂事業とでもいうべき作業に取り組んでいく必要があるはずです。来るべき社会が『知識社会』ならば『知識』の体系化に早く取り組むべきです」と述べた。
夏井高人氏(050)は、村上氏の「知識の体系化」の意見に反論し、「将来発生するであろう新たな知識は、既存の知識とは全く異なる性質を有するものであるかもしれません。そのような未知のものについて、予め想定し、それを組み込んだものとして知識を体系化することは、原理的に不可能なことです」と述べた。
新保豊氏(051)は、知識の体系化問題で、「問題は政府が知識の体系化を推し進めることではなく、政府は知識や情報は漏れ隠さず国民へ開示し、国民がそれを自由に組みなおすことや様々な価値を付加することが自在にできるような環境を整備することに留めるべき、だと思いました。それ以上は不要だと思います」と述べた。
村上裕康氏(052)が情報の体系化の具体例として病名の標準化の必要性を述べたことに対して、夏井高人氏(053)は、「いったん表記方法や診断方法の体系化がなされるとすると、レベルの低い医師は、そのような綺麗に整理された知識に頼りきりになり、個々の患者の症状における微細な相違からあえて目をそらせてしまうという非常に安易な医療行為を横行させかねません」と反論した。
夏井氏、村上氏の論争が続き、最後に村上裕康氏(141)は、「生活者や中小企業者にとって、『情報化』が必要と考えます。医療情報化の例を何回か出しましたが、生活者が便益を受けるための『情報化』が必要です。生活者が自分で医療データを管理し、医療機関を選択するための『情報化』が必要です」とWebサービス実現を図るべきとして、その前提となる「知識の体系化」を訴えた。
|
|
|
| |
ネット会議開始前に実施したIT有識者アンケートで、成長が期待される分野として、無線ICタグに続く第二位に「デジタル家電・ホームネットワーク」が挙がったことから、普及の条件や日本メーカーの競争力についての議論が盛り上がった。
焦点の一つは日本メーカーの競争力だった。新保豊氏(054)が「垂直統合的な有利さが出てきている久々の局面になってきており、日本メーカーは活気付いてきているように思えます」と述べ、田中辰雄氏(058)も、デジタル家電に関して「デジタル家電は単機能であり、かつ大衆が使うために安定稼動しなければならないから、(日本企業が得意な)垂直統合型の方が優勢だろうと思います」と述べた。
これに、前川徹氏(067)は「パソコンのようなモジュール型でなく、統合型の製品であり続けるだろうが、それが日本企業の優位性を保証しない」と述べ、田中辰雄氏(076)も「その時の勝者はサムスンかもしれない。日本企業の経営の質が悪化している」と警鐘を鳴らした。
一方、唐澤豊氏(068)は、「デジタル家電はITと融合していくので日本企業は部品屋と組み立て屋になる。世界の主流になるのは難しい」と述べた。
家電製品の使い勝手については、参加者が自分の経験を紹介しながら、様々な意見を述べた。
「食品の残量や賞味期限が一目で分かる冷蔵庫」といったデジタル家電のイメージに、女性参加者はカンの大事さを強調し、尾花紀子氏(059)は「ある程度の便利さまではいいが、操作性向上が飽和点に到達した途端に技術競争になってしまい、『人がやったほうがいい』ことまでを自動化しようとする傾向がでてくる」と述べた。
これに呼応して、夏井高人氏(070)は「『技術を社会に普及させる』という発想はやめて、『社会で必要とされているものを実現するには何が応用可能か』という発想に転換すべき時期が来ている」と述べた。
片瀬和子氏(072)も、「食材を無駄にせず、短時間でスピーディーかつ簡単に料理ができて、出来上がったものがそこそこ美味しくいただければ嬉しい」という立場から、『料理』を取ってみても本当に千差万別、料理に関するデジタル家電のニーズの顕在化は一筋縄ではいかないと思います」と述べた。
また飯坂譲二氏(077)は、「主要部品のパーツ・リストが使用書に記されているのが北米の家電文化。家電の簡単な修理は、自分でやるか便利屋に頼む」として、「パーツが気楽に手に入るシステムはITの導入によって容易に実現できそうだ。真剣に使い捨て文化を変えてみてはいかがでしょうか」と述べた。
