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「世界情報通信サミット(GIS)」は例年、本会議直前の約1カ月間、電子メールの同報機能を使ってネット会議を開催します。これは、本会議に向けて、IT(情報技術)の世界で何が問題になっているか、その解決にはどうすべきかを議論しようというもので、2002年は、2月1日にスタートし、本会議後の3月11日まで、268本の投稿がありました。
ネット会議の参加者はIT分野の有識者、専門家と「デジタルコアGISフォーラム」会員企業の代表者、そして政策担当者など、日本語会議に約170人が参加して行われました。また同じ期間に海外の有識者を中心に英語会議も開催しました。
総合テーマの「ネクストステージ〜セキュアなネットワーク社会の形成〜」を中心に、コンテンツビジネス、著作権問題、電子認証、政府の役割など幅広いテーマを扱いました。議論が拡散するのを避けるため、総合司会の坪田知己日経デジタルコア事務局代表幹事が、横串のテーマとして、どこまでが自由・非規制でどこからが管理すべきかをということで、「コントロールvsフリーダム」というキーワードを提示しました。投稿は数日後に日経のホームページに掲載し、全体の流れをわかりやすくするため、坪田が要約を掲示しました。日経産業新聞第2面に2月6日から毎週水曜日に4回にわたって要約を掲載し、さらに3月25日の日本経済新聞別刷り特集にも2ぺ一ジにわたり紹介しました。
シンポジウムの詳しい内容は「世界情報通信サミット」のホームページhttp://www.nikkei.co.jp/summit/をご覧下さい。また、年間を通した議論については「日経デジタルコア」のホームページhttp://www.nikkei.co.jp/digitalcore/をご覧下さい。
このホームページでは、日本経済新聞の特集に掲載された要約に書き加えた全体の概要を紹介します。要約に記載された発言者名をクリックすると、リンクされた該当の発言が表示される仕組みになっています。
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要約 1 テレビ再送信と放送の水平分離論 |
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山下鐵五郎氏(003)から「どうして韓国のテレビはネットで見られて、日本の各地のテレビ見ることができないのか」という疑問が出されたことから、テレビ映像のネット配信の問題、またNHKがネット事業に乗り出す問題、またNHKの経営問題、放送産業の水平分離論まで踏み込んだ議論が展開された。
テレビ映像の再送信では、本荘修二氏(004、028)が「二次利用に関する関係者の承諾と、コストが高いという問題がある。テレビ局は将来的にネット送信を始めるだろうが、あらゆる放送コンテンツが放送波と同時にネット配信されることは想像しがたい」と指摘したが、藤原洋氏(014)は「技術的に可能なことを規制するのは時代に逆行する」として、「(日本の)放送業界もインターネットに積極的にコンテンツ提供することが得策だ」とした。
水野隆一氏(023)はこの問題ではコスト面の理由が大きいとした上で、既存メディアのチャンピオンである放送局は自分の敵を作ることを望まないと推定した。
NHKのインターネット事業について、中野潔氏(077)は、「民放、新聞社、出版社は本業の広告料、購読料減少のリスクをとりつつ、Webやメールでコンテンツを流しているが、受信料減少というリスクのないNHKが上質のコンテンツをネットに流せば、競争はフェアではない」と主張した。
また水野隆一氏(087)は、NHKと民放のビジネスモデルが違うことを放置した上でネット配信を中途半端に許可するのは無責任だと述べた。
校條諭氏(091)の「NHKが民営した場合、NHKスペシャルのような大衆性に欠ける番組を維持できるだろうか」との問いに、池田信夫氏(092)は「視聴料ベースならブランドを守るインセンティブが働くので、商業主義には走らないだろう」とした。この問題で中野潔氏(096)は、「NHKが任意加入の有料テレビになったら、料金を払う気にならないので、NHKスペシャルのようなコンテンツは維持できない」とした。
