第78回 秋田県実食編 納豆に砂糖。入れすぎ注意報発令中!

特別編集委員 野瀬泰申


「新春番外編 日本全国お雑煮図鑑」でお雑煮の代わりに納豆汁を食べることが発覚した秋田県。砂糖入り納豆と秋田ちゃんぽんという課題も合わせて、その実態を確かめるべく雪国へと旅立ちました。

 番外編では、秋田の観光路線として人気を集めているJR五能線の「リゾートしらかみ」にデスクが乗ってきました。「絶景」といわれる車窓風景を写真とともにお楽しみください。 「食べB」のFacebookページも好評展開中です。(http://www.facebook.com/tabebforum)実食編地図など、オリジナルコンテンツも掲載していますのでぜひご利用ください

(「食べB」へ初めて訪れた方は「食べB入門編」をご覧下さい食についてのメール投稿先はこちら

首都圏でも積雪
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首都圏でも積雪

 2012年1月20日、秋田実食編の取材に赴く日である。朝起きて外を見ると小雪がちらついている。東京の交通機関は雪に弱い。

 雪国では雪に入らないほどの降りでも、鉄道が止まったり大幅に遅れたりする。そこで新幹線の出発時間の30分前に東京駅に着くよう、早めに家を出た。

 通勤に使っている私鉄の最寄り駅に余裕を持って到着したものの、ホームの電光掲示板を見て悪い予感が当たっていたことを知った。とっくに到着時間を過ぎている電車がまだ来ていない。すでにして8分の遅れ。ホームは人で埋まっている。しばらく待っているうちにようやく電車が到着した。

はやぶさ新青森行き
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はやぶさ新青森行き

 ホームを出たのはいいものの、前の電車がつかえていて頻繁に信号待ちを繰り返す。少し走っては止まり走っては止まるのである。だんだん余裕がなくなってくる。

 途中省略。

 結局のところ東京駅に着いたのは新幹線が出る5分前。ダッシュで東北新幹線ホームに駆け上がり、一番端の車両の指定席に座ったときは息が切れそうになっていた。

 隣の座席を予約しているデスクはまだ現れない。彼の電車も遅れたらしい。ひょっとしたら遅刻かも。私ひとりで秋田に向かうことになるかも。

コーヒーを飲んでホットひと息

コーヒーを飲んでホットひと息

 そう思っていたら、デスクが現れないまま本当に新幹線が出発してしまったのである。

 デスク失態。

 いまごろ大汗かきながら泣いているんだろうなあ。電話で何と謝ってくるのであろうか。

「雪なんだから、しかたないじゃないか。気にしないで次の新幹線でおいで」

と優しく慰めてあげようか。

盛岡で休憩。東北なので中華ざる
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盛岡で休憩。東北なので中華ざる

 などと考えているところにばかでかいリュックを背負って体積が2倍になったデスクがやってきたのだった。

「間に合ったんだ」

「ぎりぎりですけどね」

 私はつまらなかった。どうせなら新幹線に乗り遅れて、一騒ぎ起こしてほしかったのに、こんな平凡な結末になったことが残念でならなかった。

 私たちが乗ったのはあの「はやぶさ」であった。ファーストクラスに相当する「グランクラス」の車両がついている。その写真を撮って実食編の冒頭を飾ろうではないか。

盛岡からはこまちに乗り換え
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盛岡からはこまちに乗り換え

と考えたのを察知されたらしい。車内アナウンスが鳴り響いた。

「見学や写真撮影の目的でグランクラスやグリーン車に立ち入らないでください」

 あちゃ。

 途中省略。

「気象庁黙認晴れ男1級」の資格を持つ私の行く所、いつもお天道様が輝いている。この日もずっと晴れ。東北新幹線が盛岡から分かれて秋田新幹線になると田沢湖線を走る。すると途端に雪深くなるのだが、全然降っていない。晴れているのである。

大曲の花火会場。見渡す限り雪
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大曲の花火会場。見渡す限り雪

 途中省略。

 秋田新幹線「こまち」は予定通り大曲のホームに滑り込んだ。改札を出ると長靴を履いた男性が手を振っている。

 愛Bリーグ加盟団体「『大曲の納豆汁』旨めもの研究会」代表の辻卓也さんである。

 皆さんから正月に雑煮の写真を送っていただいた際、横手から送られてきたのが納豆汁であった。「正月には雑煮ではなくこれです。餅は別に食べます」というコメントが添えられていたのを覚えておられるであろう。

