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低炭素社会実現に向けて

革新的な技術開発が成長の鍵 経済成長と環境保全を両立

世界レベルで関心高まる

昨年、前米副大統領のアル・ゴア氏と気候変動に関する政府間パネル(IPCC)がノーベル平和賞を受賞後、地球環境問題への意識が一層高まった。十一月にはIPCCから第四次評価報告書が公表された。報告書では「気候システムの温暖化は疑う余地がない」と指摘。北極海氷床の減少が加速していることや、世界各地で起こっている気象変化、自然生態系への影響を懸念している。

その後有識者の提言が相次いだ。アース・ポリシー研究所所長のレスター・ブラウン氏や米航空宇宙局(NASA)のジェームス・ハンセン氏は、2020年までに二酸化炭素(CO2)排出量の八割削減を主張。ゴア氏は20年までに米国のエネルギー需要を、再生可能エネルギーに百パーセント転換することを提言している。

国レベルでも具体的な削減指標などを公表する動きがある。例えばオーストラリアは「Garnaut Climate Change Review2008」のドラフトをこのほど発表した。CO2の削減指標を「削減策なし」「付加的な削減」「強い削減」「野心的な削減」の四つの選択肢とその影響などを示している。このうち野心的な削減は、CO2の大気中濃度を450ppm(ppmは百万分の一)にするという案だ。この最も厳しい案を実行しても20年以前に温暖化のピークを迎え、グリーンランドの氷床は六~九%融解すると予測する。

先月開催された洞爺湖サミットでは、50年までに温暖化ガス排出量を半減する長期目標を共有するよう求めることで合意。日本は六月に「福田ビジョン」を発表した。50年までの長期目標として現状からCO2の六―八割削減を掲げるなど、低炭素社会への転換を明確に打ち出している。その中には30年までに太陽光発電の普及を現状の40倍に引き上げることなどを明記。与野党ともCO2を六~八割削減する長期目標を掲げるなど、次期国会は地球温暖化防止をめぐる議論が活発に行われる模様だ。

CO2削減のためには、エネルギーの有効利用も重要だ。来年四月に施行される改正省エネルギー法は、企業にエネルギー使用量の報告を義務付け、一定の成果が上がらない場合は、改善命令や罰金を科すことができる。これまで工場や大規模ビルなどの事業所単位で報告義務を課していたが、改正後は大規模ビルでも企業単位で対象となる。

地方自治体の動きも活発で、東京都は「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例(環境確保条例)」を改正した。再生可能エネルギー導入の検討や、省エネ性能基準に適合する措置を義務付けるなど、これまでよりも踏み込んだ内容だ。

企業の具体的な取り組み進む

このように低炭素社会の実現へ向けた動きが加速している。もはや企業にとって環境への取り組みは、企業の社会的責任(CSR)にとどまらず国際競争を勝ち抜くための重要な経営課題であり、具体的な取り組みが求められる。新たな環境行動計画の策定やCO2排出削減目標を発表する企業が相次ぎ、最高環境戦略責任者を設置する企業もあるという。

環境配慮型製品を積極的に開発し、地球温暖化問題解決に貢献することは、企業の成長にもつながるという考えが浸透してきた。環境に配慮した部品などを積極的に取り入れるグリーン調達、物流システムの効率化や低公害車を導入することで環境負荷軽減を図る。CO2の抑制には資源の有効活用も重要で、廃棄物の減量と再資源化を図る3R(リデュース・リユース・リサイクル)の推進を業界全体で取り組む動きもある。

このような取り組みが消費者に分かりやすく伝わることも大切だ。環境保全に貢献していることを示す第三者機関が認定するマークを取得する企業も多い。例えば産業環境管理協会が認定する「エコリーフ」は、製品の製造・流通・使用・廃棄・リサイクルの全段階を通じた環境負荷を定量的に評価し、その結果を広く公表することで、消費者との良好なコミュニケーションを目的としている。

企業活動で電力の使用は不可欠だ。エネルギー有効活用はもちろん、環境負荷のない風力発電やバイオマスなど再生可能なグリーン電力を積極的に活用する動きもある。自社でグリーンエネルギー発電をまかなうことは難しいため、グリーンエネルギーによる発電実績を証書化した「グリーン電力証書」を導入する企業のすそ野が広がっている。官民が協力して「グリーン・エネルギー・パートナーシップ」を設立するなど、普及促進に向けた動きも活発だ。

またIT(情報技術)の環境への貢献と環境・IT経営の啓発普及を目指す「グリーンIT推進協議会」が発足。ITはもはや企業活動のインフラで、経営の重要な要素である。経営の効率化と環境負荷軽減のための省エネを図るグリーンITの普及が期待される。

「環境ショーケース」で最先端技術を紹介

経済成長と環境保全を両立する鍵は“技術革新”。日本の省エネ・環境技術は世界で高く評価されている。洞爺湖サミット開催中、国際メディアセンター内に「環境ショーケース」が設置された。関係省庁や民間企業などが協力して、ヒートポンプ給湯機や炭素繊維、水処理技術などの最先端環境技術が展示された。環境ショーケースの一環として設置された「ゼロエミッションハウス」は、環境に関する先端技術を備えた近未来型住宅。太陽光発電システムや家庭用燃料電池システム、そのほか省エネ家電など、日本の技術力を世界中にアピールした。

いよいよ今年十二月にはポスト京都議定書に向けて、国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP14)がポーランド・ポズニナで開催される。排出量削減を目的とした具体的な取り組みが話し合われ、低炭素社会の実現に向けた動きがさらに加速しそうだ。企業は環境負荷を軽減し、環境と調和した具体的な成長戦略の実行とさらなるスピードアップが求められている。

写真 ゼロエミッションハウス

洞爺湖サミットで環境ショーケースの一環として設置された近未来住宅「ゼロエミッションハウス」(手前)

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