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全日本証券研究学生連盟・証券ゼミナール大会CSR分科会

昨年(2007年)、12月14日、15日と、全日本証券研究学生連盟の証券ゼミナール大会で、指導講師をした。私が担当したのは、「日本における企業の社会的責任と企業投資のあり方」という分科会である。非常に興味深く、充実した経験であったので、そのことを報告しよう。

全日本証券研究学生連盟は、1951年(昭和26年)に中央大学、日本大学、早稲田大学、慶應義塾大学の4大学により、結成され、現在では全国32大学が加盟している。設立当初より、山一證券が後援していたが、1965年(昭和40年)の証券不況のあと、1966年(昭和41年)から、日本証券業協会・証券広報センターが後援している。各大学のゼミ、および、証券研究サークルが証券関係の研究を各大学横断の交流を通じて深める活動をしている。

ゼミナール大会は、その活動の主柱といっていいだろう。参加チームは、事前に、A4ワードで30枚から40枚程度の論文を提出し、当日は、2日間にわたって、討論時間、延べ10時間におよぶ、ゼミの他流試合をおこなう。

昨年度は、全7テーマが設定され、そのうちのひとつに、CSR/SRIを内容とする、本テーマも取り上げられたのである。

CSRの観点から、興味深い点が3点ある。まずひとつは、証券会社、証券業協会が随分古い時期から、地道に教育支援という形のCSR活動をやってきている、ということである。近年のCSRの潮流にものって、金融教育支援は最近活発なのだが、むしろ流行以前から、息長く地道に活動を続けてきており、その点は特筆すべきであろう。CSRの実効性という点で重要なことのひとつに、「一貫性」ということがあげられる。CSRを企業と社会の間の信頼関係ととらえると、企業の側に一貫したものがないと、信頼が得られない。その都度の流行にのった場当たり的なものでは、信頼は得られない。場合によっては、かえって見透かされて、不信感につながりさえする。サスティナビリティーはCSRの議論の中心概念のひとつだが、CSR活動そのものも持続性がなければならないのである。

2番目は、若い学生諸君が、このテーマを設定したということである。大規模なアンケート調査ということではないが、若い世代の学生諸君の興味・関心のありようを示す、ひとつのバロメーターといえる。このゼミナール大会全体で、26大学31団体570名の参加であった。そのうち、このテーマは参加12大学、20団体、96名の参加であった。参加団体数、参加人数が多いため、テーマ内で、さらに3ブロックに分かれ、私はそのひとつのブロックを担当した。もともとは、「証券研究」学生連盟ということであるから、証券以外に少し広くとらえても、金融・ファイナンスを主なテーマにするゼミ、サークルに属する学生諸君である。そんな学生諸君が、これだけCSRに関心をもったということに注目したい。もちろん、SRIは金融・ファイナンスの一分野でもあるが、今回はSRIだけに限った内容ではなく、CSR全般が議論されたのである。

さて、最後に議論そのものはどうだっただろうか。

論点としては、CSRにかかわるほぼすべての論点があげられたといっていいだろう。また、アプローチの態度として、はなからCSR肯定だけでなく、クリティカル(批判的)な視点もあった。また、自分たちが学生であり、基本的に実際の社会を知らない中で、CSRを論じており、現実の場ではどうなのかということに対する謙虚な姿勢も印象的であった。昨今、大学生の学力の低下がいわれることもある。しかし、このゼミナール大会の印象からは、総じて今の学生諸君もがんばっているではないか、と感じた。

討論された論点として、私なりに集約すると、順不同で以下のようなものがあった。

  • CSRは規制か自律か
  • 地域とCSR、地域的SRIとしての地方銀行の活動、コミュニティー投資
  • 中小企業のCSR、中小企業のSRIとしてのマイクロファイナンスの可能性
  • CSRについての日本と世界との認識ギャップ
  • SRI受託者責任と運用パフォーマンス
  • 企業の再定義・企業とは何か

10時間の集中討論は短時間ではないが、そうかといってその中で、これらの問題が討論しつくされるというものではない。中途半端に終わったり、未然感が残るところもあって、当然である。しかし、CSRや人間社会というものの本質に踏み込む、深みのある問題提起につながるものもあり、一方、幅広い目配りもあった。

実ビジネスの渦中でCSRにかかわっている皆さんにも、あらためてこうした論点でCSRを考えてみていただくのも、意味深いと思う。

参加した学生諸君は、昨年時点で、主力は3年生であり、一部4年生もいた。今春、社会にでた人もいるし、来年という人もいる。学生時代にCSRについて考えたことを種火にして、その思いを消してしまうことなく、実社会でがんばっていただきたいものである。

写真 江畑徹
江畑 徹 (えばた とおる)
SPRING総研代表/多摩大学統合リスクマネジメント研究所フェロー
1955年新潟県生まれ。
同志社大学経済学部卒業。
大手証券会社を経て、2004年多摩大学大学院経営情報学研究科修士課程修了。
2007年多摩大学統合リスクマネジメント研究所から「国連グローバル・コンパクトと日本企業のCSR」発表。
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