北野水産 大曲駅前店
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北野水産 大曲駅前店

 私は何度も横手に行っているが、そんなこととはついぞ知らなかった。その横手と大曲は同じ秋田県南に位置している。似たような文化があるのだろうか。辻さんに聞いてみた。

「そうですよ。大曲でも正月に餅を焼いて食べますが、雑煮はあまり食べませんね。その代わり暮れの30日か31日に大量の納豆汁をつくり、三が日食べ続けます。時がたつにつれて次第に味が変わるのですが、2日目のやつがいいとか、3日目のが好きとか、人によっていろいろです。

 納豆汁は行事食で、正月、お盆、仏事など、人が集まるときにつくります。保存していた山菜、キノコなどをたっぷりつかいます。豪華なんです」

更級十割そば
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更級十割そば

 やっぱり県南に広がる文化なのである。

 辻さんが私たちを案内してくれたのは駅前商店街に店を構える「北野水産 大曲駅前店」であった。立派な構えの居酒屋であるが、昼間は各種ランチメニューを提供している。納豆汁は夜のメニューながら、本日は特に昼間に出してもらうようお願いしてあった。というか辻さんが手配してくれていたのであった。

 とりあえず「更級十割そば」を注文し、辻さんの話を聞く。

「さっき山菜やキノコの話が出ましたが、この辺りでは春の山菜、秋のキノコのシーズンになると自分でたくさん採ってきて煮たり味つけしたりします。それを保存するために缶詰工場に持ち込んで缶詰にしてもらうんです。以前は町内ごとにそんな工場がありました。いまでも春と秋にはラベルがなくてマジックで品名を手書きした銀色の自家製缶詰が友人、知人の間で行き交います」

大曲の納豆汁
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大曲の納豆汁

 山菜・キノコ文化圏であることはわかるが、それを自家製の缶詰にするとは。

 そんなことを話していたら、蓋付きのお椀に入った納豆汁が登場した。

 蓋を取る。納豆の匂いは漂うものの、覚悟していたほどではない。豆腐、ワラビ、ゼンマイ、シメジなどが見える。真ん中に半熟卵。

 納豆の姿が見えない。底に沈んでいるのかな。

 と思って箸ですくってみたのだが、納豆がひっかからない。

半熟卵が素晴らしい
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半熟卵が素晴らしい

「辻さん、納豆は……」

「粒では入っていませんよ。潰してあるのです」

 納豆汁未体験の私は、粒納豆かひき割り納豆がそのまま入っているのだとばかり思っていた。函館で食べた「味噌カレー牛乳納豆ラーメン」に入っていたひき割り納豆の姿から、そう思い込んでいたのだった。

 箸でゆっくりかき混ぜてみると、味噌汁のようでありながら汁にはっきりと粘りがある。

 納豆汁とはこのようなものであったのか。

近所のスーパーで見つけたいもあげ。中はサツマイモ
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近所のスーパーで見つけたいもあげ。中はサツマイモ

 お椀の縁を口に近づける。納豆そのものの匂いが迫る。

 汁を飲む。

 お、おー。納豆の匂いは少しも気にならず、ずずーと入っていくではないか。山菜が美味いじゃないか。豆腐が絶妙ではないか。半熟卵が素晴らしいではないか。

 という具合に私の初納豆汁体験は祝福されたものとなり、気がつくとお椀は空になっていた。

 東北では納豆は粒ではなくひき割りが優勢である。ただ大曲の納豆汁は粒納豆を使う。

菓子司 つじや
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菓子司 つじや

「すり鉢で一粒一粒つぶすんです。子どものころは私の役目でした」と辻さんは言った。

 そんなことがあって、いつの間にか目の前に置かれていた更級十割そばに箸を伸ばしたら、そばが固まっていた。どうにかこうにか一口分をつかみだしてつけ汁に浸す。

 もの凄くいいそばなのではあるが、なにしろ固まっている。しかも量が多い。優に東京の盛り2枚分である。サービスでついてきたおにぎりは手つかずのまま、そば4分の1残しで惨敗。

とうふかまぼこ
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とうふかまぼこ

 それから近所のスーパーに向かった。昼ご飯を食べながら辻さんが言っていた。

「この辺りはなんでも寒天にします。フルーツ寒天なんかもあります」

 スーパーにはフルーツ寒天こそなかったものの、何かを(忘れた)寒天で固めたものを売っていた。寒天文化については翌日、横手で仰天することになるが、これはその序章であった。