NHKの番組資産についても、福富忠和氏(100)は「過去の(民営化までの)番組のアーカイブ化については、史料的価値を考慮して、民営化からは切り離して国費で行い、民放含めて再放送可能にしてはどうかと思う」と述べた。また中村伊知哉氏(117)は、NHKのコンテンツを国民資産ととらえ、安く自由に活用できるように義務づける政策があっても不思議ではない--とフランスの例を引きながら述べた。
政府のIT戦略会議で、放送のインフラとコンテンツを分離する水平分離論が議論されていることについて、池田信夫氏(113)は、民放連の「水平分離したら放送の公共性が維持できない」という主張の矛盾を述べ、「サービスの質は経営形態とは別問題」とした。
福富忠和氏(114)は、水平分離論に賛成としながら、「まずインフラの多様性と選択可能性が維持され、その上で分離原則が成立していること、さらに垂直レベルに包括する規制法のようなものが排除されていること、などを条件にしないと、メディア、あるいはジャーナリズムの機能が発揮されなくなる可能性もあるかと思う」と論じた。中村伊知哉氏(116)は「欧州では水平分離がとられているが、公共性や自由が阻害されているとは思えない」と述べ、地上波に水平分離を導入した場合、垂直統合を認めてよいか、が論点、とした。
田中辰雄氏(133)は、放送は電波利用が免許授与者に限られていて、インフラでの競争が効いていないのが問題で、インフラでの競争が行われれば、垂直統合は認めていい--と述べた。
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要約 2 コンテンツビジネスと著作権問題 |
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本会議の第2セッションで、「著作権保護のため、複製をすべて捕捉すべきだ」という意見が出されたことを受け、ネット上でも違法コピー問題が盛り上がった。
工藤浩氏(250)は、
1)違法コピー監視のためにアクセスを全部記録して監視することは無理ではないか、
2)ネットで配信方法が変わればレコード産業の存在意義が問われる、
3)違法コピーで音楽産業が打撃を受けるということについては「金を払ってでも使いたい」という良質なコンテンツがあれば産業として成り立つ
--などと述べた。
これに、中野潔氏(254)は反論して、「無料が氾濫していても、いいものなら金を出す人も出てくる--とすぐに結論づけるのには、無理がある。LINUXに企業が金を払うという事例と、大道芸人の芸をほとんどの人がただで聞くが、なかには、投げ銭してくれる人もいるという事例とは、多分、メカニズムが異なる」と述べた。
工藤氏(256)は、新しいビジネスモデルとして、
1)「無料配信サービス」を行って客を集めておいてから、そこに集まった客に別の商品を売る、
2)通信費と同じように、レコード会社に定額払ったら、あとはいくらでも聴き放題にする月額定額サービス
--などがありうるとした。
田中辰雄氏(260)は「複数の情報をすべて一括(bundling)してアクセス可能にして、定額制で提供するbundling型サービスが有望」との意見を述べた。これに、校條諭氏(261)は、新聞の宅配サービスを例に「これからのメディア・ビジネスは、コンテンツのバンドリング(編集)を基礎に、サービスのバンドリング(構成)をどのように構想するかに成否がかかっている。たぶんコンテンツのバンドリングだけでは消費者はお金を払ってくれず、サービスのバンドリングに対してだったらお金を払うことがある」と述べた。
工藤浩氏(263)は、定額制モデル、gnutellaモデル、双方向モデル、サービスのゲーム化--など、さまざまな形態が生まれるという推論を展開した。
また、コンテンツのクリエーターとしてアマチュアが台頭するという予測も多数挙げられた。
唐沢豊氏(251)は、シンポジウムの感想として「韓国ダウム社のコンテンツの60%はユーザーが創り出しているもの。これは生産者=消費者となるというプロシューマー時代を告げる嬉しいニュース」と述べた。
中野潔氏(266)も、「職場のお父さんやお母さんにとって、保育園に預けている子供の様子がCRTの隅の小さなウィンドウに映るとしたら、月に3000円や5000円払う気になるかもしれません」と素人同士の(素朴な)コンテンツ交換に払うお金の方が多いと見た。
