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企業のCSRによる「学問・教育」支援

国の財政再建の一環で国立大学を支える基幹的な財源として国が支出する運営費交付金が毎年1%ずつ減らされる一方で、評価などに基づく競争的資金へのシフトが進行するなど、法人化後の国立大学には競争原理の大波が押し寄せ、大学経営にも大改革が迫られている。国の教育予算を考える指標として、先進諸国の国内総生産(GDP)に占める教育機関への公的支出比率を見ると(別表1)、アメリカの5.4、フランスの5.8、イギリスの5.1に対し、日本は3.5で、OECD平均値の5.2以下の水準である。これを大学・大学院の高等教育に限定すると、アメリカの1.2、フランスの1.1、イギリスの0.8に対し、日本は0.5で、これらの国々やOECD平均の半分以下である。このような現状を踏まえ、「人材立国」、「教育再生」の政策の実現のためには諸外国との比較の中で予算拡充についても実現の方向性が強く望まれているところである。

別表1

一方、教育予算のあり方について様々な論議がなされており、運営費交付金の削減がこのまま進めば大学間格差が拡大し、極端な競争的配分を行えば、87の国立大学のうち47校が経営破綻するという試算や、実用研究偏重や過度の成果主義で基礎研究や教育が滅びるのではとの指摘も出されている。また、私立大学側は、学生の7割強が私大なのに、国の助成金は国立大学の3割以下であり、私学助成金を増額すべきだという主張をしはじめている。これらの主張も教育予算が増加しなければ、結局配分の問題に帰結する。

教育予算の拡充については財政再建路線の壁は厚く、まず自助努力が先であるとの意見が優勢で国の高等教育予算が拡大されることは当面難しい状況にある。今後ともこの働きかけを継続するべきであるが、新たな対応策を考える必要がある。

それでは新たな対策とは何であろうか? 先述した論議にもあったようにこれまで教育、特に高等教育については国立、私立を問わず大学の費用を担うのは国と保護者(家計)という前提で議論が行われてきたが、そのフルーツである卒業生を一番活用してきた企業は費用の担い手としてどのような役割を果たしてきたのだろうか?

確かに産業界からは日本経済団体連合会や経済同友会などから大学への具体的な提言がなされており、大学教育の質の保証として卒業生の品質を高めよとか、イノベーションを起こせる人材育成や国際社会で活躍できるリーダーを育成せよとか、世界トップレベルの教育水準を目指す大学院教育改革などの文言が並んでおり、その要請は大学がまさに企業の予備校であるかのような内容である。

国と保護者(家計)が担ってきた教育のフルーツである卒業生を一番活用しているはずの企業が「教育」に関しての財政的な負担もなしに、このような総花的で戸惑うような多様で過大な要求を大学サイドに浴びせるのは一方的とも思える。

これに対し、企業サイドからは、大学に対しては「産学協同」や「冠講座」など多くの支援を行っているとの反論が出ると思われるが、その大部分は個々の企業戦略の中で有効なジャンルや先端分野への支援というビジネスの延長であり、大学の中の応用研究、プロ養成、実学といったプロフィットセンターへの先行投資であり、基礎研究、学問、教育といったコストセンターへの支援はほとんど行われていないと思われる。

利益を追求する企業としての大学支援が上記のようなところに集中することはある意味で仕方がないことでもある。しかし、日本の教育予算の現状を考えると、教育財政は国や家計だけで支えきれる状況ではなく、企業が何らかの形で参画し支援する必要があるのではないだろうか。「人材立国」、「教育再生」は国の重要な方針であり、そのフルーツを一番活用している企業が単なる要求者ではなく何らかの支援者になるべきではないだろうか。「学問・教育」は危機的状況であり、もはや国と家計だけの問題ではなく、「環境」・「福祉」・「文化」と同様、企業が社会的責任(CSR)の一環としてとらえるべきではないだろうか。特にこのまま大学改革が進めば、言葉は悪いが絶滅種となるようなユニークで貴重な学問の支援者としての役割を果たすことが企業の社会的責任ではないだろうか。(図1)

図1 企業の大学支援について
山本 勝彦
山本 勝彦 (やまもと かつひこ)
独立行政法人国立大学財務・経営センター 監事
1971年東京大学法学部卒業後、三菱レイヨンに入社。76年大東京火災へ転職し、企業保険、総合企画、市場開発、販売開発、人材開発、広報などを経験。 2001年合併により、あいおい損保の理事・広報部長に就任し、経営調査、人事企画部を経て、06年7月より現職。広報部、人事部時代から企業メセナ、 CSRに関心が深く、ビジネスパーソンの働き方についての著書や取材も多い。
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