困難をチャンスに変える ~これから日本企業に求められるモノ~
脱貧困には食糧問題解決が鍵 (髙氏)
温暖化は食料生産にダメージ (末吉氏)
食糧の安定供給には分散重要 (吉里氏)
- 髙
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環境問題、食糧問題、貧困問題について議論し、共通認識を得たいと思います。まずは食料問題に関して。
- 吉里
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世界の穀物および油糧種子の消費量は右上りに上昇し2008/09年度の見込み量は26.5億トンですが、生産量も27.2奥トン(同年度)と上昇傾向です。近年は消費量が生産量を上回る年度が多く在庫数量が減少傾向でしたが、今年度は在庫が増加する見込みです。ただし消費量は持続的な増加傾向にあり在庫率は低下傾向です。持続的消費量増加の主要因は中国など新興国の食生活向上と世界的な人口増。近年はこれに加え世界最大の穀物生産・輸出国の米国で燃料用エタノール原料としてトウモロコシ需要が急増しています。
現在はまだ、それほど加速度的に需要逼迫(ひっぱく)は進行していませんが、主要生産国でひとたび天候不順が起きれば急激な需要逼迫を招く状況にあることは明確です。
- 髙
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オックスフォード大学のポール・コリアー教授によれば、食糧価格の高騰に苦しむ最底辺の10億人は今後もそこから抜け出さない。そこには、紛争があり、天然資源による収入の支配、劣悪な近隣諸国に囲われた内陸国であること、劣悪なガバナンスなどの4つのわながあるからだと言います。これらを解決し、負の連鎖を断つには、環境問題や食糧問題への取り組みが重要です。
5月に横浜で開かれたT-CADⅣ(第4回アフリカ開発会議)では、日本は「今後、5年間で、政府開発援助(ODA)を18億ドルに拡大する」というコミットメントを発表しています。そこには、アフリカの農業支援や開発支援も含まれています。
これらを踏まえて議論を進めたい。まず、環境問題は食料問題にどういう影響を与えているのでしょうか。
- 末吉
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温暖化が進むと、ダイレクトに被害が出はじめます。西日本の高温障害でコシヒカリがとれなくなるなど、お米の生産に支障が出ています。風水害もひどくなります。オーストラリアの大干ばつで小麦の生産が落ち、日本の讃岐うどんが値上げになったということがありました。さらに、バイオエタノールのために作付面積を増やそうとすれば、一般の耕地面積が圧迫を受けると同時、熱帯雨林や温帯雨林が壊されていくということも進みます。
- 髙
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政策として、福田ビジョンや実行計画も出てきていますが、その中身に関してはまだまだ抽象的だと思うのですが。
- 末吉
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日本は、われわれの環境技術は世界一だとか、省エネルギーは世界で一番だと言いますが、実は世界から見ると、日本はどこに行こうとしているのか見えない国なのです。例えば、昨年10月に世界銀行がCO2排出量の多い順から70の国を選び、その環境政策、環境方針を格付けしたところ、日本は70位中62位でした。これが、世界が日本を見る目です。私は、これは非常に政治の責任が大きいと思います。
- 髙
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農業政策についても、日本として先があまり見えません。ドーハ・ラウンドの交渉にしても、結局、閣僚会合は決裂しました。このように国としての政策が遅れているなかで、商社としてはどのような取り組みを行っているのでしょうか。
- 吉里
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食料問題の根本には「確実かつ持続的な消費量増加による需給逼迫のリスク」「地域ごとの食料需給のインバランス(食糧が無駄に廃業される地域と不足する地域が併在)」があります。食糧の安定供給システムをどう構築するかが世界的な課題であり、食糧業界にかかわる私どもも考えていかねばなりません。昨年当社は環境負荷を十分に精査した上で農業生産性向上を意図しブラジルでの農業生産事業に参画しました。
食糧需給インバランスの緩和には、主要生産国に集中している生産を分散させることが重要です。われわれもブラジルに続き今後も潜在生産国の状況を良く勉強し、リスクを精査した上でマネージ可能な場合には事業化するべく積極的に検討を進めていきたい。
社会貢献と事業性の両立へ (吉里氏)
日本を本当に夢のある国に (末吉氏)
負の連鎖断つには環境から (髙氏)
- 髙
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きょうのシンポジウムの大きな意義は本業を通してCSRを行うことの大切さを示すことです。商社のこのような取り組みというのは労働集約型の産業を創造することにもなり食糧・環境問題だけでなく貧困問題にも貢献するだろうと思います。
- 吉里
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既存ビジネスの延長にこだわらず、目標を定めその目標にどうやって近づくかが大事だと思います。目標への挑戦には私も同僚もやる気満々ですし、会社もサポーティブです。若手も農業生産について自発的に勉強したり、とても積極的です。社会貢献と事業性の両立という目標に向け、引き続き取り組んでいきたいと思います。
- 髙
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地球的課題に対して、国として、あるいは市民として何をやっていくべきなのでしょうか。
- 末吉
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私は、懇談会の議論のなかで再三、4つの視点ということを申し上げてきました。
ひとつめは、世界と危機感を共有しようということ。2つめは、産業界の取り組みも重要ですが、同時に市民社会や消費者が、自分のそれぞれの立場でどう取り組むべきかと考えていこうということ。3つめは、これは国と国、産業と産業、企業と企業の競争であり、個人レベルでも個人の生き方の競争であり、この国際競争に日本は負けるわけにいかないという視点を持つということ。4つめは、日本の若い人に、今日本という国の将来が明るく見えているのだろうかという問題設定です。大人のわれわれや、社会のリーダーの立場にある人たちが、若い人たちにとって日本という国を本当に夢のある国にする、非常に大きな責任があるということです。
温暖化対策のアクションを取ることは、非常に大きなコストがかかりますが、行動を取らないノンアクションのコストは、地球の消滅です。これはイギリスの前外務大臣のベケットさんの言葉ですが、アクションのコストは、ノンアクションのコストよりはるかに小さいのです。
- 髙
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環境・食糧・貧困というものは、それぞれがいろいろ影響し合っており、この負の連鎖を断つには、やはり環境の問題が重要になります。4つの視点の最後に、将来を明るくすること、夢のある国をつくるということをおっしゃいましたが、その通りだと思います。
たぶん、5年、10年ぐらいの間に、日本は大きく変わるだろうと思っています。ヘルマン・ハーケンという物理学者が使った"シナジェティクス"という言葉があります。例えばある容器のなかに水を入れておき、下から熱するとポツリポツリと泡ができます。ただし、その状態ではまだ水全体は動いていません。ところが、さらに熱していくと、ある温度を超えた瞬間に、ロール運動を起こし、その周囲を巻き込みながら全体が回り始める。これがシナジェティクスです。
今の日本の社会は、泡がポツリポツリ出ているような状態かもしれませんが、私は、5年、10年たった時に、大変大きな変化が起こってくると思っています。そういう意味で今、夢を持っています。それぞれ皆さん方も、会社に帰りましたら、ぜひともその泡を大きくしていただきたいと思っています。
- コーディネーター
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- 髙巌 氏
麗澤大学大学院国際経済研究科教授
京都大学経営管理大学院 客員教授
- パネラー
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- 末吉竹二郎 氏
国連環境計画 金融イニシアチブ特別顧問
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- 吉里格 氏
三井物産 食糧・リテール本部 飼料畜産部飼料穀物室長

- 大勢の参加者を前に、熱い議論が続いた