唐沢豊氏(268)は、議論のまとめとして、ネット配信ビジネスを普及させるための選択肢の一つとして、「既存音楽家の作品を当面の目標にしないで、新人やインディーズを育てつつネットビジネスを始める。それでうまく行けば後から既存音楽家も参入するだろうと期待する」という考えがあるが、業界人も金の卵を探しているので、これも難しそうだと述べた。
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要約 3 「規制できないもの」の規制の問題 |
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「インターネットは犯罪の道具」という考えが広がり、警察庁が古物営業法を改正してネットオークションを取り締まるなどの動きが出ているが、ネチズンの多くは「ネットだから規制するのはおかしい」という議論を展開した。
工藤浩氏(016)は、テロの未然防止のために「テロを起こしそうだ」ということで逮捕・拘束するのは法治国家の原則違反と述べ、「インターネットはいかなる権力や組織によっても『規制できないもの』と認識する必要がある」として、「私たちに突きつけられた困難な問題は『規制できないものの規制』だ」と指摘した。
藤元健太郎氏(017)はインターネットオークションに対して警察庁が「古物営業法」を改正しようとしている問題で、ビジネスの発展を阻害すると指摘し、「サイバースペースの特殊性がもたらすリアル世界のルールとの不整合の問題は、オープンに多様な立場の議論を積み上げて解決していくべきだ」とした。
工藤氏(018)は古物営業法改正問題で、物品流通は特定のネットオークション業者を通さなくても可能で、「全ユーザーについて全ユーザーに対する情報流通のすべてを監視下におくことは、いかに優秀な捜査当局といえども、事実上不可能」と断じた。
安延申氏(020)はインターネットを用いた盗品売買の抑制は法益と法執行のための費用が明らかにアンバランスだが、警察は「犯罪の抑止&検挙」が自己目的だし、メディアも官依存の傾向があり、「仕方なしに法律を作っているのでは・・」と述べ、さらに、安延氏(040)は、「捕まえたい人」と「規制対象になる人」が別で、そこに本能的な危険を感じると述べた。
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要約 4 電子認証の問題 |
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電子政府のテーマとして、電子投票を進める場合に、本人をどのように認証するのかという問題でも議論が盛り上がった。
工藤浩氏(039)の「匿名でありながら本人が投票したことが確実なシステムはどのようなものか」との質問に安延申氏(040)は、「投票所で住民ICカードで認証し、投票機に入力すれば可能だが、在宅投票では妙案がない」と答えた。工藤氏(042)は、「金融機関はクレジットカードで本人認証できている」と現行の認証の危うさを指摘した。内田氏(044)は、電子投票はクレジットカードよりも高い本人認証の精度が求められるとして、クレジットカード方式が現実的でないと指摘した。安延氏(045)はクレジットカードは個人のリスクの問題、投票は「国民の義務」なので国が認証責任を負うという違いを指摘、投票の方が厳重とした。
古川泰弘氏(053)はセキュアなシステムを構築する上では、
1)利用者にセキュリティ・チェック項目を公開する、
2)システムの脆弱性が発覚した場合の代替措置
--が重要だと指摘した。
山本雄大氏(054)は高木氏(051)が提案した、「1回しか使用できないカード」が電子投票には現実的だとした。また山本氏(055)は、オンライントレードなどで当初はデジタルIDなど厳重な認証だったのが、暗証番号などへセキュリティのレベルが下がっていることを例示し、「多くのユーザーはセキュリティより利便性を選んでいる」と指摘した。
水野隆一氏(056)は選挙制度を考える上で、確保すべき要件として、
1)有権者の特定(なりすまし防止も含む)、
2)2重投票の防止、
3)投票の秘密の確保、
4)不在者投票、病院での投票など、特殊な投票行動の確保
--を挙げ、既存システムは、1)の要件が、意外に弱い、とした。
飯坂譲二氏(064)は海外在住者として電子投票に大いに関心があるとして、新しい理念の民主主義の台頭を期待していると述べ、高木寛氏(072)は投票が容易になることで新しい民主主義に生まれることを期待した。
