HOME > イベントレポート > 富士通総研経済研究所ワークショップ Part4

イベントレポート

Contents 一覧ページへ移動

Part4:パネルディスカッション
アジア市場での日本企業のCSR戦略

写真 ディスカッション風景
左から、生田氏、金氏、
ウェルフォード氏
写真 ディスカッション風景
左から、中尾氏、永井氏、
廣塚氏、古賀氏

コーディネーター

  • 生田孝史 氏
    富士通総研経済研究所 主任研究員

パネラー

  • 中尾洋三 氏
    味の素(株) 広報・CSR部専任部長
  • 永井朝子 氏
    ソニー(株) CSR部CSRマネージャー
  • 廣塚謙良 氏
    TOTO(株) CSR企画室長
  • 古賀剛志 氏
    富士通(株) 環境本部 ストラテジーエキスパート
  • リチャード・ウェルフォード 氏
    CSRアジア代表・香港大学准教授
  • 金堅敏 氏
    富士通総研経済研究所 上席主任研究員
生田
これよりパネルディスカッションを始めます。最初に、パネラーの方々より自社のグローバルなCSR活動について、ご説明いただきます。

グローバルに展開、ローカルにも密着したCSR

中尾

当社は1909年にうま味調味料『味の素』を日本で発売してから、8年後の1917年にはニューヨーク事務所を設立、その翌年には上海出張所を開設と、創業の早い時期からグローバルに事業を展開してきました。

「国民の栄養不良を改善し体位向上に貢献したい」との願いを込めたこの商品をいまだに貧しい食生活を送っているアジアやアフリカの人々に届けるための販売体制を確立しています。

また、それぞれの地域の食文化を尊重しつつ、日本の技術力を活かした地域密着型の製品も開発・販売し、高い支持を得ています。

当社では、『味の素』を製造する際にできる発酵液を、液肥として生まれ変わらせ、原材料を生産している農家に提供しています。これにより、『味の素』の生産に使われるサトウキビの栽培に必要な窒素肥料の70%相当量をカバーすることができています。

農業分野のサプライチェーンの大きな課題である人権問題の背景には貧困問題があると考えます。原材料を供給する農家の収入を増やすキャッサバ芋の高収量栽培技術の普及プロジェクトを展開し、インドネシアの農業試験場と連携して支援活動を続けています。

電子業界の共通行動規範(EICC)を確立

永井

ソニーの永井です。当社では、CSR活動の一環として、CSR調達に力を入れています。そのための管理システムには、製品における含有物質の管理としてグリーン調達を確立しています。サプライヤーに対して求める基準を明確にするために、「環境管理物質管理規定(SS-00259)」を持っています。

2003年より、HP、インテル、IBM、ソニーなど米国のIT企業を中心にCSR調達の仕組みを共通化するための議論が始まり、後にEICC(Electronic Industry Code of Conduct)グループとしての活動につながっていきます。このアライアンスでは、CSRの行動規範やその運用プログラムに必要なアセスメントツール、監査システムなどを共同で開発しています。

サプライヤー企業に、電子業界における行動規範を順守していただくには、規範そのものが明確で説得力があり、かつ管理しやすいものでなければなりません。そうした意味で、EICCの活動は多くの効果が上がっているととらえています。

サプライヤーとのディスカッションを実施

廣塚

TOTOの廣塚です。当社では、CSR調達の一環として、3,500社ほどのサプライヤーに対してCSRの順守事項をお送りしています。なかでも当社との取引額が、そのサプライヤー企業の総取引額の33%を超える企業については、主要取引先として、「サプライヤー・ダイアログ」を開催しています。これは、1社ごとに訪問して、どのようなCSRを実行するべきなのかを考え、CSRの成功事例をもとにディスカッションするなど、CSRを通じた対話によって、共に成長していくことを目的としています。

海外拠点のなかでも中国には11社のグループ会社、170社ほどの主要取引先があり、CSRの現地調査を進めながら、互いの信頼関係を高めていくようにしています。先日、訪れた北京にある取引先では、地域の治安保全や学校への寄付、若者の積極的な雇用など多くのCSR活動を熱心に行っていました。この企業の社長は「先駆けてCSRを実行する企業は必ず強くなる」と考えているのが印象的でした。

環境という一貫したテーマを追求

古賀

富士通の古賀です。当社では、様々な分野でITを活用したソリューションを提供しています。CSRについては、"環境を重視する"をテーマに、多様な活動を行っています。たとえば、事業開発においては、現在、電子ペーパーの開発に力を入れています。また、グリーン調達では、製品用一般部材、ソフトサービス分野、設備分野などすべての領域を対象に取り組んでいます。

製品のサプライチェーンにおける化学物質のマネジネントも徹底しています。その結果、1995年に静岡県の沼津工場から始まった「ISO140001」の取得活動が徐々に増え続け、2005年には全世界のグローバル統合認証の達成となりました。こうした活動が従業員一人ひとりの環境意識にもつながり、サプライチェーンを含む一社一社の企業価値を高めていくと思います。

ステークホルダーをも巻き込んだCSRへ発展

生田

パネラーの皆さん、ありがとうございました。ウェルフォードさん、これまでの話を聞かれていかがでしょうか。

ウェルフォード

皆さんから、新しいCSRの話が聞けてうれしく思います。これから重要になってくるのは、政府からのプレッシャーだけではないと思います。これからは株主という存在がやはり重要になってくると思います。機関投資家のなかにはCSRへ真剣に取り組まないことは、企業にとって大きなリスクだと考えている人々も少なくありません。