これに、力武健次氏(082)は、「日本のメーカーが消費者を愚弄している。消費者はメーカーに甘えすぎている。売る側がユーザーにはいじってもらいたくない、面倒だ、という意識が非常に強い」と述べた。
また「生活習慣の変化は長い周期なのに、製品の変化が早くてついていけない」(村田初穂氏(095))との意見や、「技術者がいろんな新しいものを開発するのは自由だし、その中には本当に役立つものも含まれているでしょう。しかし、開発者とは異なる『個』を持つ他者に対して開発者の『個』を押し付けるのだけはやめてほしい。せめて提案くらいでいてほしい」(夏井高人氏(096))などの意見が相次ぎ、二槽式洗濯機の便利さを懐かしむ意見が続いた。
ネット家電の一つとして、外部から自宅内を監視したり制御したりする製品が提案されているが、力武健次氏(084)は「下手に制御出来る必要はない。状態把握だけはしたい」と過剰な機能に抵抗感を示した。
全体的に、メーカー側が製品サイクルを短くして、次々に新機能をアピールすることに批判的な声が多く、デジタル家電についても過剰な機能を懸念する意見が相次いだ。
|
|
|
|
|
今年のメインテーマである「デジタルID革命」について話し合う会議室では、まずこの技術を社会的に広く普及していくためには、どのような位置づけをすべきかが論じられた。
最初に坪田知己デジタルコア代表幹事(002)が、先に行った「ITブレークスルー・アンケート」で寄せられた意見を参考に、デジタルID技術を「権利証明」と考えてはどうか、と問題提起した。サービスを提供する側が「認証」や「識別」の手段としてデジタルIDを使うのではなく、サービスを受ける側が、自分の権利を証明するためにデジタルIDを利用する、という発想である。そうした視点に立つことで、活用についての新たなアイデアも生まれるのでは、と期待を寄せた。
これについて佐藤一郎氏(003)は、「日本はサインより印鑑の国。タグという有形のものを使った権利証明には需要があると思う」と述べた。またこの「無形より有形」という心理的効果を利用すれば、音楽のダウンロード販売などソフト、コンテンツの流通にも利用できるのではないか、と分析した。
力武健次氏(006)は、権利証明と考えるなら、タグに書き込まれた情報を無効にしたり、再発行したりできるシステムを作らないと、プライバシーの問題が生じるのではないか、と述べた。そして、誰が誰に権利を付与するのかを明確にすることも重要だとした。
この「権利証明」の考え方に異を唱えたのが夏井高人氏(007)だ。まず、そもそもIDは工場の部品管理や物流での商品管理などにも用いられるため、権利とは無関係なものが多い、と指摘。その上で、「IDが権利証明の手段として用いることがあっても、ID自体が権利を証明しているわけではなく、そのIDを特定のシステムが処理することで初めて結果がもたらされる。しかもその結果は事実の推定に過ぎず、法的な権利証明ではない」と述べた。安易に「権利証明」と称することは、消費者に混乱や被害をもたらす可能性が高い、と強く反論した。
これについて坪田知己(012)は「現在のデジタルIDは『管理する』というイメージが強すぎる。法律的な視点で言えば正確さに欠けるのは認めるが、別の言葉でとらえることによって、もっと利用者主体の発想を促すことができるのではないかと考えている」と、理解を求めた。
|
|
|
|
|
すでに無線ICタグが実用段階に入りつつあることを踏まえ、それらをどういうものに対して添付するのか、そしてその中にどこまで情報を書き込むのか、という点について、踏み込んだ議論が展開した。
飯坂譲二氏(004)は、デジタルIDの付加対象には次のようなものがある、と分類した。
- 個人のID
- 消費者向けの製品
- 書物、音楽あるいはデータといった、ソフト・コンテンツ
- 部品や素材など
- その他
唐澤豊氏(005)は、これに企業や公的機関などを認証するための「組織のID」も挙げられるのではないか、と提案し、それはB