松本功氏(220)は、電子投票に関連して、我々は、自宅のある自治体に帰属しているが、現実は職場のある自治体に関与すべきで、それに電子投票が意味を持つとした。 |
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要約 5 メディア産業の育成について |
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福富忠和氏(126)が、世界的に見てAOLタイムワーナーやディズニーのような巨大メディアの支配が強まっている現状を紹介し、「インフラとサービスの水平分離を超えて、メディア産業の育成や文化戦略の視点が必要だ」と述べたことから、メディア・コンテンツ産業の育成について議論が起こった。
磯崎哲也氏(136)は、日本ではクリエイティブな(=リスキーな)コンテンツへの資金投入がサラリーマン的な安全・前例志向で、米国ではプロデューサーがベンチャー・キャピタル的な資金仲介者の役割を果たしていることが、差の根本にあると指摘した。さらに磯崎氏(137)は、水平分離も根本的な解決にならず、リスクに取り組む人にどうファイナンスするかだ--とした。
唐澤豊氏(139)は、日本人を能動的にするには、報酬・免減税などの制度変更で変えられそうだ--と述べた。さらに唐澤氏は、パソコン産業を例に、放送・通信・メディア産業の規制撤廃をすべきだとした。
大木登志枝氏(152)は、韓国での娯楽関連のファンド募集を例に日本での可能性を問うた。また大木氏は日本映画は、世界で受ける映画の制作は難しいかも知れないが、アジア諸国で関心の高い映画作りは可能--とした。
田中辰雄氏(157)は映画館はローリスク・ハイリターンで制作側がハイリスク・ローリターンになっていることが映画への出資が少ない理由とした。また映画会社の制作・配給・興行を分離することはあり得る政策--だとした。
福富忠和氏(165)は、「アメリカやフランスを見ると、文化をそのまま国際的なビジネスとして展開できる、というのは、情報のヘゲモニー闘争という点では、極めて大きい要因ではないかと感じる」として、メディア、IT分野での(水平分離策などによる)市場、産業育成を行い、同時に日本のメディアコンテントの独自性と多様性を促進するようなコンテント(保護育成)政策を国が講じ、世界の文化状況における日本の独自性、自律度、認知度を高めていくことが必要、とした。
唐澤豊氏(172)は、宮崎駿監督の「千と千尋の神隠し」がベルリン映画祭でゴールデンベア賞を取ったとの報に寄せて、「技術がデジタルになり、使い易い制作ツールが出てくると、世界中の人が同じような作品を作れるようになるわけで、その時に差別化できるのは、やはり日本人ならではの伝統文化が背景にないといけないのではないかと思う」とした。
福富忠和氏(173)は、日本のアニメが日本では評価されていないことを嘆き、「産業構造の問題だけでなく、伝統文化のしがらみが無く、新しい現代文化をリアルタイムに評価できたからこそ、ハリウッドなりシリコンバレーは成功しえたと思います。印象派の画家のように死んでから評価されて、日本の金融機関のギャラリーに飾られても、なんの意味もない。その反省が、その後のフランスの文化政策を生んだと思う」と述べた。
唐澤氏(181)は福富氏への反論として、「産業も文化も政府が保護して育成するというのは結果的に競争力や実力を弱体化こそすれ、強化はできないというのが歴史的に証明されているかと思う。時間がかかっても、個々の日本人が自立・自律して行くよう、学校、家庭、社会での教育・啓蒙が必要なのだと思う」などと述べた。
松本氏(182)は、唐澤氏(181)が、「何事においても、優れたものが発表・発売時点で大衆から高く評価される・売れるというものではないことは枚挙に事欠かないと思います。我々ITの世界でも同様です」と述べたことに反論し、歌舞伎にしても俳諧にしても大衆が評価したのが先だったことを述べた。 |
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要約 6 学校教育とIT |
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学校教育でITへの取り組みが遅れ、ITへの極端な批判も見られることにネチズンたちは憂慮し、ITの利用が教育の中で、非常に重要だという意見が相次いだ。
