番外編 一芸クンの食べB修行記〜ちゃんぽん番長の野望〜

小浜温泉のオバマ大統領(ちゃんぽん番長さん提供)
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小浜温泉のオバマ大統領(ちゃんぽん番長さん提供)

 野瀬特別編集委員との実食取材は3日目の午前中で終了。広い長崎県、限られた時間ですべてをまわることはできませんが、各地で素敵な人々とB級グルメに出合うことができました。充実感をおぼえつつ帰り支度をしていると、野瀬特編の携帯が鳴り響きます。電話に出たその様子がどうもおかしい。次第に表情がくもってきています。

 何事かたずねると「うむ、番長が…」と言葉を濁しました。

 番長ですと!?長崎に番長が実在しているとは。昔は、マンガによく番長が出てきました。「番長惑星」(石ノ森章太郎、当時は石森章太郎)、あれは面白かった。「とんち番長」(竹熊健太郎・相原コージ、作中では相原弘治)なんてのもありました。最近は番長見ないな、と思っていたら、テレビ東京で放送中のアニメ「極上!!めちゃモテ委員長」に恋に悩む心優しい番長が。絶滅はしていないようです。

島原鉄道の車両
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島原鉄道の車両

 聞けば、野瀬特編に電話してきた番長は「ちゃんぽん番長」の通り名を持ち、雲仙あたりで名を上げているとのこと。きっと「雲仙を素通りするとは何事か」とすごんできたに違いありません。いやいや、皆まで言わずとも結構。この私が名代として、番長に話をつけてこようじゃありませんか。

 すると野瀬特編が「気をつけたほうがいい。彼のバックはオバマだからな」とアドバイスをくれました。恐るべしちゃんぽん番長。心してかかりましょう。

野瀬 一芸クン、そこまで話を作らなくても……。

島原鉄道「愛野駅」は愛の駅
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島原鉄道「愛野駅」は愛の駅

 佐世保からJR九州の快速電車「シーサイドライナー」で諫早駅へ。諫早でローカル線の島原鉄道に乗り換えて島原半島に入ります。急行で15分ほどの「愛野駅」にて下車。2005年に7町合併で雲仙市となる以前は愛野町と呼ばれていたところで、「愛のまち」というコンセプトのまちおこしも行われています。ファンシーな外壁の愛野駅前にはロマンチックな「ほほえみの像」もあります。愛野駅と、同じ島原鉄道の「幸(さいわい)」「吾妻(あづま)」とを結ぶ記念切符も購入しました。そこには「幸せを愛しのわが妻へ」と書かれています。自分に妻はおりませんが。静岡編最終回で野瀬特編に「君の人生の春は遠そうだな」などとひどいことを言われましたが、この切符のご利益で幸せになれそうな気がしてきました。

バスで小浜温泉へ。温泉街の手前で小浜ちゃんぽんののぼりを発見
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バスで小浜温泉へ。温泉街の手前で小浜ちゃんぽんののぼりを発見

 愛野駅前からバスに乗り、30分ほどで小浜温泉へ。「小浜ちゃんぽん」で地域を盛り上げようとしているこの地こそ、ちゃんぽん番長の本拠地らしいのです。

 温泉街の少し手前にある「お食事処 心」に、小浜ちゃんぽんののぼりを見つけました。ここで番長のことを聞いてみることにします。

 しかしまずは腹ごしらえ。「ちゃんぽん(卵入り)」を注文しました。出てきたちゃんぽんのスープは、他の地域のものと比べると白濁がうすく、すすってみると味もいくぶんあっさりしています。しかしダシはよく取れていて、レストランでいただく上等なスープのようです。太い麺は食べごたえも十分。長崎県観光振興推進本部のブログ「Go!Go!ともっち」では、ともっちさんが「小浜ちゃんぽんの麺は長い」と紹介しています。真似をして箸で持ち上げてみると、どんなに持ち上げてもそのスソがスープから出てこないほどでした。

