CSRリポートをめぐる動向
CSRリポートをどのように作成したらよいのだろうか。最近の動向を交えながら、CSRリポートのあるべき姿について、NPO法人サステナビリティ日本フォーラム代表理事の後藤敏彦氏が、企業のCSR担当者に発表を行った。
一般に読まれ始めたCSRレポート
CSRリポートを作成する企業の担当者の方に、まず念頭に置いてもらいたいことがあります。それは一般の方がCSRリポートをかなり見ているということです。
CSRリポートの冊子の発行部数以上に、企業のホームページにアクセスし、リポートを閲覧したり、ダウンロードする人が増えているようです。かつては「誰も読まない環境報告書」ともいわれました。しかし最近は、就職を考える学生や一般消費者など、企業の環境問題への取り組みや社会的役割を考えるツールとしてCSRリポートが着目され始めているのです。
大学の就職課には企業のCSRリポートが置いてあるところもあります。若いうちからCSRリポートを目にする機会が増えてきています。
結構、見られている。意外に読まれている。そういう前提に立ってCSRリポートを作成する時代になりました。CSRリポートについてのアンケート調査を行うと、「専門用語が多すぎる」「わかりにくい」といった反応が返ってきまします。一部のステークホルダーだけが見る時代ではありません。一般の方も読者対象として視野に入れて、平易な言葉でわかりやすく伝えていくことが求められていると考えます。
レポートの独自性に注力すべき
CSRリポートを作成するにあたって、参考になるガイドラインが2つあります。ひとつは、国際的なサステナビリティ・リポーティングのガイドラインづくりをしている非営利団体GRI(Global Reporting Initiative=グローバル・リポーティング・イニシアティブ)のガイドラインです。2006年10月に第3版が発行されています。サステナビリティ日本フォーラムでは、GRIガイドラインの和訳を行っています。もうひとつは環境省の環境報告ガイドラインです。2007年6月に「環境報告ガイドライン~持続可能な社会をめざして~2007年度版」を公表しています。
はじめてCSRリポートを作成する企業にとって、これらのガイドラインは非常に参考になるものです。ただし、ガイドラインは過去の事例をもとに作成しているものにすぎません。そのため、発行時にはすでに陳腐化している場合もあります。変化が早い時代ですので、ガイドラインはあくまで参考程度にし、CSRリポートの作成に慣れている企業は、ガイドラインにとらわれず、その企業ならではの独自性を打ち出す必要性があるでしょう。また、すべてガイドラインに沿って作成しようとすると、辞書のような分厚い報告書になってしまいます。重要な情報は網羅されていることが前提ですが、できるだけ簡潔にポイントを絞ったレポート作成を心がけるべきだと思います。
働き方と環境問題を意識したリポートづくり
CSRレポートの内容で留意すべき点について説明します。第一に、信頼を得るリポート作成のためには、企業のマイナス面についてもしっかり書くということです。ややもすると自社の都合のいいところばかりを取り上げがちです。ネガティブな部分についてもきちんと記述することで、読者から信頼されるリポートにしていかなくてはなりません。
第二に、働き方についての情報もできるだけ記載した方がよいということです。企業側からすれば働き方についての記述は必要ないと感じているかもしれません。しかし、企業でのワークライフバランスに対する読者の関心が高まっています。就職を考える学生の読者が増えていることからも、こうした配慮が必要になります。
第三に、企業の投融資にあたり、環境配慮が強く求められているので、その点にも触れることです。2004年に環境配慮促進法が制定されたため、CSRリポート作成にあたって留意する必要があります。
第四に、生物多様性についての記述があると良いでしょう。日本では1992年にブラジルのリオデジャネイロで行われた地球サミット(国連環境開発会議)にて採択された気候変動枠組条約については認知度が高く、地球温暖化対策に向けた記載は増えています。しかし、同サミットで採択された環境問題を考える上で重要な生物多様性条約については、日本の認知度が非常に低いのが現状です。日本は世界的に見て“生物多様性のホットスポット(宝庫だが危機に瀕している)”と呼ばれる場所です。世界で大問題となっている生物多様性について、CSRリポートに記載すると良いのではないでしょうか。
CSRリポートは、企業のマテリアリティ(重要性原則)が見えるものでなくてはなりません。企業がCSRを進めていく上で、何を重要視し、企業経営を行っているのか。それを明確化することが大切です。企業のマテリアリティをしっかり見せていけば、おのずとその企業ならではの独自性のあるCSRリポートになると思います。
- 後藤 敏彦 (ごとう としひこ)
- サステナビリティ日本フォーラム代表理事
東京大学法学部 卒業。東京経済大学現代法学部、非常勤講師、環境監査研究会代表幹事、サステナビリティ・コミュニケーション・ネットワーク(NSC)代表幹事、社会的責任投資フォーラム日本代表理事、グローバル・コンパクト・ジャパン・ネットワーク(GC-JN)運営委員。
政府環境関係各種委員会委員、日経環境広告賞審査委員、その他環境・CSR関係表彰制度審査委員。著書・論文多数