to B、B to Cいずれのエレクトロニック・コマースにも有効だと述べた。
佐々木宏氏(009)は、一般的なデジタルIDをめぐる議論について「あらゆるモノにつくことが前提になっているような印象を受けるが、それでいいのか」と疑問を投げかけた。IDを付ける必要のないものも多く、またプライバシー保護の観点からも、デジタルIDをつける対象のガイドラインが必要ではないか、と指摘した。
またそこに含める情報の範囲については、唐澤豊氏(005)が「単純でランダムな数字情報の場合と、ある程度の識別情報や履歴情報も含める場合がある」と大別した。その上で、プライバシーの問題を回避するためには数字情報だけにしたほうが良いのではないか、と考えを述べた。
これに対して高木浩光氏(023)は、「タグの中に情報を含めなくても、タグのIDに関連付けてどこかのデータベースに情報を蓄積するのであれば、やはりその情報をどう扱うかが問題となる」と指摘し、数字情報だけをタグに記録したとしても、やはりプライバシーが侵害される可能性は残る、と主張した。
こうしたやりとりを受けて、加藤幹之氏(027)は、技術ですべてを解決するのは不可能であり、それをカバーする制度も併せて議論すべきではないか、と提案した。「技術も制度も完璧ではないという現状を認識した上で、それらのバランスをどこに置くか」が重要だとする同氏の主張には、賛同の声が相継いだ。
|
|
|
|
|
飯坂譲二氏(008)は、タグそのものの標準化を進めると同時に、そこに盛り込む情報の属性を示す「メタデータ」を応用分野ごとに定義していく必要があるのではないか、と指摘した。
山下鐵五郎氏(016)はこの意見に賛同し、デジタルコアのような場で研究していくことを検討してはどうか、と呼びかけた。
|
|
|
|
|
2004年2月、佐賀県で実在の市民になりすまし、不正に住民基本台帳カードを申請して交付を受けるという事件が起きた。飯坂譲二氏(013)はこの事件を例にとり、本人確認の手段としてデジタルIDを用いるときは、技術的な課題だけでなく、制度の見直しにも取り組んでいくべきだと論じた。飯坂氏は、ひとつの例として、カナダでは公的な申請を行うときには、社会的な資格を有する保証人が要求されること、顔写真には撮影者のサインが必要になることを紹介した。
高木浩光氏(033)はこの問題について「住基カードを作るには運転免許証を、運転免許証を作るには住民票の写しを、住民票の写しを取得するには住基カードを…といった具合に、本人確認の連鎖で認証が成り立っているが、それぞれのステップがどの程度信頼できる確認になっているのか、その全体を整理・把握した上で社会システムを設計していく必要がある」と述べた。
さらに高木浩光氏(043)は、自治体などで各種の手続きが電子化されていくにつれ、なりすましが発生しやすくなる危険も指摘した。なりすましを目的として、申請書類を作成し、窓口に出向いて提出するのはリスクが高いが、顔を見せずにWEBで申請ができるようになると、そのリスクが極めて低くなるからだ。「紙での申請を想定して設計されてきた手続きを、そのまま電子化してよいものだろうか。各手続きごとに脅威レベルの再評価が必要ではないか」と述べ、安易な電子化に警鐘を鳴らした。
楠正憲氏(045)は、「人によって悪用やなりすましで想定される被害の大きさは異なるし、それに対する受け止め方も異なる」と述べ、電子政府、電子自治体においては、住民がそれぞれ安全性と利便性を判断して、個別にサービスを選択できるようにすることができないか、と提案した。
夏井高人氏(071)は、「いわゆるユビキタスコンピューティングは、人間の尊厳における最も重要な部分に対する侵害的要素を常に伏在させている。これは、これまでの技術とは著しく異なる重要な特性だ」と指摘し、そのことを明確に自覚して技術開発を進めるべきだと強調した。
|
|
|
|
|
無線ICタグの活躍が期待されている分野のひとつに、高級品やブランド品などの偽造防止がある。しかし、実は無線ICタグそのものが偽造されにくいわけではない、と高木浩光氏(017)は指摘する。「チップの偽造は困難だが、同じ電波を発する仕組みは簡単に作れる」からだ。無線ICタグは偽造を防止できる、という過信は問題を起こしかねない、と警告した。
