第149回 奈良県ご当地グルメ(その4) 凍てつく夜は天理のラーメン

特別編集委員 野瀬泰申


 うまいもの、けっこうあるじゃないですか!「奈良にうまいものなし」などといわれ、多少びくびくしながら始まった奈良県編ですが、事前の心配をものともせず、毎週、たくさんの美味しい情報をお寄せいただきました。ありがとうございました。
 いよいよ最終回。ラストスパートで「奈良のうまいもの」をご紹介していきます。
今週のおかわりは、本編でも登場した奈良のご当地ラーメンを、デスクが実際に食べてみました
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会場で先生がお出迎え
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会場で先生がお出迎え

 3連休の中日にあたる9月22日、横浜・みなとみらいのカップヌードルミュージアム(安藤百福発明記念館)に行った。

 何しに?

 民族学者の石毛直道先生の「自選著作集」刊行記念会があったからである。

 石毛先生とは先生が国立民族学博物館の館長をしておられたころに面識を得て、お経の覚えが悪い門前の小僧となった。八戸の第1回B−1グランプリから特別審査委員をお願いしている。

盛りあがるトークセッション
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盛りあがるトークセッション

 ミュージアムは家族連れで大にぎわい。その5階のホールで先生を主役とした3つのトークセッションが繰り広げられた。聴き入る人々は多かれ少なかれ食関係。先生個人のファンも大勢来ていて、盛りあがったのである。

 セッションの後はお約束のパーティー。写真のような珍しい食べ物が並べられると、来場者は我慢の限界、というか最初から我慢する気などなかったのか、乾杯の前から料理のテーブルを囲んでパクパクが始まった。

 「お食事は乾杯が済んでからですよー」という司会の声も聞こえず、いや聞こえないかのようにパクパクが続く。

料理が並ぶとすぐに箸が
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料理が並ぶとすぐに箸が

 石毛先生の会であるから当然、銘酒、珍酒が並び、こちらも飲み放題である。私は馬乳酒を初めて飲んだ。酸っぱいカルピスみたいであった。

 フナズシも絶品。天然ウナギも素晴らしかった。でもお寿司はすぐになくなって口に入らなかった。

 その前に空港前泊も含めて3泊4日の島根実食の旅に行っていたため、さすがの私もお疲れで、ふらふらと会場を後にしたのであった。

 さて奈良県編も最終回。皆さんのおかげで盛況の内に大団円を迎えようとしている。

 ではラーメンの話から始めよう。

暗闇に一軒の屋台が…(彩華ラーメン提供)
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暗闇に一軒の屋台が…(彩華ラーメン提供)

MNo.37

 私は実際に食べたことがないのですが、数10年前に弟が「天理に幻のラーメンがあんねん」と言っていました。真冬の奈良の山中凍てつく夜中にバイクで走りに走っていくと、暗闇にぽっちり灯りとぼわぼわぼわ〜んと真っ白な湯気が湧きたつのが見え、近づいて行くと一軒の屋台が!
 夢中で食べたそのラーメンの味が忘れられないのだけれど屋台ゆえにいつもあるわけではなく、仲間内で幻のラーメンと言うのだと。その後、チェーン店となったようですが「天理ラーメン」というジャンルは確かに現存するはずです(ヴィオニエさん)

 この屋台を語る文章がいい。いかにも「屋台」というイメージを喚起する。それだけで食べたくなる。

天理の彩華ラーメン(彩華ラーメン提供)
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天理の彩華ラーメン(彩華ラーメン提供)

MNo.38

 ちょっと前に奈良に住んでいました。確かに奈良は、これといって名物の食は少ないような気がしましたが、自分の住んでいた天理市には、有名な天理ラーメンがありました。くせになる味で、屋台で食べると最高でした。
 でも、今回話題にしたいのは、ラーメンではなくて、うな重です。
 天理には「みしまや」と「淡水」という有名なうなぎ屋さんがあるのですが、両方ともご飯にタレがかかっているのではなく、タレを混ぜ合わせたご飯の上にかば焼きがのっています。あまり他では見かけたことがないような気がします。
 うなぎより、かば焼きのタレが好きなうちのかみさんには大変好評でした(つんつんさん)

柳川の「うなぎのせいろ蒸し」
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柳川の「うなぎのせいろ蒸し」

 以上、2通のメールに登場するのは「彩華(さいか)」であろうか。私は大阪のなんとか支店で食べた記憶があるのだが、確かにとんこつと鶏ガラの醤油味は少し甘めで特徴があった。キャベツではなく白菜であったことにも驚いた。

 実食編では「天スタ」とともに押さえたい物件である。

 それで天理のうな重。たれとご飯を最初から混ぜ合わせてある。柳川の「うなぎのせいろ蒸し」以外にこのようなものを知らない。皆さんのまちに似たものはありますか?