小浜ちゃんぽん
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小浜ちゃんぽん

 スープの完成度が高いので卵を混ぜるのを一瞬ためらいましたが、これも小浜ちゃんぽんのスタイルということで、生卵をくずしてみました。するとどうでしょう、これまでとは全く違った、まろやかなスープに変身したのです。一杯で2度おいしい、お得な小浜ちゃんぽんでありました。

 店のご主人は森田哲生さん。40年以上続くこの店の2代目です。「ちゃんぽんの味は父から受け継いだ」と話す森田さんですが、洋食店で修行を積んだ経験を生かし、ちゃんぽんだけでなく数多くのメニューを提供しています。各店の独創性が試される長崎名物トルコライスには、ハーブを混ぜたピラフや和風スパゲッティを添えるなど、こだわりを見せています。

 森田さんはまちおこし団体「小浜ちゃんぽん愛好会」の副会長です。昨年秋に厚木市で行われたB−1グランプリでは、灼熱の太陽が照りつける中、もくもくとちゃんぽんを作り続けました。それでも1日1000杯がやっとで、3時間ほどで売り切れに。「もっと仲間を増やしていかないければいけない」と痛感したそうです。

「心」の森田哲生さんと、小浜ちゃんぽんの長い麺
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「心」の森田哲生さんと、小浜ちゃんぽんの長い麺

 しかしB−1グランプリに参加したことで、小浜ちゃんぽんをもっと盛り上げようという機運も高まっています。森田さんの父である先代も、以前は「店を休んでまで参加する意味があるのか」と半信半疑だったのが、今では考えが変わりつつあるのだとか。「小浜温泉の最盛期は、夜遅くまで裏通りでも浴衣姿の人が歩いていた」と森田さん。そのにぎわいが戻る日を目指し、店とまちおこしを両立させる忙しい日が続きそうです。


諫早のめがね橋と特急かもめ
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諫早のめがね橋と特急かもめ

 そうそう、番長の情報を聞かなくてはいけません。

 「番長ですか……。彼は行動力がありすぎるので、抑えるのが大変なときもあります」と笑う森田さん。どうやら番長は暴走するタイプのようです。勇んで小浜まで来たものの、対峙するのが恐ろしくなってきました。しかしここでひるむわけにはいきません。所在をたずねると「最近は福岡にいることが多い」との答え。雲仙市内だけでは飽き足らず、九州全域を支配すべく遠征しているのでしょうか。

 そこで大急ぎで諫早まで戻り、特急「かもめ」で博多を目指します。前日は「白いかもめ」(885系)でしたが、今回は普通の「かもめ」(783系)。途中、特急「みどり」、特急「ハウステンボス」と連結し、強力な布陣で博多に乗り込みます。

駅ビル準備中の博多駅
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駅ビル準備中の博多駅

 博多駅は、大規模駅ビル「JR博多シティ」のオープンを3月3日に控えています。着工から5年の歳月をかけたビッグプロジェクトに、番長がかかわっているという情報をキャッチしました。

 番長の姿は、JR博多シティ内・博多阪急の地下1階フードコート「阪急うまか食堂」にありました。ここに、小浜ちゃんぽんの店が雲仙市以外で初めて登場するというので、その視察に来ていたのです。おそるおそる名刺を差し出すと、にこやかに番長も名刺をくれました。そこには「雲仙市 観光物産まちづくり推進課 林田真明」とあります。いたって普通の名刺でした。名前のあとに(ちゃんぽん番長)と書いてある以外は。

 小浜ちゃんぽんを出す店の名は「鉄蔵」。同じフードコートには、B−1グランプリを主催する愛Bリーグ(B級ご当地グルメでまちおこし団体連絡協議会)プロデュースの「ゴトウチぐるめ元気食堂」があり、ほかに佐賀や大阪などのご当地グルメも並ぶ予定です。「ここで食べて、現地にも行ってみようと思ってもらえるような場にしたい」とこのフロアを担当する廣谷貴司さん(博多阪急 食品販売サービス部 部長)も意気込んでいます。