 スーパーがある交差点の斜め向かいが「菓子司 つじや」。辻さんはここの五代目で、東京の商社を辞めて跡を継いだ。

とうふカステラ
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とうふカステラ

 のれんに書かれた「とうふかまぼこ」がこの店の特徴を物語る。

 とうふかまぼこは豆腐に魚のすり身を加え、それを甘く味つけして蒸したもの。「かまぼこ」と言いながらお菓子である。いわば「豆腐菓子」。

 大曲・仙北地方では昔から結婚式など祝い事の宴席で、口取りとしてなくてはならないものであった。いまでも祝い事、仏事、進物、日常のお茶請けとして活躍している。

 とうふカステラも扱っている。豆腐に魚の白身、卵、みりんを加えて練り、それを焼いたもの。私は横手産のものを買ったことがあるから、秋田県南共通の伝統菓子らしい。

三杯もち
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三杯もち

 もうひとつ伝統の菓子というと「三杯もち」もある。米粉、麦粉、白玉粉を一杯ずつの計三杯、それにあんこを合わせてつくる。

 ようかんでもなく外郎でもない不思議な食感である。渋いお茶にとても合う。

 といったことで何から何まで辻さんにお世話になった私たちは、夕方近くになって横手に向かった。

 途中省略。

 要するにすっかり親戚みたいになった横手の皆さんと飲んで、楽しい一夜を過ごしたのであった。

菅妙子さん
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菅妙子さん

 朝になった。市内大雄地区にある「大雄交流研修館 ふれあいホール」に行くと「よこて食のアカデミー」の栄養士、菅妙子さんが待ってくれていた。

 菅さんには「缶詰ミカンをつかった酢の物調理」と「納豆に砂糖をぶちこむ実演」をお願いしていたのであるが、行ってみたらそんな生易しいものでは済まなかった。というか私にとっては感動の連続が待っていたのだった。

 大皿に色鮮やかに盛りつけられた飾り寿司にまず驚いた。

すすまんま(後方2列)
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すすまんま(後方2列)

「こ、これは……。千葉実食編で食べた飾り寿司そっくりではないか」

「ああ、すすまんまね」

「すすまんま?」

「すすまんま」

 寿司まんまであった。

 うるち米にもち米を2割ほど加えているという。海苔の代わりに卵焼きで巻いたものもある。

虎の皮みたい
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虎の皮みたい

「卵焼きに焦げ目が付いているでしょ? 虎の皮みたいだから虎巻きって言うのよ」という趣旨の話が正調横手弁で語られた。以下、横手弁はひょうずん語に変換する。

「食べてごらんなさい」

「では」

 と言ってすすまんまを一口ほお張ってから菅さんに尋ねた。

「これはご飯ですか。それともお菓子ですか」

サラダ寒天(右)とクルミ寒天
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サラダ寒天(右)とクルミ寒天

 とても甘かったからである。その甘さはお菓子そのものながら、見た目は巻き寿司である。私は少し混乱した。

 混乱したのは菅さんも同じだったらしい。これがお菓子かご飯かなどと聞かれたこともないし、考えたこともない。

「そうねえ。難しいわねえ。まあ、お茶請けのお菓子かな? だってお米1升に砂糖を800cも入れるんですもの」

 それは入れすぎではありませんか、と思ったが入るものは仕方がない。

 隣の「豆腐巻」は大曲で見た「とうふかまぼこ」と同じもの。やはり甘いお茶請けである。

箸休めにはいぶりがっこなどの漬物
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箸休めにはいぶりがっこなどの漬物

「この白いのはなんでしょう」

「サラダ寒天です」

「では黒い方は」

「クルミ寒天ですよ。この辺では昔から何でも取りあえず寒天で固めるの。きんぴらだって寒天にしますよ」

「何でも固める。ならば結婚式では固めの寒天を食べるんですね」

「(やや力なく)はは」

マヨネーズ味
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マヨネーズ味

 ここでサラダ寒天を試食してみた。ゆで卵、タマネギ、キュウリ、ニンジンが入って、それがマヨネーズ味に調えられている。

 ポテサラ? ジャガイモこそいないが、ポテサラの配役はみんなそろっている。ソースをかけたら酒の肴になりそうである。

「サラダ寒天は30年前にはありましたよ。ただ熱い状態の溶けた寒天にマヨネーズを加えると分離するので、ちょっとしたコツがいります。レシピに書いておいたから後で読んでくださいね」