 口に入ればみな同じかもしれないが、要確認物件であろう。

のっぺ(奈良県提供)
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のっぺ(奈良県提供)

MNo.39

10年ほど奈良に住みましたが「これ!!」ってモノはなかったですね。 子どもが小学校の給食で郷土食の「奈良のっぺ」なるものを食べたそうですが、あんまり美味しくなかったと申しておりました。
 毎年12月17日、奈良の春日大社の「若宮おん祭り」のときに食べるモノだそうですが、サトイモを主とした野菜の煮物です。周囲に聞いても自宅でコレを作って食べているという人はいませんでした。
 しかし、おん祭りは特別なお祭りらしく、当日、奈良市内の学校は午後からお休みになります。以前は休日だったようで、銀行なんかもお休みになったらしいですよ。
 おん祭りの日に春日大社の境内にある茶屋で饗されるそうですので、興味のある方は行ってみたらどうでしょう(再上洛さん)

新潟ののっぺい
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新潟ののっぺい

 お子さんの口に合わなかった? 古い古い食べ物ですから、仕方ないかも。

 奈良県・美味しい奈良推進係から送られてきた資料には、こう書いてある。

 毎年12月17日は、奈良春日大社若宮の「おん祭り」で、1年の最後を飾るお祭りです。奈良ではこの日に「のっぺ」を食べる習慣が昔から続いています。東北や北陸地方の、のっぺい汁は野菜や鶏肉の煮汁に片栗粉などでとろみをつけますが、奈良ののっぺは、サトイモを主に、ダイコン、ニンジン、ゴボウに油揚げも入れた具だくさんの煮物でサトイモで自然にとろみがつきます。

大根
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大根

MNo.40

 奈良県出身の主人の実家で、初めて食べてびっくりしたのは大根入り炊き込みご飯(牡蠣ご飯)です。
 大根以外の具材は牡蠣(アサリも美味しい)と油揚げ。最初は大根の香りが気になったものの、なんとも言えない美味しさがあるので引き継ぎました。今では子どもたちも牡蠣ご飯に大根が入ってないと不満なようです。
 ところが、大根を入れる炊き込みご飯は聞いたことがないと言われ、食べても変な顔をする人が多いので残念です。
 牡蠣ご飯(または炊き込みご飯)に大根を入れるのは奈良の主人の実家の周辺だけなんでしょうか?(Roseさん)

大根おろしでダイエット?
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大根おろしでダイエット?

 これは美味そう。

 Roseさん、心配は無用です。戦争中から終戦直後にかけて多くの日本人が、大根が入ったご飯を食べていました。「大根めし」といって、主役はご飯ではなく大根。

 少年期にこれを食べていた人は「不味いものではなかったですよ。大根だもの。でもすぐに腹が減ってこまった」と言っていました。

 大根を増量すると簡単ダイエットご飯。むしろ自慢しましょう。

 温かいそうめん、にゅうめんは西日本のものと書いたら、異見到来。

味噌汁にはそうめんの「ふし」
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味噌汁にはそうめんの「ふし」

MNo.41

 温かいそうめんは西日本の食文化? 北海道でもよくそうめんを味噌汁に入れて食べてました。味噌汁に乾麺をそのまま、たまに短く折って入れます。
 煮えたそうめんからのとろみがついて温かく食べられます。記憶が定かじゃないのですが、北海道では、そうめんは冬に味噌汁で。夏は冷麦が普通?(門別@北海道さん)

にゅうめん(大阪の原さん提供)
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にゅうめん(大阪の原さん提供)

 北海道でも味噌汁にそうめんを入れて食べる。覚えておこう。

 ただ私が「にゅうめんは西日本のもの」と書いたのは、飲食店のメニューに普通にあるのは西日本という意味合いである。

 家庭の食卓には西日本に限らず、温かいそうめんが登場しているかもしれない。

 今度、北海道実食の旅の折に、確認に努めたい。

 それはともかく、味噌汁にそうめんはいいものである。私は好きなのに、娘たちが無言で抗議する。教育を間違ったか。

棒ダラ
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棒ダラ

MNo.42

 奈良県には「とっきょりの魚」という言葉があります。とっきょりとは「時折」のこと。盆暮れ正月などの農家の休日、いわゆるハレの日にはご馳走として魚をいただくのが常でした。
 お盆のトビウオ、秋祭りにはエソ、そして正月になると棒ダラ、ときにイワシやサバなども。海にいたときより陸に上がってからの方が長い、と笑い話になるほど、いずれも日持ちする乾物や塩漬けだったようです。
 面白いなと思ったのはエソを食べること。すり身としては高級品扱いのエソですが、焼き魚で食べるという風習は他には知りません。
 ハモ同様、非常に小骨が多く、釣り人には外道として嫌われるエソがなぜ、秋祭りの重要なご馳走になったのかわかりませんが、天保12年に書かれた「世事百談」には、大和の方言として「エソ祭り」ということばが記載されているほど、秋祭りとエソは切っても切れない仲だったよう。祭りの間は町中に、エソ売りの出店が並んでいたそうです。
 また葛城あたりの夏のご馳走としてアカエイがあります。ことに肝は栄養があり、夏ばての特効薬と言われていたとか。他地方でも山間部でエイをよく食べる地域がありますが、乾燥させたり塩漬けにしたりしなくとも日持ちするエイは「とっきょりの魚」として最高だったことでしょう(じろまるいずみさん)

栃木のサメの煮もの
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栃木のサメの煮もの

 「とっきょりの魚」という言葉は初耳である。初耳ながら十分納得できる。

 前に書いた宇陀出身の方の「塩サンマがごちそうだった」という言葉も、これで実感がわく。

 海なし県に住む年配の方の話に共通しているのは海の魚への憧れである。

 栃木県編で登場したサメの煮もの、フライにしても事情は同じ。それがいまでも当時のご馳走感のまま食べ続けられていることに注目したい。

 ところでエソの干物ってどこで売っているんでしょうか?

