第139回 鹿児島県実食編(後編) 焼きそば食べなきゃ帰れない

特別編集委員 野瀬泰申


 お待たせしました。先週に引き続き、鹿児島県実食編の後編です。天文館で別れた翌朝、野瀬はどこへ向かったのか? 何を食べたのか? そして試合終了したはずなのに、ダメ押しで食べることになったものとは? 鹿児島県実食編、再開します。
 今週のおかわりは、7月に岩手と山形で開催される、ご当地グルメによるまちおこしイベントの情報をデスクがリポートします
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JR肥薩線嘉例川駅
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JR肥薩線嘉例川駅

 2日目。

 午前9時半、坂本さんとホテルのロビーで合流する。と同時に熊本からApple-aさんが愛車を駆って登場した。鹿児島では朝まで降っていた雨が上がったが、熊本から鹿児島まで土砂降りであったという。梅雨前線が活動中である。

 私たちは肥薩線の無人駅、嘉例川(かれいがわ)駅を目指した。そうあの幻の駅弁をゲットするためであった。地図でみると駅は鹿児島空港に近い山中にある。

 途中、スマホのルート案内が無茶したり、案内の指示を無視したりということが重なってうろうろしたが、無事に嘉例川駅に到着した。

駅弁販売中
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駅弁販売中

 観光客が増えてきたためか駅から少し離れたところに立派な駐車場ができていた。そこに車を止めて階段を下りる。見渡す限りの緑である。それも深い深い緑である。

 駅舎は100年を超す風格を見せて美しい。風景に溶け込んだ端正な姿が美しい。駅務室はミニ博物館になっていて「名誉駅長」のタグを下げた地元の人が観光客に説明している。

 いやそっちではなく、駅の入り口であの駅弁を売っている。どんどん客が来てどんどん売れていく。

「がね」販売中、1個50円
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「がね」販売中、1個50円

 観光列車に乗る人だけに限定した予約販売という建前だが、余れば駅舎でも売る。という建前だが、なんだか普通に売っているようにも見える。違うのかな。

 売っているといえば細く切ったサツマイモやニンジンの天ぷら「がね」も売っている。炊き込みご飯のおにぎりも売っている。いろいろ売っているのである。

 駅弁は以前からのものと、最近出た新作の両方を買った。買ったのはいいが、まだ午前中。食べるには早い。

「途中、道の駅でもあれば、そこで食べましょうか」

ご自由にどうぞ
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ご自由にどうぞ

 ということにして近所を散歩した。

 駅前に「物産館」というには小さいが、中身はしっかり物産館の店があったので入る。

 店の隅の席に近所の庭先で取れたビワとか高菜の漬物とかお菓子とか置いてあって「ご自由にどうぞ」。店の女性がお茶までいれてくれた。

 店内を見て回ると「干し鮎」があった。説明文だと、これを一晩水に漬けて出しを取る。その後で甘露煮にするという。

清流天降川
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清流天降川

 目の前の天降川(あもりがわ)では稚魚を県内外に出荷するほどアユが取れる。釣り客も多い。地元ではアユを出しに使ってきた歴史があるらしい。

 お茶をいただきながら野趣あふれるビワを食べていると坂本さんがやってきた。

「こんなものがありました」

 アユのすり身を揚げたものである。これは珍しい。ぜいたくである。

アユのすりみ揚げ
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アユのすりみ揚げ

 さっそく口に入れてみると淡泊ながら奧の深い甘みがする。絶品と言っていいのではないか。

 それに、例の駅弁はここでも買えるかも。かもね。

 とても幸せな気分で日当山(ひなたやま)温泉に向かった。西郷隆盛は征韓論に破れて帰郷し、西南戦争に担ぎ出されるまで猟や釣りをして過ごしたのだが、この日当山温泉には何度も足を運んでいる。

 日当山に向かう道は両側から木々の緑が覆いかぶさり、車で走っているだけで癒やされる。温泉地帯であちこちに湯煙を上げる宿がある。中でも妙見温泉は大きな湯治場らしく、道ばたで温泉がわき出ていた。

