持続可能な経営モデルへの挑戦
経営環境の激変を認識し世界リードする対策急務
先月開催された洞爺湖サミットで主要八カ国(G8)は、2050年までに温暖化ガス半減という方向で合意。中国やインドなどは長期削減目標こそ設定していないが、エネルギー効率の向上で削減を目指すと宣言した。
来年十二月にコペンハーゲンで開催される国連気候変動枠組み条約締結国会議(COP15)では、ポスト京都議定書が話し合われる。これから一年半は将来振り返ったときに、分水嶺(ぶんすいれい)となる歴史的な期間になると考えられる。全世界で温暖化対策や適応策に何兆円という巨額な投資が行われることになるだろう。新しい秩序や挑戦、マーケットの出現が予想され、巨大な社会変革が始まる。経営の環境が激変した。まずこれを経営者は認識すべきだ。
日本は六月に「福田ビジョン」を発表し、温暖化ガスを六~八割削減する長期目標を策定した。環境税導入の検討や、グリーン税制も視野にいれると表明している。今秋からは排出量取引の実験がスタートする予定で、まさに低炭素社会へ向けて全力疾走が始まった。
地方自治体の動きも活発だ。東京都は10年から排出量取引を開始する予定で、都内約1300の事業所に排出枠を割り当て、それを超えると罰金を科す。横浜市やつくば市、柏市などの地方自治体も削減目標を策定し、積極的に取り組んでいる。
これまでの日本企業の環境経営は高く評価できるが、ISO14001の取得など環境マネジメントのレベルにとどまっている。これを持続可能な経営モデルである「サステナビリティーマネジメント」まで、速やかに引き上げなければならない。ビジネス環境が劇的に変化しているため、これまでの経営ではビジネスの継続は難しい。このことを経営者は念頭にトップダウンで戦略的環境対策を実行するしかない。
最近CO2を1000万トン単位で削減する中長期目標を発表し、なかには八~九割削減を目指す企業もある。世界の変化に日本の経営者も接近してきたと感じるが、接近であってこれを超えなければ国際競争には勝てない。ゼロにするくらいの意気込みが必要である。
このような変化の波をうまく先取りした企業は大発展するはずだ。日本には昔からビジネス環境の変化に対応して、成長し続けてきたサステナブル企業が多く存在する。200年以上続く老舗企業が4000社ほどあるといわれている。サステナブルマネジメントのDNAは、日本社会の中で生き続けている。
国際競争を勝ち抜くためには、社会の仕組みを整える必要がある。例えば企業の環境・社会・ガバナンス(ESG)活動に対する融資金額をアップさせるべきだ。現在大手銀行でも融資額は数千億円程度。これを数兆円規模まで引き上げると、大きな社会変化につながるだろう。
地球温暖化対策は焦眉(しょうび)の急。一刻も早い取り組みが必要だ。地球の表面温度は、CO2を今この瞬間からゼロにしてもすぐには下がらず、しばらくは上昇し続ける。コンピューターシミュレーションによれば、下がり始めるのは50年後。50年までに全世界で半減では、100年たっても現在の温度より下がらない計算となる。今までに排出した温暖化ガスによる影響が表れるのに時間差があるからだ。
当面世界は50年までにCO2の半減を目指しているが、もし5年以内に北極海氷が完全消滅するような事態になれば、それでは済まない。日本企業は世界の目標を超えるスピードで変化に即応し、環境イノベーションを先導する環境経営が求められている。
- 山本 良一 (やまもと りょういち)
- 東京大学教授