これに対し唐澤豊氏(019)は、タグとリーダーの間でやりとりする電波を暗号化し、さらにその暗号化をIDの数字情報をもとに個別に変えるようにすれば、簡単には偽造されなくなるのではないか、と述べた。
このアイデアについて高木浩光氏(024)は、実現困難ではないか、という見方を示した。むしろ、偽造防止に特化して考えるならIDは不要で、特定の電波を出せることの確認と、目視による確認の併用で効果が得られるのではないか、と述べた。
|
|
|
|
|
松本功氏(046)は、ICタグによるトレーサビリティーが一般的になると、その管理コストが特に中小企業などにおいては大きな負担となり、経営を圧迫するのではないか、と懸念した。
これに対して楠正憲氏(047)は、中小企業がそうしたシステムを利用しやすくなる、ASPサービスなどもいずれ登場してくるのではないか、と述べた。
|
|
|
|
|
夏井高人氏(055)、(057)から、米カリフォルニア州上院に無線ICタグに関連したプライバシー保護法案が提出されたこと、米ユタ州下院で無線ICタグについての知る権利を定めた法案が可決したことについて、それぞれ報告があった。いずれも、ビジネスに無線ICタグを活用しようとする事業者が守るべきルールを定めている。夏井氏は、今後同様の法案が各州に提出されるだろう、と予想した。
高木浩光氏(062)は、こうした法案やガイドラインにおいては、表示の義務がタグの存在だけに及んでいることを指摘し、これでは消費者はタグを気にするか気にしないか、という感情的な判断しかできないのではないか、と分析した。購入の際、個別にタグを無効にするかどうかの判断ができるよう、通信距離やセキュリティー機能、含まれる情報の種類も明示する必要がある、と述べ、その表示方法についてのアイデアを披露した。
|
|
|
|
|
世界情報通信サミットに参加した会議メンバーからは、感想を含めて今後議論を深めていくべきポイントが指摘された。
唐澤豊氏(051)は、デジタルIDの導入・普及によって「どのような新しい文化を創造できるのか」をより明確にしないと、一般消費者は受け入れにくいだろう、と述べた。そのために、応用分野を(1)企業内(2)B2B(3)B2C(4)P2Pという4つに分けて議論すると良いのでは、と提案した。
夏井高人氏(052)は、大量生産される製品の流通・在庫管理や盗難防止には無線ICタグが絶大な威力を発揮するだろうとしながらも、「世の中には機械、装置によって管理したほうがいいものとそうでないものがある。何でもかんでも一律に考えるのではなく、もっときめ細やかにものごとを考える必要があるのでは」と述べ、より柔軟な発想の必要性を訴えた。
藤元健太郎氏(053)は「デジタルID『革命』にふさわしく、生活者や企業の価値観、行動様式から社会システム全体までが大きく変わることを期待したい。そのためには国家レベルのビジョンづくりと、国民の意識が伴うことが大事」と発言し、生活者が抱える様々な期待や課題にデジタルID技術がどう応えていけるか、今後も議論していこうと呼びかけた。
片瀬和子氏(054)は、「デジタルIDによって、企業と顧客や取引先との距離感がぐっと縮まり、よりオープンで密接な信頼関係を築かなければならなくなる」と述べた。しかしそのためには企業がネット上で顧客や取引先とひんぱんに対話ができることが必須だが、現実はなかなか難しい、と自らの経験を踏まえて指摘した。
田中辰雄氏(072)は、唐澤氏の意見に同意し、プライバシーの問題も重要だが、それと同様に、有効な利用方法や必要な環境整備について一層議論を深めていくことが大切だと述べた。
|
|
|
 |
ネット会議をご覧になり、ご意見のある方は、事務局までメールにてお送りください。 |
|
|
|
| Copyright
2003 Nihon Keizai Shimbun, Inc., all rights reserved. |
 |
 |
|