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CSRを考える

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CSRを地域の誇りに

地域活性化とCSR

CSRをテーマに地方でお話をさせていただく機会が増えた。先週は愛媛県の松山市、その前は佐賀県の鳥栖市である(鳥栖市の講演録リンク)。

世間では大都市と地方都市との格差が問題となっているが、いざその地域に伺うと地元の商工会議所や青年会議所メンバーが、何とかその地域を盛り上げようと必死で頑張っていることがわかる。特に若手経営者が地域のためにと頑張る姿には、まだまだ日本の地方は大丈夫だと実感するものがある。彼らはCSRを勉強して地域の活性化につなげられないかと真剣に考えている。筆者は、CSRは何も企業だけのものではなく、地域が一丸となって行えばいまの日本の地域問題に取り組む端緒にしていけるのではないか、と考えている。

地域でCSRを語るときに、「CSRは都会の大企業が行うものであって地方の中小企業には関係ない」といった誤解を解くことから始めている。人が生活していくには、地域社会や組織などステークホルダーとの接点があり、地域においても企業誘致がうまくいかねば、雇用喪失、治安の悪化につながるし、その地域に住み続けたいと思う人が減れば、人口減少、地域文化の消失などにつながる。企業がステークホルダーを意識した経営を行わねば持続可能な存在でなくなるのと同じように、地域もそのステークホルダーを意識して活動していかねばならない。

CSRを難しく考えないように、ということも申し上げている。企業にとっては事業活動を通して税金を払い、雇用を創出することも立派なCSRである。多額の寄付や植林も立派なCSR活動であるが、そのような活動を行う一方でCO2をまき散らし、従業員を酷使しているようなことではCSRとはいえない。また、持続可能な取り組みでないものもCSRとはいえないと申し上げている。企業がもうかっているときに寄付をしても、業績が苦しくなると寄付をやめてしまう、といったことは望ましくない。そこで、「やらされ感」で義務的に行うのではなく、CSRは企業経営にメリットがなければならず、会社の幸せと社会の幸せが両立することを考えるべきである、つまり企業の本業を通した社会活動こそCSRの本質である、とご説明すると納得していただくことが多い。

地域ブランドと町おこしの違い

こうした基本的なCSRコンセプトを地域レベルではどのように理解すればよいか。

筆者は「地域ブランド」という言葉で説明するようにしている。つまり、地域ブランドを向上させて地域住民が誇りの持てる地域をつくることが「地域CSR」のありたい姿である。そこで、愛知県碧南市の取り組みを紹介することにしている。碧南市は徹底した環境・ゴミ対策を行っている。実に20種類以上にのぼるゴミ分別を実現していて、循環型の地域コミュニティをつくっている。注目すべきはこのゴミ分別、地域の住民の方が輪番制で行っていることだ。周期的にゴミ分別の当番がまわってくるのである。すると、「ゴミなんて捨ててしまえばみんな同じ」とゴミ分別に非協力的な人は、その地域に住みにくくなる。ゴミ分別という共通の活動が、住民同士の信頼感、連帯感を生むのである。こうした信頼感が高まれば、子供を1人で外で遊ばせたり、鍵をかけずにちょっとした外出をするなどが可能となり、ある種の防犯効果を持つことになる。つまり、地域民度が向上するのである。言い換えれば、社会にいいことを行えば、住民にもいいことが返ってくる、というWin-Winの関係をつくるのである。これは企業CSRで行おうとしている本業を通した社会活動、企業と社会のWin-Winの関係と本質は同じである。

地域ブランドの向上は、いわゆる「町おこし」とは異なる。

町おこしとは、観光客の増加を狙い、一時的な話題づくりを狙うことである。地域が1億円の“金の延べ棒”を買って観光に役立てることが典型だ。町おこしはコストであるから、なるべく低いコストで観光客に多くの金を落としてもらうこと(または観光客誘致)を狙う、すなわちコストパフォーマンスがポイントになる。資産は多くの場合物質的である。

地域ブランドとは、受益者はその地域に住む人々である。効果は長期の投資で現れ、金だけとは限らず、地域内の信頼感、その地域を思う心といった無形資産、ノウハウとなる。その成果は定住者の増加といった形で現れる。

ソフト価値に重きを置く

日本の多くの地域は「日本一の町づくり」を掲げるところが多い。事実、鳥栖市は「九州住みよい町No.1」を獲得しており、これはこれで賞賛されるべき活動だろう。

ただ、地方都市が一般的に「日本一の町づくり」を目指す際掲げる目標には、自然環境、交通インフラ、文化的施設、スポーツ振興などが多い。これらは確かにその地域のよさを示す特徴ではあるが、ハード的(物資的)なものが多い。筆者はむしろ、その地域のいいことはソフト的な資産に現れるのではないかと思っている。

たとえば、松山市は極めて高い節水型コミュニティを実現している。

もともとダムが小さく夏場には常に渇水に悩んでいた。地域住民は風呂の残り水を捨てずに、庭へのまき水や洗濯に有効活用するのが常識になっている。食事の際の使用水を少なくするため、各家庭が食器洗い機を購入する際に市の補助がある。こうした地道な活動が地域風土にまで高められて、人口1人あたりの水使用量は日本でも有数の少なさである。言うまでもなく、こうした節水型コミュニティは災害に対しても強い。

松山市といえば小説『坊ちゃん』の舞台であり、道後温泉といった有名な観光地がある。しかし、上記の節水型コミュニティといった住民の生活に根付くソフト資産はほとんど知られていない。こうした節水型コミュニティを形成するノウハウを体系化し、たとえば深刻な水不足に悩むオーストラリアに提供することができないか。住民の間に根付いた知恵やノウハウを社会問題解決に役立てる喜び、これが地域の目指すCSRではないかと考えている。

筆者はCSRとは「誇り」であると思っている。企業においては、従業員が自らのスキルや経験を社会問題の解決に役立てることで、仕事のやりがい、働きがいを感じていく。さらに、そうした環境を提供することができる会社に対する誇りにつながる。このような良循環をつくることで、CSRを企業価値向上につなげることができる。

地域においても同様である。地域の住民の誇りにつなげる。地域住民の方々にとっては常識的なことが、直面する社会問題解決の糸口になること、多くの地域住民の人が参画しかかわる活動が、安心・安全、子育て、環境対策などにつながること、やらされ感で義務的に取り組むのではなく、住民の中のソフト資産をそのまま社会問題解決へつなげる工夫、そうした試みがいま問われているのではないか。日本の多くの地域がこうした発想を大事にすれば、日本は新しい地域活性化モデルを世界に提唱できる。CSRは日本の誇りになる。

写真 小河光生
小河 光生 (おがわ みつお)
クレイグ・コンサルティング 代表取締役
1964年東京生まれ。早稲田大学卒業後、大手自動車メーカーを経て、91年にピッツバーグ大学経営学修士(MBA)取得。同年、三和総合研究所に入社。00年にPwCコンサルティングに移籍。現在はIBMビジネスコンサルティングサービスパートナーおよびクレイグ・コンサルティング代表取締役。組織論・人材活性化論が専門分野。
おもな著書に『分社経営』(ダイヤモンド社)、『戦略コンサルタントビジネス・スキル・ブック』(東洋経済新報社)、『図解持株会社とグループ経営』(同)、『CSR 企業価値をどう高めるか』(日本経済新聞社=共著)など。
クレイグコンサルティング http://www.craig.co.jp
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