唐澤氏(208)は、学校教育で、「デジタルはON・OFFだけの世界、アウトプットに曖昧な部分は存在しない」などと、ITを批判する考えと、ツールとしてITを教えるべきだという考えがあると述べ、IT教育を肯定から否定まで4段階に分け、ネット会議メンバーの意見を求めた。
片瀬和子氏(214)は、「昨秋、訪問した韓国の模範的な小学校で、クラス全員がインターネットで情報収集しながら、授業を行っており、収集した情報を各自の考えでまとめ、それらに基づいてディスカッションしていた」と報告した。さらに片瀬氏(217)は、放課後の教室でデジタル教材を作っていた女性や、ネットワーク管理の先生の苦労に触れ、こうした地道な活動をされている方を尊重する機運を高めるべきだとした。
飯坂譲二氏(227)は、「教育とは、次世代の人々が、次世代の環境(世界状況、経済・産業、技術レベル、その他)の元で、生きていくのに(よりよい生活を営めるように)必要となる既存の知識と知恵を次世代の人に移植すること」と定義し、「学習しなければならない情報の種類、情報量が指数関数的に増えているのに、学習に利用できる時間数は限定されていること」などを挙げ、「世界に散らばっている既存の知恵のあり場所がわかり、早くアクセスできて取り出せることが必要。この意味で、ITネットワークの存在が前提になり、同時に既存の知恵がIT化されていることが前提」として、「学習の生産性の向上に、ITは大いに期待できる」と、長文の論考で述べた。そして、「日本がこの世紀も世界と共に自立した国を営み、自立した人生が送れるには、
(1)知恵をつくり続けられる国(社会、企業、個人も)
(2)せめて既存の知恵を有効に使える国(社会、企業、個人)
(3)他国(他人に)感動を与えられる国(社会、企業、個人)
(4)そして人を残せる国(社会、企業、個人)
の4つの条件が満たされることだと思います。
どれも、ITなしには実現できません」と述べた。
唐澤豊氏(228)は、飯坂氏の論考への補足として、「学問とは良い問いを学ぶこと」「学校は学問をするところ」であってほしいと述べた。
校條愉氏(238)は、「ワークショップのような、相互対話的な触発によって認識を構成していくようなスタイルの重要性が非常に増している」として、「問われているのは、学習の意味と共に、そのスタイルであり、そのベースにはコミュニケーションのスタイルや方法論というものも変革の対象になるということではないか。伝達・分配・命令などではなく、ディベートでもない、相互編集的なコミュニケーションの方法論をプラグマティックに確立することが求められている」と述べた。
これに中野潔氏(239)は、慶応ビジネススクールの社会人向けの遠隔授業を見学して、「講師も受講者もともに学ぶ仲間だ--と思った」と述べた。大学助教授の今川拓郎氏(242)は、「大学二年生のセミナーで自由放任で企業研究をやってもらったところ、嬉々として非常に充実したプレゼンテーションをやってくれたので、不思議に思いました」などと述べた。 |
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要約 7 政府の規制と民間の役割 |
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インターネットの発展について、官と民がそれぞれ果たすべき役割についても意見が多数あった。
中村伊知哉氏(009)は政府のIT戦略本部に提出された「インターネット時代の情報通信法制改革」という報告書が、通信・放送すべてがIP(インターネットプロトコル)化されることを前提に「通信放送融合」「放送のハード・ソフト分離」「電波の帯域免許制」などを提言していることについて、微調整で行くのか、抜本改革すべきかを問うた。
これに対して池田信夫氏(011)は日本のIT産業の行き詰まりの原因は「供給者の論理」で、「ネットワークをユーザー(消費者)がコントロールするというインターネットのend-to-endの思想をIT政策にも徹底させることが日本の課題」と述べた。
真野浩氏(079)は、無線LANのサービスをする上で、公的な企業が無線LAN設備の設置を拒むとか、周波数既得者の既得権意識が強いことなどが新ビジネスの阻害要因になっていると指摘した。これに中村伊知哉氏(112)は、「異分子や異端がプレイしはじめて既成を覆していくしかない」と述べた。
