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国連との連携強化で存在感高めるISOとGRI(1)

CSRのすべてではないことを認識した上で活用を

昨年10~11月にCSRに関する2つの重要な動きがあった。CSR報告書などの持続可能性報告のガイダンスを発行するGRI(Global Reporting Initiative)がガイドライン第3版(G3)を発行し、社会的責任規格ISO26000の作成を進めているISO(国際標準化機構)が、ISO 26000の第2作業草案(WD2)を作成して各国に回付した。そして両者とも相前後して国連グローバル・コンパクト(UNGC)との連携強化を発表した。人権、労働基準、環境、腐敗対策に関する10の原則を通じて企業市民活動を推進しているUNGCとの連携強化によって、CSRに関する2つの国際的な取り組みがまとまりをもってきた。ただし、これらはあくまで「優良企業のお手本」でありCSRのすべてをカバーするものではないわけで、こうした動きに過敏になって、とらわれる必要はない。現代の世界、地球が直面するさまざまの大きな課題は、広範な分野に存在しており、各国・地域や組織の文化的背景などもさまざまであり、また、その解決にはすべてを根本から問い直すような創造性や革新性が求められるなど、既存の枠組みには収まらない場合が多いからだ。

GRIの持続可能性報告ガイドライン第3版

持続可能性報告ガイドライン第3版を発行したGRIは、国際的なサステナビリティ・レポーティング(持続可能性報告)のガイドライン作りを使命とする、オランダに本部を置くNGOでUNEP(国連環境計画)の公認協力機関だ。このガイドラインは、日本でも環境報告書、サステナビリティ報告書やCSR報告書など、環境や社会面の報告書を公表している企業の多くが参考にしている。

表1にあるように、これは従来の版と比べてかなり大胆な改善や変更が行われた。たとえば「GRIアプリケーションレベル」というGRIガイドラインにどこまで沿っているかという6段階のレベルが設定され、GRIが有料でそのチェックを行うサービスを開始することになった。

表1 GRI持続可能性報告ガイドライン第3版(G3)の骨子
名称 GRI サステナビリティ レポーティング ガイドライン2006
( Sustainability Reporting Guidelines Version 3.0、略称“G3”)
参照ウェブサイト www.globalreporting.org/ および http://www.gri-fj.org/
発行年月 英文版2006年10月5日、和訳暫定版2006年11月29日
発行元 GRI(Global Reporting Initiative)、日本ではGRI日本フォーラムが翻訳・販売
特徴
  • サステナビリティ報告を行うためのガイドライン(サステナビリティ報告は、経済面、環境面、社会面から通常、ウェブサイト、冊子などによって主として対外的に報告すること)
  • 報告 すべき内容の作成・開示方法が対象で、そのための社内の仕組み(管理体制)にはあまり触れていない
  • ① GRIアプリケーションレベル というGRIガイドラインにどこまで沿っているかという 6段階のレベルが設定され、GRIが有料でそのチェックを行うサービスを開始
  • 開示を推奨する各指標ごとの詳細な② 指標プロトコル(データ作成ルール) を設定
  • ③ セクターサプルメント(業種別補足文書) を設定。2006年11月末現在で金融 、物流・運輸、鉄鋼 ・非鉄金属、 旅行 、通信、自動車の各業界( ただし自動車業界用は未完成)および行政機関
  • ガイドラインと以上①、②、③が一体のものとして扱われる
和訳暫定版冊子の構成(セクターサプルメントは含まれていない) RG:サステナビリティ レポーティング ガイドライン
  • 序文
  • 持続可能な発展および透明性の責務
  • 導入
  • サステナビリティ報告の概要
  • パート1 報告書内容、品質、バウンダリーを確定する
    • 報告書内容の確定に関するガイダンス
    • 報告書内容の確定に関する原則
    • 報告書の品質確保に関する原則
    • 報告書のバウンダリーの設定に関するガイダンス
  • パート2 標準開示
    • 戦略とプロフィール
    • 経済(Economic)
    • 環境(Environmental)
    • 社会(Social)
      • 労働慣行とディーセント ワーク
      • 人権
      • 社会(Society)
      • 製品責任
  • 一般的な報告留意事項
    • データ収集
    • 報告書フォームと頻度
    • 保証
  • AL: GRIアプリケーションレベル
  • IP: 指標プロトコル 経済(EC)
  • IP: 指標プロトコル 環境(EN)
  • IP: 指標プロトコル 製品責任(PR)
  • IP: 指標プロトコル 労働慣行とディーセントワーク(LA)
  • IP: 指標プロトコル 人権(HR)
  • IP: 指標プロトコル 社会(SO)
活用の例 海外でも事業活動を行う企業や、世界から投資を募りたい企業にとっては、国際的に認知されたサステナビリティ(CSR)報告書のあり方がより整理された形でわかる。
要注意点 第3版では「GRIアプリケーションレベル」というガイドライン適用の6段階レベルが設定されたが、① 高いレベルで対応すること ②第三者のレベルチェック、GRIのレベルチェックを受けること―― について無言のプレッシャーが組織にかかる可能性が。コスト高となる可能性も。
三者保証(報告書の信頼性についてのもので、レベルチェックとはまったく別)を受けるとアプリケーションレベルは、一段階高いランクとなる。保証を受ける無言のプレッシャーが組織にかかる可能性も。

CSR報告書から将来の働きがいを想像する

そして、この第3版ガイドラインが発表された10月初旬のGRIアムステルダム会議の場で、 GRIと国連グローバル・コンパクト(UNGC)は、戦略的アライアンス(提携)を結んだことを発表した(*1)。そのねらいは、「世界の民間セクターに、包括的、組織的、統合的で(ほぼ)普遍的に受け入れられる責任ある事業戦略を標榜する機会を提供する」というもので、両者は、企業や企業責任関連組織に対し、両者による相乗効果ある取り組み基盤への支援を促すため、提唱活動やその他の協調的な取り組みを実施するとしている。この提携後の具体的成果として、UNGCへの参加企業が行う進捗報告に GRIガイドラインを使うためのツールも同時に発表された(*2)。これは、 UNGC参加団体が10原則実施の進捗状況に関する報告を行う上で、 G3ガイドラインをどのように利用すれば、 UNGCの義務を果たせるかを示すものとなっている。(続く)

(参考)

  • 拙稿「GRIガイド3版、 ISO14063、 ISO26000が続々進展」
  • 『月刊アイソス』2007年 2月号(システム規格社)
*1
http://www.unic.or.jp/globalcomp/news/061114.htm
http://www.unic.or.jp/globalcomp/news/pdf/alliance2006.pdf
http://www.globalreporting.org/NewsEventsPress/PressResources/PressReleaseUNGC-GRI.htm
*2
http://www.unglobalcompact.org/docs/communication_on_progress/4.3/Making_the_connection.pdf
写真 森哲郎
森 哲郎 (もり てつろう)
東洋経済新報社勤務、株式会社KPMG審査登録機構を経て2006年4月に独立。ISO14001の審査のほか、環境/社会報告書、CSRやロハス関連のコンサルティングなどに従事。主な著書に『ISO社会的責任(SR)規格はこうなる』(日科技連出版社)、『ECS2000このように倫理法令遵守マネジメントシステムを構築する』(日科技連出版社=共著)、『CSR入門講座 第2巻推進組織体制を構築する』(日本規格協会)がある。CEAR登録主任環境審査員。
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