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「グローバル・レポーターズ2006」にみる企業の情報開示・コミュニケーションのあり方

CSRレポート、社会・環境報告書、サステナビリティ・レポートなど呼び方は様々であるが、企業のCSRへの取り組み内容を対外的に伝える一般的な媒体としてこれらの報告書がある。報告書はあくまでもコミュニケーションのプラットフォームにすぎないが、昨年11月に発行された「グローバル・レポーターズ 2006」を読み解きながら企業の情報開示・コミュニケーションのあり方について考察してみたい。

グローバル・レポーターズとは

グローバル・レポーターズとは、サステナビリティ・レポート等での企業のCSRに関する情報開示についての調査・格付けで、1994年から隔年で発表されている。格付け会社のスタンダード&プアーズ、経営戦略コンサルタント/シンクタンクのサステナビリティ社、国連環境計画(UNEP)が共同で世界中の企業を対象に統一基準で評価し、上位50社を選定している。2006年11月に発表された「グローバル・レポーターズ2006」では、同年10月に公表された「GRI サステナビリティ レポーティングガイドライン第3版」(G3)の改定内容も踏まえて分析が行われている。その結果は、「トゥモローズ・バリュー」と題された報告書にまとめられている。主な結果は以下の通り。

【上位10位】
順位 前回の順位 企業名 点数
1 4 BT 80
2 1 Co-operative Financial Services 73
3 3 BP 72
4 - Anglo Platinum 70
4 7 Rabobank 70
6 10 Unilever 67
7 - MTR 66
7 - Vodafone 66
9 8 Shell Group 65
10 - Nike 64
10 2 Novo Nordisk 64
【上位50位以内の日本企業】
順位 前回の順位 企業名 点数
34 39 大和証券グループ本社 52
45 - 富士フイルム 47
46 45 ソニー 45
48 - セブン&アイ・ホールディングス 42
49 - 日産自動車 41

上記のほか、上位50位圏外ではあるが良い評価を得た企業として、エーザイ、オムロン、西友、サントリー、東京電力があげられている。

なぜ日本企業の順位は低いのか

上位50位に5社が選ばれたものの、その順位は高くない。06年11月21日に日本で開催されたグローバル・レポーターズの報告会では、世界の報告書の12%を日本企業が占めるものの、平均点を地域別に見るとその点数は世界平均を大きく下回っている結果が示された。

【地域別平均点】
地域 平均点
世界 57
日本 43
北米 54
他のOECD 51
EU 59
OECD以外 60

(出典:サステナビリティ社資料)

日本企業の報告書の特徴としては、以下のように評価されていた。

評価の高い開示内容

  • 環境データ
  • 経営者の緒言
  • ガバナンスの責任と体制

評価の低い開示内容

  • リスクマネジメント
  • CSR課題を公共政策や規制対応の中にどのように組み込んでいるか

(サステナビリティ社資料をもとに筆者が作成)

この結果から、日本企業は広範囲にわたる環境データを緻密に集計したり、方針や体制について述べたりすることは得意であっても、リスクマネジメントや課題への対応において期待されているレベルの開示が行われていないことがわかる。しかし、日本企業がこれらに全く取り組んでこなかったわけではない。何が足りないのだろうか。

キーワードは「重要性」と「ステークホルダー・エンゲージメント」

G3では、報告書の記載内容を決定するための原則として、「重要性(マテリアリティ)」が新たに追加された。重要性の原則とは、「ステークホルダーが当該企業について評価したり意思決定したりする上で重要な情報(テーマや指標)」や「当該企業が与える経済・環境・社会的に重要な影響を反映する情報(テーマや指標)」を報告書に記載すべきであるという原則である。「グローバル・レポーターズ2006」では、この新たな原則も踏まえた上で評価がなされている。すなわち、報告書の利用者がより判断しやすいよう、ステークホルダーと企業の双方にとって重要なテーマや課題に焦点を当てた報告が求められている。

このことから日本企業の情報開示の弱点、すなわち、(情報開示とは、取り組みがまずあっての状況や結果の報告であるので)CSRへの取り組みにおける弱点は、リスクや課題の優先順位づけが十分でない点であるといえる。しかし、その判断は企業だけで行えるものではなく、ステークホルダーの意見を確認しながら実施することが必要である。

一般に、CSRにおいて企業が配慮すべき経済・環境・社会的側面は多岐にわたり、企業は限られた経営資源の中でそれらのすべてに対して同時に100%の力を出し切って対応していくことは不可能である。主要なステークホルダーとのコミュニケーションを図りながら、企業として重要であると考える活動、あるいは社会が企業に期待する活動や行動を互いに確認し合いながら優先的に取り組むべき課題やリスクを特定し、重要性に応じて段階的にCSRに取り組んでいくという方法は、企業にとっても非常に理にかなったことだといえる。重要性の高い分野に的を絞った取り組みを実施し、その達成状況を説明し、ステークホルダーと確認し合いながら継続的にCSRの推進を図るという構図が理想的といえる。

コミュニケーション・チャネルの活用

効果的なステークホルダー・コミュニケーションには、まずは、重要なステークホルダーの特定とそれぞれに対する有効なコミュニケーション・チャネルの確立が必要である。「トゥモローズ・バリュー」には下図のような例が示されており、参考になろう。

図:サステナビリティ・コミュニケーション・チャネル

図 サステナビリティ・コミュニケーション・チャネル

(トゥモローズ・バリューの内容を筆者が編集)

これらのコミュニケーション・チャネルを通じて、報告書等の媒体を利用して企業の考える課題や状況の説明を行い、それに対するステークホルダーからのフィードバックを得られるような仕組みづくり、そして得られた意見をCSR経営に取り込んでいけるような体制づくりといった有機的なマネジメントシステムを確立していくことがCSRの推進には重要といえる。

(参考)

写真 吉田麻友美
吉田 麻友美 (よしだ まゆみ)
みすずサステナビリティ認証機構 取締役 主席審査員
CSRレポートなど企業の情報開示に対する第三者保証業務に従事。また、政府機関・企業向けの排出権取引関連の調査研究・認証サービスも手掛ける。
著書に『環境経営なるほどQ&A』(中央経済社)、『排出権取引の実務』(中央経済社)、『排出権取引の仕組みと戦略』(中央経済社)などがある。
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