雲仙市 観光物産まちづくり推進課 林田真明さん(ちゃんぽん番長)
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雲仙市 観光物産まちづくり推進課 林田真明さん(ちゃんぽん番長)

 視察を終えた番長、いや林田さんに話を聞きました。

 林田さんがちゃんぽんによるまちおこしを始めたのは2007年のこと。小浜温泉で育ち、小浜町役場に就職した林田さんは、右肩下がりで勢いを失っていく地元を活性化するきっかけになれば、と独力で「小浜ちゃんぽんマップ」を作成しました。なぜちゃんぽんだったのか聞くと「なぜと言われても困ります。DNAの問題でしょう。自分がちゃんぽんであり、ちゃんぽんが自分。私の体にはちゃんぽんスープが流れています」と熱過ぎる答えが返ってきました。

 マップは好評だったものの、まだ地域振興の切り札にまではなりませんでした。当時は自ら「ちゃんぽんソムリエ」と名乗っていたのですが、これに「君はソムリエってガラじゃないだろう」と物言いがつき、熟考の末「ちゃんぽん番長」に改名。すると、同僚がちゃんぽん番長のイラストを書いてくれたり、ちゃんぽん番長の歌を作ってくれる人が出てきたり、とにわかにムードが高まってきたといいます。そして同年、小浜ちゃんぽん愛好会が発足。本格的な活動が始まりました。

 その集大成が昨年のB−1グランプリへの出展です。「心」の森田さんも、B−1初参戦が地元の人たちの意識を変えたと話していましたが、林田さんのもとにも会場に近い地域の県人会メンバーから「人手が足りないなら、なぜ声をかけてくれなかったんだ」という声が飛んできました。多くの協力者を得られれば、課題であるイベント会場での提供数も増やせるし、何よりまちおこしの継続性が高まる。林田さんは意を強くしています。

 具体的な成果も出始めました。「日帰り客は確実に増えつつあります。今後は宿泊客をどう確保していくかですね」と次の段階を見据える林田さん。いくつかの旅館ではちゃんぽんチケットの発行を始め、旅行代理店も小浜ちゃんぽんに目を向けているようです。

 キャラクターとしての「番長」も人気急上昇中で、今や林田さんはちゃんぽん番長だけでなく、「コロッケ番長」「かまぼこ番長」と複数の番長職を兼務しています。かまぼこ番長としては、共にかまぼこ作りがさかんな雲仙市と網走市の交流にもひと役買っているのだとか。「ぜひ網走にもちゃんぽんを伝えたい。ちゃんぽんにかまぼこは欠かせませんから、網走にご当地ちゃんぽんができれば地産池消にもなるのです」と林田さんは語ります。「ご当地ちゃんぽんの北限は琵琶湖あたりと言われていますが、その限界線を一気に北上させてみせましょう。北海道に『ちゃんぽん伝来』です!」

 番長が網走で大暴れ――ちょっと出来すぎな光景が、間もなく現実になろうとしているのです。


2011年2月18日


食べB修行記、今週のリポート一覧


■長崎県編
・その1 長崎はマヨが甘かった翔べ!天正遣欧少年の夢
・その2 カルコークは「砂糖屋の近か」ご当地“美”級グルメ「とやまスイーツ」実食 in Tokyo美級グルメ
・その3 竜眼はアルマジロの親戚である富山で「B級ご当地グルメでまちおこしセミナー」開催(一芸)
・最終回 蛍光食品の傾向と対策カルコーク選手権(一芸)
・実食編(前編) 五島で食べる五島地グルメ一芸クンの食べB修行記〜ちゃんぽん番町の野望〜
・実食編(後編) 三度の飯より佐世保のサンド一芸クンの食べB修行記〜ひとりデザートバイキング編〜

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