いよいよ登場
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いよいよ登場

 続いてクルミ寒天を食べてみる。これは普通にお菓子である。安心して食べられる。

 さて、缶詰酢の物の番がきた。

「その前に、この説明をしなくては」

 と菅さんが1枚のお皿を引き寄せた。白いものの上にミカンとパイナップルの缶詰、薄切りしたキュウリが浮かんでいる。

「『こざきねり』といって、昔から横手にある冷たいスイーツです。県央ではカブの葉っぱなどを入れて『あさづけ』と呼びます。要するに未熟な青米や破砕米など売れない米を煮て砂糖で甘くし、塩と酢を加えたものです。これに季節の果物を飾る夏のデザートなんですよ」

こざきねり
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こざきねり

 米粒が潰してあるので、なんだかタピオカに似た食感。甘酸っぱい。缶詰ミカンを一緒に口に入れると、なぜか懐かしさに包まれる。

「それでね、缶詰ミカンを使った酢の物は『キュウリなます』といって、こざきねりの延長にあるものなの。こざきねりがなかったら、缶詰ミカンの甘酸っぱさを利用した酢の物は生まれなかったの」

 なるほど、そうか。甘党の誰かが手抜きで考えたものとは思っていなかったが、先行する食べ物があったのか。私は感動した。

キュウリなます
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キュウリなます

「キュウリなますに似たものでは、大根おろしにキュウリとかナメコとかを和えて、リンゴやミカンの缶詰を加えた『おろしなます』というのもありますよ。正月には鮭の頭を薄切りした氷頭(ひず)とか酢だこを入れますね」

 酢だことミカンの缶詰の組み合わせを、私の頭では想像しえない。しかし実在する。そこが食文化の面白いところである。

 何でも甘くするのはなぜであろうか。

 菅さんは「保存の意味もあるのね。冷蔵庫がなかった時代の夏場は特にね」と言った。なるほどそうかもしれないが、次の場面で疑念が生じた。

納豆に砂糖
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納豆に砂糖

「では、納豆に砂糖をお願いします」

「はいはい。亡くなった義父は1年365日、納豆を食べる人でした。その義父が食べていた甘さがちょうどいいと思うので、やってみます」

 と言いつつ菅さんの右手に握られたスプーンが袋から砂糖を納豆の上に掻きだし始めた。

 ああ! ええ? ちょっと待ったー。

 私はほんの少々の砂糖を想定していたのであるが、菅さんがやったのはドバドバ。醤油を垂らしてかき混ぜ、味見をしてさらに足した。

恐ろしく糸を引く
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恐ろしく糸を引く

「ちょうどよくなったわ」

 たいして混ぜていないのに恐ろしく糸を引く納豆を食べてみた。当然ながら非常に甘い。

「これをご飯にのせて食べるんですか?」

「そうですよ」

「これはお菓子でしょうか? おかずでしょうか?」

「おかずです」

 私の唇から糸が伸びていたらしい。菅さんが話を続けながら手で払ってくれた。私はまるで糸を吐くクモになった気分であった。

糸を吐くクモ
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糸を吐くクモ

 すぐ食べる納豆に砂糖を入れるのは保存のためではない。やはり「甘い=ごちそう」という意識が文化の基底にあるのではないかと思う。

 この辺のことはデスクが息を飲みながら動画を撮っていたので、確認していただきたい。

 お昼になった。次の取材場所である雄物川町に向かった。町の中心らしいところに「なをこ」という食堂がある。到着した私たちを外まで出て迎えてくれたのは五十嵐忠悦市長であった。

「お昼を一緒に食べようと思いまして」

三色
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三色

 ここではホルモン中華、略してホル中を食べる予定である。そこで皆さんがホル中を注文したのであるが、私の前に突進してきたのは「三色」という裏メニューであった。器は洗面器。中にうどん、そば、中華麺が各1玉入っている。

 これをどうしろと言うのだ。まさか食べろと言うのでは?

 いや食べるのである。私の前にはデスクがいる。責任を取ってもらおう。私は小さな器を借り、3種類の麺を少しずつ移して小鳥のように食べた。

 スープはそば用のものである。しかしながら上にはチャーシューとかメンマとかのっているし、なんか不思議だなあ。

フリーズドライ
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フリーズドライ

 ほかの客が「二食を肉で」と注文したところをみると、自由な組み合わせができるらしい。あまり組み合わせたくないが。

 途中省略。

 横手の取材はまだまだ続く。今度はいまがピークという干し餅づくりの現場取材である。雄物川町の「かまくら ほし餅本舗」を訪ねると、大きな建物の中ですだれ状に編まれた餅が扇風機の吹き出す寒風にさらされていた。

