HOME > CSRを考える > 地方発CSR JCの挑戦

CSRを考える

Contents 一覧ページへ移動

地方発CSR JCの挑戦

1.マイ箸運動

地方でCSR関連の講演をお引き受けすることが多くなったが、先日は茨城県ひたちなか市のJCにお招きいただき、CSRに関しての熱い議論をする機会を得た。ご存知の通り、JCは母体が日本青年会議所であり、それを構成する青年会議所が日本全国にある。会員は地元の若手経営者であり、30歳代、40歳代で地元の家業を継いだり、起業している経営者の集まりである。

写真 マイ箸
図1 マイ箸

講演には50人ぐらいの方々が来られただろうか。熱心に聞いていただいて質問も相次いだ。講演後、会員の食事会に招かれご一緒することになった。夜の10時を回っていたのだが、30人以上おられただろう。食事会の最初に一言ご挨拶をさせていただいたのだが、驚いたのはその後である。やおら全員がかばんや懐からきれいな包みを取り出し、くるくると開くと、なんと全員がおそろいの「マイ箸」を持っているではないか。(図1)皆さん、さも当たり前のようにマイ箸で料理をつつきだした。30名以上の宴会で全員がマイ箸を使う光景にただ驚かされた。

2.OTONANOSENAKAプロジェクト

ひたちなかJCの清水理事長に伺ったところ、会員全員がマイ箸を持っているそうだ。彼によると、その背景は以下のようなことであるという。

「全国組織の日本青年会議所が全国の青年会議所と連携し、『地球温暖化アクションプラン』という活動を始めています。地球温暖化防止は早急に取り組まなければならない重要なテーマで、洞爺湖サミットも開催されたことから日本の環境問題にイニシアチブを発揮する好機だと考えました。そこで全国の青年会議所から、誰でもできる具体的でわかりやすいプランを今年募集しました。391件の応募の中から3つの案が選定されました」(図2)

決定!2008年度地球温暖化防止アクションプラン
図2 地球温暖化アクションプラン
プラン名称 内容 応募者 CO2削減見込
自転車で
-6%
自転車の年間走行距離を自転車等の利用で昨年比6%減らす。年間約1万キロ自家用車を使用しているとした場合、年間600キロ(月間50キロ)自転車を利用する。 大阪ブロック
大東青年会議所
尾崎洋一君
1人当たり
年間155kgのCO2排出量削減
月ほたる 月2回1時間程家庭の照明やテレビを消し月明かりやロウソクの灯火で過ごす。 新潟ブロック
柏崎青年会議所
石口浩和君
1人当たり
年間5.5kgのCO2排出量削減
「OTONANO
SENAKA」
運動
マイ箸、エコバッグを持参し、割り箸やレジ袋を使用しない。食べ残しをしないよう、適量を注文する。 応募者多数 1人当たり
年間122kgのCO2排出量削減

3つの活動案は図の通りであるが、このうち三つ目のOTONANOSENAKA運動でマイ箸、エコバックを持参する活動をひたちなかJCでも実践しているそうである。

「OTONANOSENAKAとは、なかなかユニークな名前の運動ですね」と問うと、理事長はさらに説明を続けてくれた。

「この運動は大人として当たり前のことを当たり前にやろう、ただそれだけのことです。わたしたちは未来の大人のために『OTONANOSENAKA運動』を実践しようと思っています。マイ箸運動のほかにも、例えば『食べ残しをしないようにしましょう』『家族との約束を守りましょう』『マナーを守りましょう』といった活動もしています」とのことであった。

マイ箸は、年間240億本を消費する割り箸の節約につながる活動で、環境意識の高い女性がおしゃれなデザインの箸を使うことで静かな広がりを見せている。しかし、男性でマイ箸を使っている人は、わたしのお会いした中でこれまで見たことがない。

