特別編 石巻・石ノ森萬画館の再開はいつに

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JR石巻駅前に愛Bリーグの仲間が集まった
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JR石巻駅前に愛Bリーグの仲間が集まった

 本編の冒頭に書いたように6月25、26の両日、石巻に行ってきた。B−1グランプリを主催する愛Bリーグによる炊きだしに同行したのである。参加したのは、人的支援(身ひとつで参加)も含めると富士つけナポリタン大志館、津山ホルモンうどん研究会、ひるぜん焼そば好いとん会、笠間のいなり寿司いな吉会、やきそばのまち黒石会、あいがけ神代カレー神代活性化協議会、かほく冷たい肉そば研究会、本庄ハム民の会、石巻茶色い焼きそばアカデミー、登米・油麩丼の会、久慈まめぶ部屋、大曲の納豆汁旨めもの研究会、横手やきそば暖簾会。

 アサヒビールの社員の方も加わった。

公民館の前も…
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公民館の前も…

 このメンバーが2日間にわたって6カ所に分散し、それぞれの料理を提供した。

 私はひるぜん、神代のメンバーと一緒に牡鹿半島の先っぽにある旧牡鹿町の中心部、鮎川地区を訪ねた。石巻市街から車で1時間。半島を巡る県道は至る所に細かな亀裂が走り、注意を促すためにチョークで亀裂をトレースしてあった。

 炊きだしの場所は牡鹿総合庁舎の下に立つ公民館。近くに避難所もあるが自宅避難の人が多く、あまり炊きだしが行われていないという。この日は行政とも調整した上で、愛Bリーグの出番となった。

ひるぜんはキッチンカーとアウトドア用品で対応
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ひるぜんはキッチンカーとアウトドア用品で対応

 神代はメンバーが経営する会社所有のバスに食材と機材を積んで来た。ひるぜんは東京支部所有のキッチンカーとアウトドア用品を活用したブースを併用して炊きだしに臨む。

 大量供給・高速提供こそ、B−1グランプリなど様々なイベント経験を積んでいる愛Bリーグ加盟団体の最も得意とするところ。その点だけに限れば自衛隊にも負けないであろう。

 炊きだしの準備が整うまで、何もできない私は周辺を歩いてみた。そのとき撮影した写真をここに掲げるが、もはや説明は不要と思う。対岸の金華山と結ぶ船の桟橋は危うく水に洗われそうになっており、激しい地盤沈下のために波止場の先端は海面に没していた。

いまも船が打ち上げられたまま(拡大するとさらに多くの写真が見られます)
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いまも船が打ち上げられたまま(拡大するとさらに多くの写真が見られます)

 陸地には何艘もの船が打ち上げられたままになっていたが、それでもここを再訪した人は「こんなにきれいになって」とつぶやいていた。

 炊きだしの場となった公民館も1階部分の窓はすべて壊れ、内部の天井は消えてなくなっていた。いまも電気は来ていない。

 午後5時の炊きだしを前にどこからともなく地元の人たちがやってきた。圧倒的に高齢者が多い。

「自宅に避難していらっしゃるんですか?」

炊きだしに集まる地元の皆さん
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炊きだしに集まる地元の皆さん

 と問うと、一斉にうなづきが返ってくる。

「避難所は救援物資が届きますが、自宅だと自前では?」

「いや、配給はあるよ。でもそれも今度で最後だと言われています」

「だから義援金がほしい。早くほしい」

 つまり義援金の支給はまだなのである。どこで止まっているのであろうか。

 炊きだしの用意が調った。暗い公民館にテーブルを並べ、カレーと焼きそばのセットを受けとってもらう。一緒に飲み物も。

がんばってます! 石巻(拡大するとさらに多くの写真が見られます)
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がんばってます! 石巻(拡大するとさらに多くの写真が見られます)