 この辺りでは1月から2月にかけて切った餅を極寒期の風にさらして干し餅づくりが行われてきた。要するにフリーズドライである。

風に切り餅が揺れる姿は美しかった
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風に切り餅が揺れる姿は美しかった

 餅をつき、切るのは機械でできるようになったが、ヒモで編むのはいまでも手仕事。「内職でやってもらっている」そうである。

 できあがった干し餅をもらったので食べてみたら、水分がすっかり抜けていて細かな穴が無数にできている。サクサクと食べられた。

 焼けばもちもちになり、味を付けて油で揚げればお菓子になる。風に切り餅が揺れる姿は美しかった。

 夕方になったので秋田市に移動した。晴れてはいたが、この冬の秋田は例年にない豪雪に見舞われたらしく、道路の脇には雪がうずたかく積まれ、歩道も凍った雪で固まっていた。

チャイナタウンの味噌ちゃんぽん
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チャイナタウンの味噌ちゃんぽん

 開店時間になるのを待って向かったのが「チャイナタウン」という店。「秋田ちゃんぽん」の老舗である。そこで「味噌ちゃんぽん」を食べることになっている。

 券売機でチケットを買うシステムなのでお金を入れていると、背後でデスクの声がした。

「味噌と塩いきますか」

「だめ、味噌だけ。それも1杯。私は餃子で酒を飲む」

 私には予感があった。味噌ちゃんぽんは800円以上する。秋田という地方都市では高額な商品である。ということは地元のコストパフォーマンス意識に答えるために、どか盛りのはずである。さっきの「三色」のこともある。足りなければ追加すればいいのである。

イカ餃子
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イカ餃子

 私はゲソが入ったイカ餃子をつまみながらぬる燗を啜った。やがて味噌ちゃんぽんが登場した。

 ほら見ろ。このどか盛りを。あんかけになっているから、どうにか表面張力で持ちこたえているが、危険な水準のどか盛りである。

 ほかの客のテーブルに丼を運ぶ店員さんは、1杯ずつささげ持つようにして運んでいるのだけれど、丼からスープがこぼれ落ちるのを何度か目撃した。凄いぞ、この盛りは。

「大盛り」というおそろしいものもあって、こちらの器はやはり洗面器であった。

太い中華麺
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太い中華麺

 麺は太い中華麺。九州のチャンポン麺とはすこし違う。それでもっちりしていて腹にたまる。

 テーブルには秋田ちゃんぽんの由来を書いたものがあった。それによると、この店の初代は東京で中華を学び秋田でちゃんぽんを開発したという。時代背景からすると、当時は東京で九州のチャンポンはまず食べられなかったであろう。というより東京駅前中華では想像と空想に基づく独自のちゃんぽんが流布していたはずである。その影響であんかけの味噌ちゃんぽんというものがこの世に登場したものと考えられる。

ごうん棒のあんかけちゃんぽん
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ごうん棒のあんかけちゃんぽん

 味噌ちゃんぽん自体は美味いものであった。味については文句なし。秋田の人々に好まれる理由はよくわかる。

 その夜、さすがのデスクも味噌ちゃんぽんを完食したために「アルコール以外は何も入らない」という信じられない状態になった。実際、居酒屋に入っても私の方が食べるという逆転現象が起きたのである。

 途中省略。

 翌朝、私は東京に戻るため秋田空港に向かった。

デスク、五能線を旅する

デスク、五能線を旅する<クリックで番外編へ>

 デスクは五能線に乗るのだと張り切っていたが、どうなったのであろうか。

 デスク、後は頼む。

デスク はいな。念のため、翌朝もう一軒、郊外に秋田ちゃんぽんを食べに行ってきました。「チャイナタウン」と並ぶ老舗「五右ェ門」の流れを汲む「ごうん棒」というお店です。こちらは醤油味のあんかけちゃんぽんでした。カキやホタテなど海産物がたっぷり入ったあちあちの麺でした。五能線の旅については番外編「『リゾートしらかみ』に乗ってきました」をご覧ください。

 そうそう、埼玉県メール忘れないでくださいね!

*映像はflashビデオです。一部機種では再生できないことがあります。ご容赦ください。

(特別編集委員 野瀬泰申)


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秋田県編(その1) ラーメンには酢を入れまス。

秋田県編(その2) アッ、キター! 秋田ちゃんぽん

秋田県編(その3) 酢の物はミツカンじゃないよミカンだよ

秋田県編(その4) 人類皆鍋奉行


 


●筆者(特別編集委員 野瀬泰申)へのお気軽メールはこちら(tabeb@nex.nikkei.co.jp

2012年1月27日

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