奈良の大盛りカレー(大阪の原さん提供)
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奈良の大盛りカレー(大阪の原さん提供)

 じろまるいずみさんからは、もう1通メールをいただいている。要約すると「奈良にはカレーの店が多い」という話に関し、持てるネットワークを総動員して調べた結果、そのような現象を確認することができなかったという内容であった。

 「多い」という印象は比べる対象によって違ってくる。奈良市内の他の飲食ジャンルとの比較か、自分がよく行く店の中でのことか、などなど。

 奈良市内の飲食店の数は比較的少なく、外食支出も多くないということなので、大阪や京都に比べてということはあるまい。

 少ない店の中で目立っているということかな?

 では、これはどうであろう。

奈良県人はコロッケ好き?
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奈良県人はコロッケ好き?

MNo.43

 大阪豊中市から大和郡山市に転居した者としてたこ焼き店が駅前に存在するのは当たり前ですがコロッケ店も多いのです。肉屋さん総菜屋さんでの販売はどこでもあるのでしょうが専門店というか、たこ焼き店感覚の店頭販売で結構皆さん購入しているのです。先日の家計調査記事にもありましたがコロッケ全国第3位には妙に納得しました(いたちのイチローさん)

大仏サイダーも(大阪の原さん提供)
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大仏サイダーも(大阪の原さん提供)

 これはやはり注目であろう。富山市のコロッケ好きは有名だが、奈良市も肉薄している印象である。

 実食編では大和郡山市にもおじゃまする予定。確認します。

 大阪の原さんから、またしてもたくさんの写真を送っていただいた。助かりました。

 ということで奈良県編はこれにて終了。食に関しては大阪、京都、名古屋に囲まれて目立たない奈良県ではあるが、人が暮らし歴史を積み上げてきた土地に食の物語がないはずがないことを実証してくれた。

デスク 公開直前に、豊下製菓の豊下さんから以下のメールとともに、奈良県北東部・宇陀市に伝わるお盆の伝統食を写した貴重な写真が届きました。14、15日の朝食14日の昼食14日の夕食15日の昼食の各メニューです。ぜひご覧ください。

奈良県北東部・宇陀市のお盆の伝統食(奈良のふぅちゃんさん提供)
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奈良県北東部・宇陀市のお盆の伝統食(奈良のふぅちゃんさん提供)

MNo.44

「何でわざわざ茶粥なんやろか?」とずっと思っておりました。
 10年ほど前、作家の宇江敏勝さん宅に遊びに行き、茶粥や輪っかになったサンマなどをご馳走になったことがあります。その時に茶粥を常食する理由を訊ねてみたところ「はよう炊けるから燃料の節約にもなるし」と言う答え。
 あぁそうか、白粥を米から炊いたら2時間近くかかるところ、茶粥なら米から炊いても15分程度。日暮れ間際まで山仕事をして、さっと火をおこし、茶粥に若干の副菜を用意するのに半時間掛かるか掛からないですものね。
 茶粥とは関係ありませんが、奈良のふぅちゃん(宇陀で生まれ育った家内の友人)が、お盆の伝統食の写真を送ってくれたのでお送りします。ササゲ粥なんて存在すら知りませんでした。

そろそろ書店に並ぶころ

 次回は島根実食の旅リポート。

 その次から茨城県編のスタートである。ご関係の皆さんは、準備体操をよろしく。

「天ぷらにソースをかけますか?」に次いで旧「NIKKEI NET」の「食べ物 新日本奇行」から生まれた文庫本「納豆に砂糖をかけますか?」が26日配本となった。多くの同人からいただいたメールをもとに、再構成した。

 東日本大震災によって出版の時期が大幅にずれこんだが、これで「食奇行」の主要なテーマと地図を活字にすることができた。皆さんに心からお礼を申し上げたい。

 解説は「孤独のグルメ」の原作者、久住昌之さんにお願いした。楽天で購入可能と聞いている。546円

 それでは再びいつもの雄たけびを。

 買ってー、買ってー、読まないでもいいから買ってー。

(特別編集委員 野瀬泰申)

★今週のおかわりは「奈良から茨城へわたす、スタミナラーメンのバトン」です。ぜひお読みください。

奈良県実食編 天スタを食べまスタ

奈良県編(その1) お弁当買わずパン食べる

奈良県編(その2) 大仏プリンvs鹿のふん

奈良県編(その3) 奈良とインド、関係あるのカレー?


 


●筆者(特別編集委員 野瀬泰申)へのお気軽メールはこちら(tabeb@nex.nikkei.co.jp

2013年9月27日

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