3.ロックフェスティバルとパトカー型営業車

清水理事長はさらに説明を続けてくれた。

「ひたちなかJCは毎年ロックフェスティバルをひたち海浜公園で開いています。JCはこれの支援を続けています。毎年15万人程度が集まる大きなイベントですが、特に10歳代、20歳代のバンドも全国から招いて参加してもらっています。厳しい予選を勝ち抜いての参加ですので「ロックの甲子園」といったところでしょうか。これは青少年育成につながる活動だと思っています。また、ロックフェスティバルにあわせ、ひたちなか市は街づくりのコンセプトの中にも「音楽」を組み込んでいます。県や市とも連携して、路上のちょっとした広場でミニライブができるように街並みを設計したりしています。ひたちなか市が『音楽の街』として有名になることが夢です」

すると、隣に座って黙って聞いていたJC会員の一人の方が、こんな話をしてくれた。

「わたしは小さな警備会社を経営しています。これまでは仕事の傍ら、植林を手伝ったりしてきました。しかし、もっと本業を通して社会の役に立つことができないかと必死で考え、営業車をすべてパトカーに似せて作り変えました。もちろん、あまりに似せすぎて違法になってしまってはいけないのでちゃんと当局の許可はとっていますが、この営業車が街を走ることで防犯効果が上がっているのではないかと考えています。これってCSRですか?」

この人を皮切りに、他の会員の方々が自社で取り組んでいることを次々に話され、さながらCSR自慢合戦のようになっていった。

4.CSRの勘所に合致

わたしはお話を伺っているうちに、ひたちなかJCのCSRへの取り組みが、実はもっとも難しい「組織へのCSR意識浸透」のお手本を忠実に実行していることに気づかされた。

第1点目は、なるべく多くの人が参加できる体験型の活動をまず行うこと。これは大企業でも当てはまるが、CSR活動を始めたばかりの組織で、最初から大きな投資が必要で、社員の時間的負荷が大きい活動は頓挫しやすい。誰でも簡単に体験できる施策を考え、「CSRってこういうものなのか」といった感覚をまず組織構成員に体感してもらうことが大切だ。それがきっかけとなり組織に広くCSR意識が浸透していく。ひたちなかJCでは、まずOTONANOSENAKA運動で、この体験型施策を成功させている。

第2点目は、本業を通した社会活動を行っている点である。これはサステナブル(持続可能)な活動を行うには必須のことである。社会と自社(組織)の両方にメリットがあることが長続きするポイントになる。本業を通して社会的に意味ある活動を行うわけであるから、当然社員の参加が多くなる。取引先や顧客からそうした活動を褒められて感動しない社員はいない。先に紹介した警備会社の例に明らかなように、こうした取り組みは社員にとっても日常の話題に上りやすいユニークなアイデアである。

第3点目に、これがもっとも大事なことだが、一緒に活動を行っている仲間を誇りにして、明るく、楽しく、手作りで活動を続けていこうとしている。それによって新しく参加した者がみな感化され、仲間と、そして何よりもひたちなか市に誇りを持ち、何とかその地域に貢献しようと真剣に考えるようになる。これはCSR活動が、それを行う組織や自分自身への肯定、誇りにつながり、さらにその活動が活性化されるというCSRの良循環構造に入っているのである。

ひたちなかJCが、そして全国のJCがこれからどのようにCSRに取り組み、地方活性化に取り組むのか、その挑戦を静かに見守りたい。

写真 小河光生
小河 光生 (おがわ みつお)
クレイグ・コンサルティング 代表取締役
1964年東京生まれ。早稲田大学卒業後、大手自動車メーカーを経て、91年にピッツバーグ大学経営学修士(MBA)取得。同年、三和総合研究所に入社。00年にPwCコンサルティングに移籍。現在はIBMビジネスコンサルティングサービスパートナーおよびクレイグ・コンサルティング代表取締役。組織論・人材活性化論が専門分野。
おもな著書に『分社経営』(ダイヤモンド社)、『戦略コンサルタントビジネス・スキル・ブック』(東洋経済新報社)、『図解持株会社とグループ経営』(同)、『CSR 企業価値をどう高めるか』(日本経済新聞社=共著)など。
クレイグコンサルティング http://www.craig.co.jp
ページの先頭へ

NIKKEI NET