会津泉氏(177)が、米国人から「日本政府が、なぜインターネットの重要性に気付くのにこれほど遅れたのか」などの質問を受けていると紹介した。これに前川徹氏(180)は、インターネット推進を妨害した学者、ISDNがインターネットに不適だということが常識化するのが遅れた--などの問題を取り上げ、「いったい誰の責任なのでしょう? 政府?、NTT?、マスコミ?、あるいは事情をよく知っていた一部の有識者や技術者?」と問うた。
会津氏(195)は、過去に「インターネットをテーマにするなら郵政省は後援しない」という圧力を受けたことを述べ、「対案はそのとき、その場で出していくこと、それをオープンに議論することが大事だと、つくづく思います」と述べた。
藤原洋氏(203)は、「官の役割は、過去にとらわれず新しい時代を創るために、学術や産業界のエネルギーを活性化する側に回ることだと思います」として、「政府が悪いとか、何処が悪いとか、批判するよりも、民としては、学術で生まれる知識やアイデアを、官の理解をとりつけながら、いち早く国際競争力のあるビジネスにする『実行力』」が重要だとした。さらに藤原氏(219)は、「政府批判をする前に、民間がやるべきことの方が多くある」「政府の審議会には現場に近い人を」などと提言した。
また、元通産省の安延申氏(052)は、電子政府、行政情報化を巡る動きで、住宅基本台帳ネットや総合行政ネットワーク、さらに地方自治体が個人の電子認証を行うことが、コストに見合う効率・合理化にならず、巨額の無駄遣いと利権の構造が生まれるという危惧を表明した。
ITが市場競争力を増す道具として重要だとの指摘もあった。
飯坂譲二氏(245)は、市場競争力には「コアの有無」「タイミング・適時性」「継続性」「適切なリレーションの維持」が重要で、「ITはこの4条件を満たすための有用なツールであることに間違いない。ITを駆使してこの4条件をみたす努力が市場競争力を強化し、経済の回復に連なることと思います」と述べた。
唐沢氏(249)は、「ITをマーケティングのプロセスで活用することで、短期間に市場が求める商品を提供することが可能になる」と述べ、「雇用創出と需要創出ということが官僚+政治家の間で言われていますが、全ての市場が新規に創造されるわけではないですし、彼等の思い付きで商売が出来るのであれば、誰も苦労はしないでしょう。餅は餅屋で、個人もコアに集中すべきです。彼等がやらなければならないのは、民間企業やベンチャーが商売をやり易くする仕組み作り(規制緩和など)、あるいはインセンティブを与える税制改革などだと思いますね」とした。 |
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要約 8 すべてがIP化する問題 |
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IP(インターネット・プロトコル)が情報流通の標準として普及していることから、それを支持する意見が強いが、中島秀之氏(034)は「すべてのものがどのような形態でも流通できるようにしておく必要があるが、すべてをインターネットに統合するのは行き過ぎで、新たな技術の芽を摘む」とした。
池田信夫氏(037)は個人的な意見として、「『これから作る通信・放送のインフラはすべてIPをサポートすることを義務づける』という法律を作り、その代わり他の規制は全部やめる、というのがIP時代の究極の改革だと思う」とし、理由として「IPベースにしておけばいつでも開放できるし、実際には開放した方がコストが下がる」とした。
小池良次氏(043)は、池田氏のアイデアを「5年くらいの時限立法でいい」と言ったことの説明として、1)IP自体が何年主役でいられるかわからない。次のスーパースターの出番をなくしたくない、2)水平分離は米国が世界最大のコンテンツ輸出国に成長した原因で、ぜひ進めたい--と述べた。
池田氏(050)は、水平分離をどうenforceするかで、米国にはレッシグ教授のような「オープンアクセス派」とジョージ・ギルダーのような「非規制派」がいて、池田氏自身は後者に近く、事前規制として企業形態や免許制度で縛るのではなく、軽い規制として伝送プロトコルで縛り、自然と水平分離が進むように仕向ける--という案を示した。
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