地球環境保護は企業活性化への道
環境を守るために企業に求められていること
近年、様々なメディアで地球環境の悪化の様子が取り上げられ、世界中で早急な対応が求められるようになってきています。例えば、元米副大統領アル・ゴア氏が地球温暖化問題の深刻さを訴えているドキュメンタリー映画「不都合な真実」の興行収入は、約4,908万ドル(約60.3億円)(2007年6月時点 BoxOfficeMojo調べ)に上り、ドキュメンタリー映画興行収入としては米国史上歴代3位にあたります。この数字だけを見ても地球環境への注目の高まりを顕著に見てとれるでしょう。
こうした流れを受けてか、企業や個人レベルで様々な分野で環境に関する取り組みを実施する姿を目にする機会が多くなってきましたが、本当の意味での環境への取り組みとは何だろうかと考えさせられる例もあります。先日筆者が目にした光景ですが、昼食に行こうとしている従業員が上司に呼び止められ、「ミーティングルームの電気がついたままだから消してきてください、今月はグリーン月間です。」と注意を促されて電気を消しに戻っていきました。その従業員は、なぜ電気を消しに戻ったのでしょう?「電気をつけっぱなしにしておくと、エネルギーの消費の増加につながり、温暖化を進めてしまう」から?それとも「上司に注意を受けた」からでしょうか?また、上司の方も「グリーン月間」だから注意したのでしょうか?来月になったらどうするのでしょうか?
経営者が明確な環境ポリシーを策定し、新しい環境への取り組みを打ち出しても、末端の事業所/工場の従業員にとってはまた新しい負荷業務が増えたとネガティブなとらえ方をしているケースが多々あります。ましてや海外の事業所/工場から見ると、日本の本社がまた面倒なことを言ってきていると感じているはずです。こうした「やらされ感」をなくし、当たり前のこととして自発的に取り組む姿勢にしていくにはどうすればよいのでしょうか?筆者はそのために環境におけるインターナル・マーケティングとリテラシーの向上が不可欠であると考えます。
環境インターナル・マーケティングの重要性
企業は事業を円滑に進める上で、顧客を知り、顧客の期待にこたえるためにマーケティングを実施します。同時に、どんなに立派なビジョンや優れたマーケティング戦略、優れた製品が用意されていたとしても、社内で理解/共有されていなければ顧客にその価値を伝えることはできないという観点から、インターナル・マーケティングを実施します。インターナル・マーケティングとは、従業員に対して情報提供やトレーニングを実施し、マーケティング戦略についての理解を促して、さらなる顧客満足を提供するための動機づけをしていく取り組みです。
環境への取り組みに関しても同様に環境リテラシーを深めるため、環境インターナル・マーケティングを実施して社内の環境への取り組みの理解を徹底し、ポリシーを浸透させることが重要になります。この場合、一部の従業員や関連する部門の人々のみを対象とするのではなく、グループの全従業員ならびにその家族を巻き込んでいくことが重要になります。そのためには、明るく楽しく広がりを持った運動としてのインターナル・マーケティングを実施していく必要があります。
地球環境の悪化を食い止めるために一人ひとりが何をしなければならないのかは皆わかっているはずです。それを行動に結びつけるためには、従業員が家族も含めて自分たちの身体をケアするように地球のことを思い、守っていくすべを企業から発信していくことが重要になってきます。
環境への取り組みを習慣にする秘訣
食後の歯磨きを嫌う子を持つ親は、虫歯にならないようにどうにかして歯を磨くようにさせようと懸命です。なぜ磨かなければならないかを教え、歯磨きが習慣になるように褒めてあげたり、共に歯磨き競争をしたりと、楽しく負担にならないように知恵を絞ります。そうすることでいつの間にか歯磨き習慣が身につき、意識せずとも行えるように人は変わっていきます。環境への取り組みも同様に、やらされるのではなく、習慣として身につくまでにしていくことが重要ですが、ここで問題となるのは、どのようにしたら習慣化できるのかということです。
最近メタボリック症候群という言葉が急速に普及し、「ビリーズ ブートキャンプ」が異例の100万セットを超える売り上げを記録しました。月に 1万セット売れればヒットと言われるなか異例の大ヒットです。ブームとなった理由は、ビリーさんと周りのエクササイズをしている方々のテンションが高く、見ている側も無意識にテンションを高められるという理由だそうです。すなわち、「やらなきゃならない」義務感でなく、「明るく楽しい」お祭り感覚でダイエットを実行できる点にあるのです。
環境リテラシーを高めるためには、今後こうした楽しいお祭り感覚が盛り込まれた取り組みが求められていくのではないでしょうか?楽しんで参加しているうちに、従業員とその周りの家族が、地球のことを自分のことのように考えられるようになる仕組みを企業から発信する。それによって環境への取り組みが活性化することで企業自身の企業価値向上にもつながっていきます。
地球温暖化とは、進行速度を遅くすることはできても完治することは難しい重病ですが、今からでも決して遅くはありません。楽しみながら環境への取り組みを習慣化していく努力は、企業がその運動をほんの少し後押ししていくことで必ず大きな奔流となっていくはずです。環境というテーマは誰もが反対することがなく、使い方によっては全社に横串を通し、組織横断的に活性化させていくことのできる極めて有効なテーマと言うことができます。こうしたテーマを基に企業の求心力を高め、同時に従業員一丸となった大きなウェーブを起こすことも今後の企業には必要になってくるでしょう。
- 三村 経親 (みむら つねちか)
- 1975年 東京生まれ
2001年 専修大学大学院 経営学研究科 管理会計専攻 卒業
PwCコンサルティング 入社
【現在】
IBMビジネスコンサルティングサービス 戦略コンサルティングサービス 企業変革コンサルティングチーム IBMグリーンコンサルテーションに所属し、CSR/環境の領域にて自身の経験、IBMの実績を踏まえたコンサルティングを実践している
【専門とする経営テーマ】
社会的責任経営(CSR経営)、環境経営戦略、環境ガバナンス、環境リテラシー、環境戦略実現のためのIT活用、IT戦略
IBMビジネスコンサルティングサービス株式会社 CSR/環境経営戦略サービス概要
http://www-935.ibm.com/services/jp/index.wss/consultantpov
/bcs/a1027607?cntxt=a1010181