道ばたで温泉が吹き出す
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道ばたで温泉が吹き出す

 飲用というので坂本さんが口に含んだ。そして顔をしかめた。

「銅の、10円玉の味がします」

 10円玉をなめたことがないので、どんな味かわからないが、それだけ色々なモノを含んでいるということであろう。

 日当山温泉に到着。表示板を見て、ここは坂本竜馬とお竜さんが新婚旅行で訪れた所でもあることを知った。

 ご覧のように共同浴場の「西郷どんの湯」がある。向かいの建物で素泊まりして湯治ができる。1泊1500円とか。

西郷どんの湯
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西郷どんの湯

 一応見たので鹿児島市内に戻ることにした。途中の道の駅で弁当も食べなくてはいけない。

 だが途中、目を凝らしていたのだが道の駅がない。ベンチなどを備えた休憩所もない。弁当はどこで広げる?

「そうだ、磯庭園で食べよう」

 磯庭園、つまり鹿児島市街の東にある仙巌園(せんがんえん)を見学しながら、お昼にしようということにした。

 道は錦江湾に沿っている。すぐ目の前に桜島が迫っている。なんという美しさ。

芝生のベンチで駅弁を広げる
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芝生のベンチで駅弁を広げる

 仙巌園は万治元年(1658)、島津家19代、光久が築造した別邸で、桜島を築山に、錦江湾を池に見立てた壮大な庭園である。

 駐車場に車を止め、入場料1000円を払って入った。幕末に建造された反射炉跡があり、手前に鉄製150ポンド砲のレプリカが据えてある。

 私たちはその前の芝生に並ぶベンチに陣取った。

 ベンチに嘉例川駅で買った弁当を広げて、まず写真撮影。それからみんなでシェアして食べ始めた。

オリジナルの駅弁
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オリジナルの駅弁

 弁当の中には「がね」が入っている。大きな干しシイタケを戻して煮たものがある。薩摩揚げは無論のことである。大根とニンジンの酢の物、とろけるようなサトイモに梅肉を添えたもの、タケノコ、ナスの煮浸し、ジャガイモコロッケ、ショウガの煮たものもある。

 動物性のものはほとんどなく、地元の山や田畑で取れたものばかりでできている。昔のごちそうのそろい踏みである。

 お腹が膨れたところで庭園散歩。お土産の店などには目もくれず、深山幽谷を思わせる庭園の細い道をたどる。池あり川ありで飽きることがない

桜島が借景。ポールはこいのぼり用で未撤去
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桜島が借景。ポールはこいのぼり用で未撤去

 高いところから桜島を望みながら「1000円の価値はあるな」と思ったのだった。

 さてそろそろ戻ろうか。Apple-aさんも明日は仕事だから遅くなれない。坂本さんも夕方の新幹線で帰ることになっている。

 とそのとき、スマホで何かを調べていた坂本さんが言った。

「このすぐ近くに両棒餅(ぢゃんぼもち)の店が集まっているところがあるらしいです」

新作駅弁
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新作駅弁

「行こう、行こう」

 ということになって、車で向かった。仙巌園から歩いても5分という国道沿いに「ぢゃんぼ餅」の看板を掲げる店が5、6軒並んでいる。

 どうしてこんなに集まっているのだろうという疑問は後に解ける。

 私たちはその中の1軒に入った。

「ぢゃんぼ餅は1人前何個ですか?」

ぢゃんぼ餅の店があちこちに
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ぢゃんぼ餅の店があちこちに

「6串、12個です」

「では2人前お願いします」

 出来上がるのを待ちながら、近所を少し探索した。店の隣のコンクリートの建物は鹿児島市の所有で、海水浴のシーズンだけ開くと看板に書いてある。

 ここは磯海水浴場なのである。いまはウインドサーフィンを楽しむ若いお兄ちゃんがいるだけであるが、夏になると大勢の海水浴客でにぎわうのであろう。

ぢゃんぼ餅食べました
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ぢゃんぼ餅食べました

 つまり、ぢゃんぼ餅を出す店は海の家や民宿を兼ねているようなのである。いや、そうに違いない。だから海水浴場の前に集まっているのだ。

 というようなことを思いながら店に戻ったら、ぢゃんぼ餅が登場した。名前の通り2本の串が刺さっている。白くて平たい団子を、甘辛いたれが包む。平たいみたらし団子と思えばいい。

