“形だけのCSR”になっていませんか?
企業とNPOの有機的なコラボレーションがCSRの実践につながる
企業の社会性を形づく るものとは
[企業のCSR 担当者の嘆き]
「レポート作成時期、疲れきってしまって……」。こう話すのはCSR関連部門の社会・環境レポートの担当者。また「 NPOなど民間団体への寄付を続けているが、一方的に資金支援をする・されるのみの関係性になってきているし…… 」。こんな声もよく聞かれる。いま一度、現状を振り返ってみていただきたい。
- 多大な労力と費用をかけて得られるものは何か?
- 本業と結びつかない社会貢献になっていないか?
- ステークホルダーに明確に伝えたいことが伝わっているのか?
[形だけのCSRにしないために]
CSRは本業そのもの。しかし、「CSRは本業そのもの、それは理解しつつも、方針にとどまらず、実際に何から始めたらよいものか……」と悩まれている担当者の声をよく耳にする。経済性、環境性にかかわる取り組みは目に見える形にしやすいが、社会性の観点を含め形にしていくのは難しい。売り上げだとか、環境保全対策による環境に影響を与える物質の低減などのように定量的な指標では表しにくい。改めて、企業は社会の一員であることを考えてみよう。顧客や株主のみならず、地域社会を含めあらゆるステークホルダーとの関係性を見すえ、実践につなげていくことが求められる。
CSRビジョンに基づく実践=ステークホルダーとのコラボレーション
本業との関連性を踏まえ実践につなげていくためには、CSRビジョンのもと、ステークホルダーと合意したより良い社会づくりのために自らの事業活動の発展を通じてコミットメントする仕組みをつくっていく必要がある。その方法の一つとして、同様のビジョンをもつNPOなど民間団体とのコラボレーションによる取り組みが挙げられる。昨今、キーワードとしてよく聞かれるようになったコラボレーション。実践するには以下の点がポイントとなる。
- 自社のビジョンを社員一人一人が物語として伝えること
- 有機的なプログラムを創っていくこと
CSRの行動指針などが掲げられているが、社員一人一人が自身の言葉で語ることができているだろうか。どのような社会をつくっていきたいのか、ステークホルダーに伝わる言葉で伝えなくてはならない。
物語を伝えていくこと、それ自体がコラボレーションプログラムにつながる。それでは、どんな取り組みが効果的であろうか。いくつかのパターンが想定される。
- 社員を巻き込むプログラム
- 本業を補完するプログラム
例えば、社員を巻き込むプログラムとしてファンドプログラムが挙げられる。自社のCSRビジョンに基づき、社員が支援したいと考えるNPOなど民間団体に、業務に関連した人的、知的支援を行う。この際、あくまでも本業と関連した取り組みによる支援とし、個人的主義志向で支援するものとは切り分けていくことが必要であろう。さらに、会社全体として支援するマッチングファンドなどにより、物的・資金的支援を広げていくことが可能である。
また、本業を補完するプログラムについては、ナイキのグローバルアライアンス(*1)のように、企業、公共組織、非営利団体で組織をつくり、世界各地の製造工場で働く従業員の労働環境とコミュニティーの改善を目的とした取り組みが一例として挙げられる。
このようなプログラムを検討するにあたっては、企業とNPOが互いにwin-winの関係をつくっていくためにプロセスを共有することが重要である。また、コラボレーションにあたっては、企業側からNPOなど民間団体側の実態が見えにくいという声も聞かれるが、有機的なコラボレーションのためにNPOなど民間団体側にも魅力的な情報発信を期待したい(*2)。企業側にも同じことが言える。互いに想いを伝えることではじめて有機的な関係性をつくることができるのである。
コラボレーションによって得られるものは
社員一人一人がステークホルダーとの取り組みを物語として語ることができる、それがCSRの確立につながる。そして、あらゆるステークホルダーとの有機的な関係性をつくっていくそのプロセス自体がCSRの実践につながる。さらに、企業に魅力的な人材をつくり、魅力的な組織づくりにつながっていく。それが外部評価へとつながっていくことになる。CSRに取り組んでいくことがコストや業務の負担になるという声も耳にすることがあるが、ステークホルダーとの有機的な関係を構築することができれば、持続的な取り組みとなり、中長期的にプラスの効果を生むことは間違いない。
(参考)
- *1
- 「nikebiz.jp」
- http://nike.jp/nikebiz/global/giving_global.html
- *2
- コラボレーションを促進する参考サイトの紹介:「ボランタリーライフ.jp」
(各地で積極的に活動している NPO など民間団体が、ブログを活用して日々の活動を魅力的に情報発信、企業とのコラボレーションにつなげている コミュニティー) - http://www.voluntary.jp/
- 大川 陽子 (おおかわ ようこ)
- NTTデータ経営研究所
社会・環境戦略コンサルティング本部
シニアコンサルタント