 待っている間の雑談には笑い声も混じっていたが、食べ物を受けとるときは無言に近い。小さなお礼の言葉が漏れるだけだった。ここで被災者の心中を推測しても始まるまい。

 近隣の商業施設は消えうせている。買い物に行こうにも車を運転しない高齢者が多い。日々の食べ物はどうしているのだろうか。誰に尋ねるでもなくそう思った。

 午後7時ごろから撤収作業を始め、石巻の市街に戻るころには真っ暗になっていた。車窓から見ると、電気はまばらにしかともっていない。

「暗いですね」

まちの片隅には…
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まちの片隅には…

 そうつぶやくと、地元での調整役を引き受けてくれた石巻茶色い焼きそばアカデミーの木村均さんはハンドルを手に言った。

「被災して街中に電気が戻るまで、どこに行っても真っ暗でした。暗くなったら寝るしかない。テレビも映らないわけですから。そして朝方明るくなったら起きる。ずっとそんな毎日でした。牡鹿ではいまでもそういう生活だと思います」

 翌26日、参加団体は朝の6時ごろから各地の炊きだし場所に散っていった。私は残った。「石ノ森萬画館」を見に行く用事がある。

石巻駅から「マンガロード」へ(拡大するとさらに多くの写真が見られます)
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石巻駅から「マンガロード」へ(拡大するとさらに多くの写真が見られます)

 石巻はずっと前からマンガによるまちづくりを進めてきた。その象徴が隣町生まれの石ノ森章太郎さんの作品をモチーフにした萬画館である。

「サイボーグ009」の登場人物のフィギュアが立つ石巻駅前から長いアーケード商店街が旧北上川に向かって伸びている。入り口には「マンガロード」の表示。地震と津波の深い傷痕をとどめる商店街には、いくつかのフィギアが倒れずに残っていた。それをたどりながら歩いて行くと信号が消えた交差点があった。その日は応援に来た愛知県警の警察官が交通整理に当たっていた。

 交差点からは旧北上川にかかる橋が見える。近づくと歩みが止まりがちになった。金属製の欄干が寸断され、あめのように曲がっている。橋の真ん中辺りにあった建物がひしゃげたまま放置されている。対岸をながめると、川縁がずっとブルーシートで覆われている。恐らく遊歩道の手すりが津波でずたずたにされ、危険なのだろう。

卵形の石ノ森萬画館(拡大するとさらに多くの写真が見られます)
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卵形の石ノ森萬画館(拡大するとさらに多くの写真が見られます)

 橋の真ん中に立つと、中洲に宇宙船のような建物が迫る。これが石ノ森萬画館である。河口から遡ってきた津波をまとも受けたはずなのだが、卵形の本体は無傷に見え曇り空を映して鈍く光っている。

 2階部分以上に収蔵されていた石ノ森作品の原画類は無事だった。しかし1階の被害は激しく、電気系統が壊滅したため再開のめどはまったく立っていないという。

 再開には3億円の改修費用が必要と言われているのだが、国や市によるライフラインの復旧と被災者救済にも手が回り切れていない状況で、萬画館が後回しにされてもやむを得ない面は確かにある。

アジアム2011 夢
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アジアム2011 夢

 にもかかわらず、私は思う。マンガはアニメと並んで日本が世界に誇るクール・ジャパンの双璧ではないか。つまり萬画館はひとり石巻だけのものではなく、日本全体の文化的資産とは言えないだろうか。

 国内のマンガ家たちがサイン会をやって、その売り上げを萬画館の再開費用にする取り組みが連休中にあった。ネットでは色紙やサイン入りのグッズをオークションで売っている。地道な、しかし必死な努力である。

 詳しくはマンガジャパンのHP(http://www.manga-japan.net/)をご覧いただきたい。

 私の手元に「アジアマンガ同人誌 アジアム2011夢」という本がある。アジア8カ国・地域の漫画家がサイレント(台詞のない)のストーリーマンガ作品を寄せ合ってつくったものである。たまたま大震災を前にできあがり、在庫があった。マンガ家の木村直巳さん、御茶漬海苔さんがこれを売って萬画館に寄付しようと走り回っている。

がんばっぺ!!!
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がんばっぺ!!!

 興味がある方はお手に取って……というわけにはいかないが、買っていただきたい。1冊2000円である。こちらの申し込みはナオミプロダクション(電)03(6423)0306へ。

 書店では売っていない。漫画ファンには多分お宝。

 萬画館の誕生には一人の男性の物語があった。その一端を7月2日付日経夕刊文化面に書こうと思っている。

 今回は話が多岐にわたった。許されよ。

 では愛媛県メールを松山。


(特別編集委員 野瀬泰申)

2011年7月1日


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