行動規範や監査についても言及している人が多くありましたが、ソニーの永井さんにお話しいただいたEICCによる共通規範は、参考になりました。サプライチェーンから寄せられるのは、企業によって規範の内容が違うという不満だからです。

次のステップは、CSR活動にステークホルダーを巻き込んでいくことでしょう。企業や工場があるコミュニティーにおける"健康面"まで考えた企業活動、製品づくりなどが問われて来るのではないでしょうか。

日本企業への積極的な情報開示が求められる

皆さんのお話を大変興味深く聞きました。なかでも、先進国側ではない途上国の視点に立った持続的なCSR活動は、もっと多くの企業に行ってもらいたいと考えています。

また、ウェルフォード氏の話に出てきましたが、サプライチェーンをただ監視するだけではなく、サポーターとして"キャパシティ・ビルディング"に取り組んでいくという方法論は重要ですね。このような視点は日本企業には欠けていると思います。

また、TOTOでは、CSRの情報交換を積極的に行っているという話がありましたが、これは素晴らしいと思います。日本企業は情報開示に臆病なところがありますが、積極的に情報を公開することで、さらに成長できることを知ってほしいですね。

生田

本日の議論では、①グローバルとローカルな取り組みをどうつなげていくか②ステークホルダーに対する情報開示③キャパシティ・ビルディング――といったいくつかのポイントがありましたが、そのあたりを踏まえて、お1人ずつ感想をお願いします。

中尾

ローカルへの取り組みは、これまではマーケティングの延長で進めてきましたが、今後は、その地域社会にとって必要な課題とは何かを考え取り組んでいかなければならないと思います。

永井

CSR調達の取り組みはどの程度力を入れていけばよいのか、その判断は実に難しいところです。当社では、ウェルフォードさんから業界での共通化に関して評価をいただいたように、企業とサプライヤー、双方にとって効率的な仕組みづくりの重要性を認識し、取り組んでいます。

廣塚

CSRでもっとも大事なことは2つあります。1つはブランドの信頼を失わないためにリスクマネジメントを徹底すること。もう1つは、「同じ値段、同じ機能の商品であれば、TOTOで買おう」と選んでいただける、愛される企業であること。さらに海外においては、現地のスタッフや取引先をいかに巻き込んでCSRを理解していただくかにかかっています。

古賀

同感です。そのためには、対話をする"場づくり"が不可欠だと感じましたね。今後も、こうした"場づくり"に取り組み、積極的に参加していきたいと思います。

生田

本日は、ありがとうございました。

写真 生田孝史
生田 孝史 (いくた たかふみ)
富士通総研経済研究所 主任研究員
研究領域は、環境・エネルギー政策、環境・CSR関連事業経営戦略など。「サプライチェーンのCSR戦略」「我が国の持続的成長と企業のCSR戦略」「企業のサステナブル・マネジメントとサステナブル・コミュニティーの構築」「排出権取引:市場整備進み、関連ビジネスが拡大」等の論文を発表。環境・CSR関連の研究会活動やコンサルティング活動に従事。
写真 中尾洋三
中尾 洋三 (なかお ようぞう)
味の素(株) 広報・CSR部専任部長
味の素グループにおけるCSRに関する方針、推進計画の策定およびフォローと、広報・広聴活動を通じたステークホルダーとのコミュニケーション活動を推進。
写真 永井朝子
永井 朝子 (ながい あさこ)
ソニー(株) CSR部CSRマネージャー
ソニーグループで主にCSR方針や戦略の策定、外部ステークホルダーとのコミュニケーション業務やCSRにかかわるサプライチェーンマネジメント全般を担当。電子業界のグローバルなCSR調達のアライアンス(電子業界行動規範:Electronic Industry Code of Conduct)の形成に2004年より携わっている。
写真 廣塚謙良
廣塚 謙良 (ひろつか けんりょ)
TOTO(株) CSR企画室長
TOTOグループのCSR推進活動全般を担当。CSR委員会(委員長は社長)および下部組織であるCSR推進会議の事務局業務を担当し、12の分科会(コンプライアンス・社会貢献・CSR調達など)の活動をウオッチしている。
写真 古賀剛志
古賀 剛志 (こが たけし)
富士通(株) 環境本部 ストラテジーエキスパート
1999年、環境経営の先駆けとなる環境会計を発表。富士通においてその総指揮を取り、企業活動と環境を結びつけた環境経営を推進。環境会計や環境経営に関する講演を多数実施。特に企業の説明責任(アカウンタビリティー)の必要性を社会に向けて発信。
写真 Dr.Richard Welford
リチャード・ウェルフォード (Richard Welford)
CSRアジア代表
香港大学都市計画・環境経営センター准教授
サムソン、キャセイパシフィックなど大手企業のコンサルティングに従事したほか、東南アジアにおける国連の調査プロジェクトにも参加。2004年、アジア地域においてCSRの普及啓発・調査・コンサルティング事業を行うシンクタンク『CSRアジア』を設立。現在、香港、深川、シンガポールにオフィスを展開している。
写真 金堅敏
金 堅敏 (Jin Jianmin)
富士通総研経済研究所 上席主任研究員
研究領域は、貿易投資自由化、多国籍企業のアジア/中国戦略、中国経済/産業政策。「対中経済政策の発想転換を」「対中ビジネスモデルの再構築を急げ」「日本企業の中国市場開拓 ガバナンスの強化を」「『政熱経冷』の日印関係」「ベトナムをいかに活用すべきか」等の論文を経済誌などに寄稿するほか、テレビ、ラジオの経済番組出演、政府・企業向け講演会・研究会などの活動に従事。
ページの先頭へ

NIKKEI NET