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なぜいまCSRなのか? ~その5つの理由~

はじめに

ここ数年、あちこちで「CSR」という言葉を聞く。しかし、なぜいまわざわざ時間とコストをかけてCSRを進めなければならないのだろうか? 今回はその5つの理由について考えてみよう。

地球社会の危機的な状態——理由1

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、温暖化は人間活動によるものであると断言しただけでなく、「2℃」という数字を徹底的に議論した。なぜなら工業化以前と比べて地球平均気温が2℃上昇してしまうと、地球社会が壊滅的な状態に陥る可能性が方々から指摘されたからである。①世界の森林の40%が枯死、②アマゾンの3分の2が砂漠化、③水不足人口27億人、④中国で米の収穫量が78%、⑤モンゴルで小麦の収穫量が67%減少、⑥日本では90兆 8,000億円の資産が水没、⑦洪水防止に必要な費用は10兆円、⑧もし早急に二酸化炭素の排出を20%削減できなければ2010年ごろに気温が急上昇し、生態系や食糧生産に多大な影響が出る——など、枚挙にいとまがない。ちなみに、地球の平均気温はすでに0.74℃上がっており、このまま何の対策もとられなければ、2℃を超えるのは2028年ごろと予測されている。

「なんとかしなければならない」と思いながら「何もしない」人々、そして企業——理由2

多くの人々はこのことを知ったとき、「大変だ。なんとかしなければならない」と思うだろう。ところがほとんどの場合、思うだけで何もしない。なぜなら、人ごとだからである。しかし、温暖化を引き起こし、被害に遭うのは、まさに「なんとかしなければならない」と思いながら「何もしない」人々なのである。一人ひとりの環境負荷はある意味知れている。だが、それが企業という単位になり、大きな環境負荷をかけながら活動を行っているのであれば、話はまったく別である。果たして企業が「何もしない」ことは許されるのだろうか。

見放される企業——理由3

現在、CSRと並行してSRI(社会的責任投資)、PRI(責任投資原則)、UNEP-FI(国連環境計画金融イニシアチブ)など、投資や融資の面で大きな変化が起こっている。この変化を一言で言うならば、環境や社会に問題のあることを行っている企業に対して投資や融資を中止するのみならず、場合によっては融資を引き揚げることで、その企業の環境・社会破壊的活動をやめさせるというものである。現在、UNEP-FIには180社、PRIには200社が参加、PRIの投資規模は960兆円に及ぶ。また、SRIの規模は日本では0.4兆円であるが、アメリカでは231兆円、ヨーロッパでは40兆円と大きく拡大している。つまり、環境問題は「人ごと」で「何もしない」企業は今後、許されないどころか経営的にも生き残れなくなる方向に時代は動いているのである。

Win-Winの道——理由4

それでは、一体どうすればよいのか? まずは以上のような現状を把握し、企業に求められていることを正確に知らなければいけない。そのための鍵がステークホルダー・ダイアログ(利害関係者との対話)である。とりわけ、足元の従業員、会社のある地域の住民、取引先、NGO・NPO、専門家など幅広いステークホルダーと密に対話を行い、多様なニーズを把握し、これらのニーズに応えること。そして、できれば一度対話して終わりではなく、NGO・NPOのスタッフや専門家などを一定期間企業に雇うなどして、長期的にニーズに応える努力を続けることである。このような努力を継続することで、初めて社会のあらゆる方面から信頼を得られ、企業のブランド力も上がるだろう。すなわち、CSRをまじめにやる企業は、持続可能な社会をつくり上げるという最大の社会貢献ができるだけでなく、「信頼」という企業にとって何ものにも代えがたい利益を得ることができるのである。

ビジョンは実現する!——理由5

そして、もう一つ大切なことは「地球、未来」という大きな視点からビジョンを描き、会社全体で共有することである。たとえば、2025年の地球社会はどうなっているのかという未来予測をベースに、2025年の理想の地球社会、日本社会を考え、その実現に企業は何ができるのかという2025年の理想の企業の姿を社員全員で描いてみるのである。おそらく、厳しい地球の、日本の未来が浮かび上がってくるだろう。しかし、まさにそこにこそ本当のニーズがある。そのニーズに応えるべく、その企業がビジョンを掲げ、社員全員で共有できたとき、そこにはやりがいと希望に満ちあふれた社員たちがいることだろう。

ここに記したことは、非常に理想的に思えるかもしれない。しかし、いわゆる「成功者」と呼ばれる多くの人たちは、まずあるべき理想の姿を描き、それが実現した場面をイメージしながら、その実現のためにたゆまぬ努力を続けている。企業を構成しているのは一人ひとりの人間。企業も同じことができないはずがない。いまこそ理想を胸に刻むときだと思う。

写真 上村雄彦
上村 雄彦 (うえむら たけひこ)
千葉大学大学院地球福祉研究センター 准教授
カナダ国際教育局日加関係担当官、国連食糧農業機関住民参加・環境担当官、奈良大学専任講師、㈱CSR経営研究所主任研究員、千葉大学COEフェローを経て、現職。専門分野は地球社会論。著書に『世界の貧困問題をいかに解決できるか』(現代図書)などがある。
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