米国最新事情レポート
2007年BSRカンファレンス開催

- BSRカンファレンス風景
10月23日から26日にかけて米国カリフォルニア州サンフランシスコでBSR(Business for Social Responsibility;ビジネス・フォー・ソーシャル・レスポンシビリティ)の年次総会が行われた。BSRは、世界中のリーディングカンパニーに対して、社会的に責任のあるビジネス遂行に向けた解決策を提供する団体である。1992年にワシントンD.C.にて設立され、現在、サンフランシスコを本拠地とし、コンサルティング、調査、分析によって、社会的課題を解決する実践的な方法を会員企業に提供している。
毎年秋にカンファレンスを開催しているが、今年は50カ国から1,350人以上のビジネスリーダーが参加し、過去最大規模となった。今年の特徴について、BSRのCEOであるアーロン・クレーマー氏にインタビューした。
今年のカンファレンスの特徴は?
- クレーマー氏
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「カンファレンスの参加者がCSRを非常に前向きにとらえていることだ。CSRによって、一般市民や政府の考えを変えることができると考えている。10年前までは、さまざまなセクターからの圧力をいかに回避するかが関心事だった。それが、現在では、いかに新しい価値を創造するかに関心の軸が移ってきた。多くの企業がCSRの実践が経営体質の改良に役立ち、持続可能な成長につながると実感しているのだろう。
その結果、CSRは単にCSR部署の人々がかかわるものではなく、企業活動のすべての部門でCSRを意識して事業を遂行するようになった。CSRがメーンストリームとなり、経営と統合されたわけだ。
企業経営者、NGO、政策立案者など多くの参加者が、CSRは今後5年間の最も重要なビジネス戦略になると発言している。国際社会が抱え込んだ緊急課題に対して、ビジネスと公共政策とが統合されなければならない。つまり、気候変動や製品の安全性と、急速な産業化の影響とをいかに統合していくかが課題だ」
BSRカンファレンスの意義は?
- クレーマー氏
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「参加者は、サプライチェーンやステークホルダー・エンゲージメントなどCSRの核となるテーマについてさまざまな実例に触れることができる。また、CSRを志向する人同士のネットワーク構築の場ともなっている。さらに、カンファレンスが、新しいプロジェクトの立ち上げに寄与することも多い。例えば、カンファレンスでスピーカーが紹介したプロジェクトに対して、セッション後に、聴衆が参加したいと申し出、プロジェクトが推進されたこともある。そうした有機的なつながりを醸成するのがBSRカンファレンスの意義だ」
BSRに対して、アジア地域の企業からの関心が非常に高まっているようだ。
- クレーマー氏
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「アジアにとってCSRは重要だ。技術分野での新しいイノベーションは日本や韓国をはじめとしたアジア地域から生まれてくる。持続可能な未来に対するイノベーションこそがCSRには不可欠だ。先端技術によって、われわれの生活にさまざまなイノベーションをもたらす。例えば、気候変動防止には、代替エネルギーの開発が不可欠だ。そうした先端技術をリードする日本企業は重要な役割を担うであろう。
一方で、世界の工場となった中国における問題に苦しむ企業も多い。中国での課題を解決するためには、CSRで議論されていることが最も役に立つ。CSRに消極的でいると、世界的な基準や議論に参加できず、その結果、グローバルな企業競争から大きく遅れをとることは間違いない。BSRカンファレンスは、他社の事例から学ぶ場とともに、議論の場を提供するという役割を担っている」

- クレーマー氏
クレーマー氏との対話から、グローバルで議論されていることをいかにローカライズさせるか、が日本にとっての喫緊の課題だと実感した。日本は特殊だ、という独り善がりでダブルスタンダードを作ってしまうところにリスクの温床がある。欧州や日本に比べ、米国企業の取り組みは遅きに失した感が否めないが、グローバルに考え、ローカルで行動することにたけた米国企業の視点は、日本企業の世界戦略にとって示唆に富む。
今後、日本的経営の思想をCSRで議論されている観点からチェックし、世界に広めていくことが不可欠ではないだろうか。そうしないと、鹿鳴館時代の再現のように、洋服を着て踊ることが目的になってしまい、西洋からのCSRガイドラインという洋服を着て、その体裁を整えるための数字合わせに終始してしまう。クレーマー氏は、先端技術をリードする日本は大きな役割を担っていると主張したが、先端技術だけではなく、長期的な考え方をする日本的経営の思想も欧米スタンダード一辺倒の現代の世界に対して、イノベーションをもたらすに違いない。本質を見誤らないためにも、BSRカンファレンスのような国際会議の場で、積極的に日本的経営の美徳を発信するべきだ。
- 田邉 雄 (たなべ ゆう)
- 1967年東京生まれ。上智大学文学部卒、名古屋大学大学院経済学研究科修了。2003年から日本経済新聞社にて日経CSRプロジェクトを主宰。現在、日経アメリカ社ロサンゼルス支社勤務。共著に『やわらかい内部統制』(日本規格協会)。