 表面が焼けて香ばしい。そこにみたらしの甘さ辛さが重なって、実に懐かしい味である。

夏場はにぎわう磯海水浴場 正面は桜島
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夏場はにぎわう磯海水浴場 正面は桜島

 食べてみて串が2本の理由がわかった。1本だと柔らかい団子は左右に垂れる。みたらしも一緒に垂れる。食べにくい。もったいない。そこで2本で支えるようにしたのであろう。

 昨日から今日にかけて収穫大であった。

 ぼちぼち行こうか。

 車が天文館に着いたところで私と坂本さんは降りた。愛車でやって来てくれたApple-aさんと別れを告げ、私は山形屋のデパ地下へ、坂本さんは書店に行く。

山形屋ファミリーレストランの焼きそば。三杯酢付き
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山形屋ファミリーレストランの焼きそば。三杯酢付き

 いやそのはずだったのだが、どういうわけか坂本さんは私とデパ地下に向かうことになった。かねて予定の通り「かから(ん)団子」と「けせん団子」を買ったところで坂本さんに言った。

「7階のファミリーレストランをのぞいてみませんか」

「はい。行きましょう。書店はやめます」

 エレベーターに乗って7階へ。さすがに夕方近い時間のこと、客はまばらだった。

「小さいサイズの白熊でも食べますか?」

麺が短い
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麺が短い

 と聞くと、

「焼きそばも食べましょう」

「えっ、さっき弁当食べたばかりじゃ」

「早い晩ご飯です」

 坂本さんの真っすぐな目にあらがう術はない。

 ではなくて、せっかく来たのだから「三杯酢で食べる焼きそば」は外せないであろう。

ミニサイズの白熊 きれいでしょ?
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ミニサイズの白熊 きれいでしょ?

 ということで小さいサイズの焼きそばとミニサイズ(と言っても私にとっては普通サイズだが)の白熊の食券を買った。

 焼きそばは揚げた麺にあんがかかったもので、長崎の皿うどんの兄弟である。ただ麺がスプーンでも食べられるくらい短く切れている。それにエビやアサリ、イカなどの魚介類が入っていないところが違う。

 白熊は練乳ベースである点は本家と同じだが、シロップには独自の工夫があって味わいが微妙に異なっている。

 よし、重要物件はだいたい体験した。坂本さんの新幹線の時間が迫ってきたので、バスに乗って鹿児島中央駅に向かった。駅前で坂本さんを見送りホテルに戻って温泉に浸かった。

白熊は先割れスプーンで
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白熊は先割れスプーンで

 デスクは夜の飛行機で東京に戻ると言っていた。本日は顔を見ていない。どこで何をしていたのであろうか。

デスク 薩摩半島を縦横に駆けずり回ってました。詳しくはデスク版実食編の後半で、先週ご報告いたしました

 そんなことで夜になった。雨の中を少し歩いてある店に入ったのだが、報告しにくい内容であったので、これにて終了。

 ついでながら、今回の旅は一芸クンが同行するはずであったのに、軽く拒否された。

夜の鹿児島で何が?
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夜の鹿児島で何が?

「ちょうど総選挙の日にぶつかっています。私は国民の義務として総選挙に行きます」

 というのが理由であった。

 彼は総選挙の模様をここでリポートしている

「アクセスが凄かったですよ。食べBの10倍はありましたね」

 と自慢していた。

 では次回から北海道編。大物に取り組むことにしよう。

 ご関係の皆さん、あーゆーれでぃ?

(特別編集委員 野瀬泰申)


★今週のおかわりは「岩手と山形でご当地グルメでまちおこしイベント(デスク)」です。ぜひお読みください。

鹿児島県編(その1) 後ろのそうめん、回−われ!

鹿児島県編(その2) 醤油が甘い。しょういうこと。

鹿児島県編(その3) 小さな「じゃんぼ」は二本差し

鹿児島県編(その4) かねがね、がねを食べたいと…

鹿児島県実食編(前編) 元祖白熊、埋蔵金


 


●筆者(特別編集委員 野瀬泰申)へのお気軽メールはこちら(tabeb@nex.nikkei.co.jp

2013年6月14日

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